【ポップス分析04】ポップスのジャンルについて学ぼう

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目次

もっと詳しくアナリーゼするために

ポップスを分析(アナリーゼ)するための方法として、これまでに次のことを紹介してきました。

・メロディやハーモニーに注目して、その音楽的な特徴を調べる
・ポップスの名曲や定番の曲と比較する

これらのアナリーゼの方法は、いわゆるクラシック音楽をアナリーゼする方法に基づいています。クラシック音楽の分野でもメロディの構造やハーモニーの流れを研究したり、古典的な作品(たとえば、ハイドンやモーツァルトなど)と比較、検討します。

さらに、もしハイドンだとどのようなメロディが流れるのか、またはモーツァルトだとどのようにハーモニーを鳴らせるのかと、別の可能性も想像してみます。そのような取り組みによって、この楽曲における音楽的な工夫やオリジナリティが見えてくるものです。

アナリーゼするためにはさらに知識として知っておいた方が良いことがまだあります。それはジャンルです。たとえばポップスのジャンルには次のようなものがあります。

・フォークソング
・ロック
・アニソン
・演歌
・イージーリスニング
etc.

これらのジャンルの特徴を知った上でアナリーゼをすることはとても大切なことです。たとえば、ベートーヴェンの音楽を聴くつもりでドビュッシーの音楽を聴いては正確にアナリーゼできないわけです。それはベートーヴェンとドビュッシーにもそれぞれにオリジナルな魅力が必ずあるからです。

つまりポップスのジャンルについて知識を持つということは、アナリーゼをする際に必須なことであるのです。今回はポップスにおけるジャンルに注目し、まずはその中でもフォークロックについて学んでみましょう。

シンプルな音楽が多い「フォークソング」とは?

フォークはもともと民間で伝承されていた音楽のことを指しますが、ポップスのフォークとは1960年代のアメリカで定着した分野のことを意味します。ポップスにおけるフォークを「モダン・フォーク」と呼ぶこともあるそうです。

その楽器編成は大きいものではなく、フォークギターのみで歌われることが多くみられます。世界的に代表的なアーティストはボブ・ディランで、彼の『風に吹かれて』はフォークの代表的な楽曲と言えるでしょう。

さらにフォークに特徴的なことは、その歌詞に社会的な主張が濃く含まれているということです。たとえば、先ほどの『風に吹かれて』の歌詞はアフリカ系アメリカ人の公民権運動に影響されているとも言われています。

また、そのメロディやハーモニーは比較的シンプルなものが多いと個人的には考えています。たとえば『風に吹かれて』のコード進行は次のようになっています。

譜例1

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譜例1を見てみると、FとB♭、C7、そしてDmのコードのみでできていることがわかります。さらに譜例1のBからの部分には、途中で挿入されている箇所があるものの、Aとほぼ同じコード進行ですので、BからはAの繰り返しだと考えることができます。

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その他に、ニール・ヤングの『ハート・オブ・ゴールド』はほぼ次のコード進行の繰り返しで成り立っています。

譜例2

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あくまで私が調べた限りの範囲に限定されますが、フォークにおいてはそのメロディとハーモニーのシンプルさが特徴的です。このシンプルさにはフォークの持つ大衆性が現れているのかと想像が膨らみます。

ロックの様々なジャンル

続いてロックの特徴について考えてみましょう。ロックには非常に様々な種類があります。簡単に種類を挙げてみると次のようになります。

・ハードロック
・プログレッシブロック
・パンクロック
etc.

さらに日本のロックとしてジャパニーズロックと呼ばれるものもあります。これらのロックにはそれぞれに強い個性があり、それらを網羅的に解説するのはとても大変なのでここでは詳細を省きます。

フォークと同じように、ロックの歌詞においても社会的なメッセージが含まれることが多くみられ、むしろより過激なメッセージが含まれることも珍しくはありません。

楽器の編成はフォークに比べてより大きなものになります。フォークギターよりもエレキギターが用いられ、ベースやドラム、キーボードなどが加わることが多いです。その代表的なアーティストはピンク・フロイドやセックス・ピストルズなど。彼らの楽曲の中にはかなり実験的な音楽も含まれることも特徴的ですね。

ポップスのバラード=静かな音楽?

