前章まで、『音』とは何か、音の種類や長さ、強さの表し方について学びました。
『音』だけでは、音楽を豊かに表現することはできません。欠かせないのが、『リズム』です。今回はリズムとは何なのか、について解説します。
『リズム』って何?
リズムとは何でしょう。
リズムという言葉は私たちの日常にごく普通に使われており、訳すこともされませんが、『生活のリズム』などとも使われることを考えると、何やら『時間の刻み』ということになりそうです。
リズムには、規則的なものも、不規則なものも存在します。
たとえば、バンド演奏でドラムは規則的なリズムを刻み、メインのメロディーのリズムは、それに比べると不規則です。
規則性のあるリズムのおかげで、私たちはメロディーのリズムを安定して捉えることができます。
この場合、ドラムはリズムというより『拍』として考えるべきかもしれません(実際のドラムはもっと不規則なリズムも刻みます)。
さて、音楽で使われるリズムについてはこの『拍』と『拍子』をしっかり理解することが重要です。
拍(はく)とは?
コンサートで流れる曲に合わせて、手拍子を打つことがありますが、手拍子をしている全員がバラバラになることなく、自然に一定の秩序が保たれています(秩序がなければ拍手に過ぎません)。
これは、全員がその曲の持つ規則的な時間の刻みを、同じように感じているからです。
手拍子で刻んでいる時間の単位のことを拍といいます。つまり正確には『手拍子』でなく『手拍』になりますね。
聴き手は拍をとることでリズムを捉えて理解し、自分もまたそのリズムに乗ることができます。こうして会場が自然に一体化していくのです。
手拍子(拍)は下図のように表すことができます。
さて、ついつい手拍子を取りたくなる曲はアップテンポなものが多いですね。
もちろん 『ノリがいい』というのが大きな要因ですが、スローテンポな曲だと拍と拍の間が長すぎて捉えにくいという点もあります。
リズムはもちろん存在していますが、拍を意識させない曲となっているのです。
だからといって拍と拍の間をあまり空け過ぎてしまうと、演奏する側も聴く側も規則性を感じられなくなり、少なくともリズムを捉えるための役割を果たすことができなくなります。
敢えてそのような効果を狙った曲でない限り、1拍はある程度刻みやすい長さにする必要があります。
拍子とは?
拍子は、拍を一定の法則のもと、いくつかごとに区切ったものです。
決まった時間の区切りを教えてくれる拍ですが、ただ単に拍が存在するというだけでは、リズムはダラダラと続くだけで、ピリッとしたまとまりがありません。
何より区切りがないと、曲を楽譜に起こした時にとても読みづらくなります。
そもそも人間の耳も身体も、音楽を聴いている時に、自然に拍子を取っているのです。
人間が歩く時、右、左と交互に足を出して進みますが、常に同じ速さで歩くよう心がけていると、自然と1・2、1・2 と区切りながら進んでいることに気づくでしょう。
拍を2つずつ区切るという『2拍子』がそこには存在しているのです。
ちなみに、複数の人間が規則正しい歩行をすると行進となりますが、行進のための曲がマーチですね。
また、ワルツといえば3拍子ですが、ワルツはもともと、13 世紀ころの南ドイツの農民の舞曲が発祥であるという説があります。
しかし彼らは「よし、3拍子の曲を作って、それに合わせて踊ろう」と思ったわけではないでしょう。
2本の足を交互に動かす2拍子ではなく、そこに 1拍プラスすることで、自然に優雅な舞のリズムが生まれてきたのです。
これらの曲を楽譜に起こすという作業をする際に、そこに自然に存在している拍の刻みを分かりやすく表現するために、拍子が必要なのです。
2拍子
先ほどご説明したように、人間の歩行を表すのにも使われる、もっとも基本的な拍子が『2拍子』です。
この楽譜は2拍子のうち、『4分の2拍子』です。四分音符が2つずつ区切られています。
上の段に書かれている音符には八分音符や十六分音符がありますが、それぞれ四分音符1拍の長さずつにまとめて書かれています。
下の段が拍です。 この区切りの縦線を小節線といいます。小節線で区切られた部分が小節です。
3拍子
上で使ったメロディーを3拍子にしてみました。下段が3拍子の拍です。1小節に拍が四分音符3つ分入る、4分の3拍子です。
同じメロディーでも、リズムが変わると自然に3拍子に聞こえてきます。このメロディーに、たとえば2拍子で拍をつけると、感覚的にまったく違うものになります。
4拍子
2拍子に使ったメロディーを少しアレンジして4拍子にしてみました。1小節に四分音符の拍が4つ入る、4分の4拍子です。
4拍子は自然発生的な拍子とはいえません。元々は2拍子を2つ合わせたものです。
ここで覚えておかなければならないものが、拍の強弱です。
2拍子の曲は自然に1拍めに重心がかかり、2拍目は軽くなります。手で2拍子を叩くときも、1拍目を強く、2拍目を弱く叩くと拍子が取りやすくなるのが分かると思います。
3拍子の場合は『強、弱、弱』と叩くと分かりやすいです。ワルツの拍子を『ズンチャッチャ』というのも『ズン』に重心がきていると考えることができます。
4拍子の場合、もともと2拍子×2なので『強、弱、強、弱』となっていたのが、いつしか『強、 弱、中強、弱』あるいは『強、弱、弱、弱』のように拍を取るようになってきました。
おそらく2拍子では少しせわしない感じがするという理由で、4拍子という拍子が生まれたのでしょう。
クラシック音楽でも4拍子の曲の割合は高く、ポピュラー音楽では4拍子の曲が圧倒的に多いです。
歌いやすく、作りやすい拍子だからこそ、この拍子が必然的に生まれたのでしょう。
まとめ
リズムを形作るための拍と拍子について、関係性はおわかりいただけたでしょうか。次回はリズムについて、もう少し複雑な拍子について説明します。