【はじめての対位法】01.対位法への階段

対位法の理解に役立つ「楽典」のおさらいはこちら

「対位法」とは

対位法和声法と同様に、作曲において大事な音楽理論の一つです。

 

この対位法という言葉からは、なかなかその意味が想像できないのではないでしょうか? まずは「対位法」について、その言葉の意味から説明したいと思います。

対位法は、英語ではcounterpoint、ドイツ語ではKontrapunktと言います。counterpointの「counter」は「対置の」や「反対の」などの意味を持ち、ドイツ語の「Kontra」も同様です。

「point」と「Punkt」は「点」という意味を持ちますが、これは数字などの点(たとえば、1ポイントや2ポイントなどの「点」)ではなく、位置や場所を表す「点」の意味であると考えた方が良いでしょう。

そうすると、counterpointやKontrapunktは「対置の点」という直訳になります。日本語の「対位法」はこの直訳から来ていると思われます。つまり、「対する位置(点)に関する法則」ということが、対位法という語の直接的な意味となりますが、しかしながらこの「対する位置」とは何なのでしょうか?

ここでの位置や点は音符のことです。楽譜を見てみると分かるのですが、譜面上の音符は点のように見えます。そしてこの点で音符が、どの位置にあるのかということはとても重要で、それによって音楽は変わってしまいます。

「対する」とは文字通りに「何かに対する」ということなのですが、対位法の場合、この「何か」とは主旋律のことです。つまり対位法とは、「ある主旋律に対して別の旋律を重ねるための法則」となります。

そしてこの別の旋律は、対旋律と呼ばれます。次の譜例を見てみましょう。一方が主旋律で、もう一方が対旋律です。

譜例1(J.S.バッハ「インヴェンション」第6番より)

対旋律 主旋律 対位法 音楽理論

「音楽的な旋律」を作るために

対位法にもルールがあります。まず、対位法を学ぶにあたって大事なことは「より音楽的な旋律を作る」ということです。何がより音楽的で、何がそうではないのかということは感覚的なことなので言葉での説明が難しいのですが、たとえば極端な例として、次の譜例を見てみましょう。

譜例2

ハノン 対位法 音楽理論

この譜例はピアノのテクニックの習得のための教本である「ハノン」からの例です。弾いていて楽しさはあまり感じないのではないでしょうか。実際に小さい頃にピアノ教室でこの教本を使ったことのある方の中は、あまり楽しくないものというイメージを抱いている方も多いでしょう。

音楽的な例として、次の譜例を見てみましょう。

譜例3(ブラームス「変奏曲」Op.21-1のテーマ)

対旋律 対位法 音楽理論

こちらはハノンと比べて、弾いていて楽しい気持ちになります。このように、一方が音楽的で、もう一方が音楽的ではないということの違いはどこからくるのでしょうか? まず音楽的な旋律を作るためには、アルペジオや同じフレーズを何度も反復させないように気をつけましょう。次の譜例を見てみましょう。

譜例4

アルペジオ フレーズ 対旋律 対位法 音楽理論

①は1小節目と2小節目でアルペジオの反復があるもので、②は極力その反復を避けているものです。また旋律が音楽的であるためには、その旋律の中で同じ音を頻繁に使わないようにしましょう。同じ音が何度も出てくると、少しくどい印象を受けてしまうものです。

譜例5

旋律 対位法 音楽理論

上の譜例では、①の中でCの音が何度も出てきます。そのために、音楽が停滞しているような印象を受けます。逆に②は、少しずつ展開しているような感じがします。

また、跳躍進行の後にはその跳躍進行とは逆の方向に順次進行をすることが音楽的な旋律を作るための秘訣です。たとえば次の譜例のように、上方に跳躍進行した後は下方に順次進行し、下方に跳躍進行した後は上方に順次進行するということです。

譜例6

順次進行 跳躍進行 対位法 音楽理論

なぜなら人間の心理として、常に上行、もしくは下行をしているとどこか息苦しさを感じてしまうものです。次の例を見てみましょう。逆の方向に戻りたいと感じてこないでしょうか。

譜例7

順次進行 跳躍進行 対位法 音楽理論

そして、音楽的な旋律を作るためには、その旋律の中でクライマックスを作ることが重要です。そのクライマックスは、旋律のちょうど真ん中から少し後の方に置くことが自然とされています。

譜例8(ブラームス「交響曲」第4番第4楽章より)

クライマックス 旋律 対位法 音楽理論

この譜例は18小節でできていて、ちょうど真ん中である10小節目より後の13小節目にクライマックスがあります。

そして対位法で旋律を作る際には、「跳躍進行は短6度まで」とし、「増音程や減音程での進行は用いない」ようにしましょう。特に増音程や減音程は、西洋音楽の歴史の中で自然なものではないとされてきました。これは現在の感覚からすると実感の沸かないものではありますが、ここで扱う対位法そのものが古典的なものですので守るようにしましょう。

長6度以上の音程と増音程、減音程での進行を避けるという規則は、同じ方向へ向かう複数の音がある場合、その始まりとと終わりの音同士の音程関係にも適用されます。たとえば次の譜例のように、始まりと終わりの音の音程関係が長6度以上であったり、増音程や減音程であることは、対位法においては避けるようにしましょう。

譜例9

増音程 減音程 跳躍進行 短6度 対位法 音楽理論

今回紹介したことをまとめると、対位法において音楽的な旋律を作るためには次のことがポイントです。

1.アルペジオや同じフレーズを何度も反復させない
2.旋律の中で同じ音を何度も使用しない
3.上方に跳躍進行した後は下方に順次進行し、下方に跳躍進行した後は上方に順次進行する
4.旋律の中でクライマックスを作る
5.跳躍進行は短6度までとする
6.増音程や減音程は避ける

対位法の教則本

最後に、対位法の教本の例を紹介したいと思います。これらの教本で得た知識を元に解説していきます。

教本 対位法 音楽理論

まとめ

今回は主に、音楽的な旋律を作るためのコツを紹介しました。しかしながら、音楽的かどうかということはとても感覚的な問題です。一番大事なことは、音楽的な旋律を作るために、実際に自分の耳で確かめながら作るということです。

そしてもし、自分の耳で音楽的であると感じたものがあれば、それからなぜ音楽的であると感じたのか考えてみましょう。そのようなことの積み重ねで、自然と対位法の技術を身につけることができるでしょう。