音作りからミックスまで幅広く活躍する「ディレイ」プラグイン。今回は中でも特に大人気の「WAVES H-Delay」について徹底解説します!
WAVES H-Delayとは?
ディレイプラグインとはその名の通り、音を「遅延」させるプラグインです。インサートしたトラックの音を繰り返して再生し、さまざまな効果を生み出します。
遅延が大きくなればやまびこの様な効果が得られ、逆に遅延が小さければ音に厚みが出ます。また、繰り返す音を左右に配置することで音の広がりを表現することも可能です。
WAVES H-Delayは基本的なディレイプラグイン機能に加え、ビンテージ機材の質感を足したり、LFOと呼ばれる音色変化機能も備わっています。また、見た目から分かる通り操作方法が分かりやすい点も初心者から玄人まで人気の理由の一つです。
それでは早速、H-Delayの各パラメータやツマミを見ていきましょう!
余計な項目がなくスッキリとした見た目で、集中してフォルマントだけを調整したい方向けです。ただし、元音に直接変化を与えるので注意が必要です。
ここでは最も使用頻度と利便性のあるUltraPitch 6Voiceを用いて解説します。それではさっそく使い方を見ていきましょう!
WAVES H-Delayの使い方
DELAY
どの周期(ディレイタイム)で音が繰り返すかを設定できます。
BPMモード:自分の指定したテンポで調整する。
HOSTモード:楽曲と同期したテンポで調整する。
MSモード:テンポに囚われずに繰り返しの周期を直接設定する。
以上、3つのモードがあり、全てツマミとモニターの数値が連動しています。BPMモードは使用頻度が少なく、多くの場合がHOSTモードかMSモードで操作を行う事がほとんどです。初心者の方はデフォルトであるHOSTモードで調整してみて、納得いかない場合にMSモードで微調整することをオススメします。
また、TAPを任意の間隔で連続クリックすることでもディレイタイムを設定できます。BPMモードとHOSTモードではクリック間隔に近い値が設定されてしまうので、正確にクリックに合わせたい場合はMSモードで行いましょう。
モニターの見方
BPMモードとHOSTモードでは繰り返しの周期が、設定したテンポにおける音価(音符の長さ)で表示されます。
例えば 「1/4 120BPM」であれば「BPM120における4分音符の間隔で音を繰り返す」という見方にをします。
また音価の横にアルファベットがつく場合があります。その場合は以下の通りです。
D=付点音符
T=三連符
「1/16D 150BPM」であれば「BPM150における付点16分音符の間隔で音を繰り返す」という意味です。
MSモードでは音価ではなく繰り返し周期がms(ミリ秒)で表示されます。1ms〜3500msの範囲で任意の数値を定めます。
また、モニター上部の「PINGPONG」で音を左右交互に繰り返すことができ、「ØL」「ØR」でそれぞれのチャンネルの波形を反転させる事ができます。波形を反転することで繰り返された音が打ち消しあって特殊な効果が得られます(使用頻度は低め)。
FEEDBACK
繰り返される音の回数を決定します。ツマミを右に回す程より多く音が繰り返されます。
LoFi
LoFiサウンド(サンプルレートが低く帯域の狭い音)を再現するスイッチです。
MODULATION
音色に変化を与えるLFO機能の設定が行えます。LFOは元音に別の波形をぶつける(重ねる)事で変化を得られる仕組みになっておりツマミの役割は以下の通りです。
DEPTH:ぶつける波形の量の調整できる。右に回す程より大きな効果が得られる。
RATE:ぶつける波形の周期を調整できる。右に回す程より周期が遅くなる。
FILTERS
繰り返される音にイコライザーフィルターを適用することができます。
HiPASS:指定した値以下の音をカット。
LoPASS:指定した値以上の音をカット。
LINK:フィルターが適用されない範囲を保ったままHiPASSとLoPASSを同時に調整できる。
ANALOG
ビンテージ機材のような質感を出すことができます。右に回す程倍音成分が大きくなります。
DRY/WET
元音(DRY)とディレイを通した後の音(WET)の出力割合を決めます。トラックに直接インサートする場合に調整します。ディレイをはじめ空間系プラグインはセンドリターンで掛ける事が多く、その場合は100%にしておきましょう。
※センドリターン…別のトラックに音を送ってエフェクトをかけること。
OUTPUT
全体の音量を調整できます。左のメーターで視覚的に確認ができます。
トラブルシューティング
- PINGPONGスイッチを有効にしているのに左右に音が広がらない。
インサートしているトラックがモノラルの可能性があります。直接インサートする場合はステレオトラックにのみ効果が適用されます。モノラルトラックにも効果を与えたい場合は、H-Delayのトラックを個別に作成し、センドリターンでエフェクトをかけましょう。
まとめ
ツマミが多く難しそうなイメージを持たれがちなH-Delayですが、ディレイの基本的な用語の意味や仕組みさえ覚えてしまえば直観的に操作ができるかなり強力なプラグインです。
変な癖もなく、ディレイとして出来ることはH-Delayですべてできると言っても過言ではありませんので、ぜひこの機会に使ってみてください!