ここまでで、フォークとロックについて簡単に解説しましたが、ポップスの中には「バラード」と呼ばれる音楽があります。このバラードはフォークやロックなどと並ぶようなポップスのジャンルではなく、ある特徴を持つ楽曲のことを指します。その特徴は次のようなものです。

・流麗なメロディと美しいハーモニー
・穏やかなテンポ
・全体的に静かな雰囲気

しかしポップスにおけるバラードにはそもそも定義らしいものはありません。そもそもバラードと呼ばれる音楽はクラシック音楽にもありますが、クラシック音楽におけるバラードは次の2種類になります。

1. 中世フランスの歌曲の形式。形式的にはフレーズaが2回繰り返されて、最後にbという別のフレーズがつく。その有名な作曲家はギョーム・ド・マショーなど。

2. ショパンやブラームスなどのロマン派の作曲家によって書かれたピアノ曲のタイトル。

ただし、クラシック音楽におけるバラードとポップスにおけるバラードとの間に何か関係性があるのかは不明です。そもそもいつから、穏やかなテンポで綺麗なメロディとハーモニーを持つ静かな音楽がバラードと呼ばれているのかわからないのですから定義はないようなものです。

とはいえ、ポップスの分野にバラードと呼ばれる音楽があることは事実ですのでしっかりと覚えておきましょう。バラードの代表的な楽曲は次のとおりです。

・一青窈『ハナミズキ』
・秦基博『ひまわりの約束』
・サザンオールスターズ『TSUNAMI』

バラードについてさらに考えられることは、フォークとは違い、息の長いメロディとコード進行が多いということです。メロディやコード進行の息の長さとは何でしょうか?フォークの場合だと次のような進行が何度も繰り返されていました。

譜例3(『ハート・オブ・ゴールド』より)

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和声法を学んだ方は感覚的に知っているかと思いますが、コード進行が短くなればなるほど音楽の安定感をより感じるものです。さらにフォークのコード進行の特徴として考えられることは、ときどき別のコードが挿入されながらも、基本的には同じコード進行が繰り返されるということでした。このように何度も同じ進行が繰り返されるということも安定感をさらに強くします。

逆にバラードでは次のように長いコード進行が用いられることが多いように思えます。

譜例4

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譜例4は『TSUNAMI』のコード進行です。フォークに比べてだいぶ長いことがわかりますね。コード進行の息の長さはハーモニーの進行を流麗にします。たとえばクラシック音楽の分野だとワーグナーの楽曲にはかなり息の長い和声進行がみられますが、その結果音楽の流れを良くしています。

ただし、息の長いコード進行はヘタをするとどこか不安定な印象になってしまうことがあります。そのようにならないためにもハーモニーの選択が非常に重要です。そういった意味ではバラードを作るということは音楽的に難しいことをしているのだと言えるのかもしれません。

「ボカロ」というジャンル

さて、ここまではこれまでに一般的であったポップスのジャンルや音楽について簡単に解説してきましたが、現代の日本のポップスにおいて特徴的なジャンルが一つあります。それはボーカロイドを用いて作曲された音楽です。よく知られていますように、ボーカロイドとは音声合成の技術のことです。ボーカロイドを用いている現在の代表的なアーティストとしてはYOASOBIのAyaseなどが挙げられます。

ところで、詳しくは別の回で解説したいと思いますが、Ayaseの楽曲に見られる特徴としてはその歌の難しさが挙げられます。その難しさはボーカロイドによる作曲が少なからず影響していると推測されます。さらにそのことによって、新しいポップスの形をも生み出しているのではないかと考えられます。このことについては別の回で考えていきましょう。

まとめ

今回はポップスにおけるジャンルとしてフォークとロックを解説しました。フォークもロックもその歌詞には社会的なメッセージが含まれることが多いものの、音楽的には異なる部分もありました。また私が調べた限りでは、特にフォークにおいてはそのメロディやコード進行の息の短さに特徴があるようでしたね。

逆に息の長いコード進行として、「バラード」と呼ばれる音楽がありました。ポップスにおけるバラードには定義らしいものはないものの、広く周知されている音楽の種類であり、その名曲も十分に多くあります。また今回は現代のポップスで特徴的なジャンルとして、ボーカロイドによって作られた音楽についても少しだけ述べました。

今回はポップスを分析するために知っておくべきこととして、ジャンルについて紹介しました。ジャンルを知っておくことによってより詳しいアナリーゼは可能になりますが、しかしそもそもアーティストはジャンルにこだわりながら音楽を作っているわけではありません。人によってはあるジャンルでまとめられることを嫌がるアーティストもいます。そもそもアナリーゼによって得られた解釈もアナリーゼする人の個人的な見解に過ぎません。

しかし以前にも述べましたように、アナリーゼは自分自身で良い音楽を作るためにするものです。アナリーゼによって得られた解釈は個人的な見解に過ぎなくても、この見解を自分の作曲に活かせることが大切ですね。今後アナリーゼをするにあたり、そのことをしっかりと理解しておきましょう。

それでは、次回はこれまでに紹介したことを少しまとめつつ、さらにアナリーゼの方法について解説していきます。

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