これまでは主に音楽(楽譜)の読み書きについてのレッスンでした。ここからは音楽の文法、言い換えれば、音が音楽になるための仕組みについて学んでいきます。まずは「音程」から入りましょう。
音程とは?
音程とは「2つの音の高さの隔たり」のことです。
ピアノでドと、その右隣のレの音を続けて弾いた後、今度はドと、一つ飛ばしたミの音を弾いてみると、もちろんですが違った響きに聴こえますね。これはドとレ、ドとミのそれぞれの2音間が違う音程だからです。
しかし、違う音程が必ずしも違う響きを持つとは限らないのが難しいところです。
たとえばドとレ♯、ドとミ♭は違う音程なのですが、響きとしては(少なくともピアノでは)全く同じに聴こえます。
ここは大切なところです。音は、響きだけでなく、それが何の音であるかをきちんと理解することが、音楽の仕組みを理解することに繋がるのです。
幹音と派生音
ここにきて、ついに♯(シャープ)と♭(フラット)の登場です。以後、頻繁に出てくる記号なので、しっかり覚えましょう。
♯や♭などの記号を「変化記号」といいます。♯が音の左隣に付くと、その音は半音上がります。♭が付くと、元の音から半音下がります。
♯や♭は、左側であればどこに付けても良いものではありません。真横に付けましょう。各音の下に、それぞれのドイツ音名を書いておきます。
♯記号は日本語で「嬰(えい)」記号といいます。♭記号は「変」記号といいます。「変ホ長調」など、ある曲の調を示す時によく使います。この場合はミ♭から音階が始まる調のことです。調や音階は、音程の次に出てきます。
さて、実は変化記号が♯と♭だけでは、音楽の文法的に不十分です。♯をさらに半音上げるため、♭をさらに半音下げるための記号が必要となる場合があるのです。それぞれダブルシャープ(重嬰)記号、ダブルフラット(重変)記号で表します。
下の楽譜に使われているのが、ダブルシャープ記号です。
そしてこちらが、ダブルフラット記号です。
各音にドイツ語読みを入れましたが、もちろん普通に「ドシャープ」「レフラット」と言って構いません。
とはいえ、日本のクラシック音楽界では、ドイツ音名が完全に浸透しています。ある音を一番端的に表すことができて便利だから、というのも一因ではないかと思います。
そんなわけで、覚えておいて損はありません。ただし、日本とドイツ以外の国では通用しないので注意しましょう。
「ドを半音上げて、さらに半音上げたらレになるのだから、ダブルシャープなんてややこしい記号を使わず、レと書いてはいけないの?」と思うかもしれませんが、その疑問に対しては、後の章でお答えします。
そして、幹音とは以上のような変化記号が付いていない、ピアノ鍵盤でいうところの白鍵の音のことです。派生音は幹音から派生した音、すなわち変化記号の付いた音のことをいいます。
音程の数え方
音程は「度」という単位で数えます。まったく同じ高さの2音を「1度」と数え、以後間隔が広がるにつれ2度、3度……となります。
同じ響きの音での1度をユニゾン(unison)、8度をオクターヴ(octave)といいます。
また、1度から8度までを単音程、9度以上を複音程といいます。複音程は単音程の仕組みさえ分かればすぐに理解できるので、単音程をしっかりと覚えていきましょう。
なお、変化記号がどれだけ付いても、度の数え方は変わりません。下の音程はどれも「1度」です。
完全系と長短系
単音程、1度から8度までの音程は、完全系と長短系の2つの種類に分けられます。
・完全系…1度、4度、5度、8度
・長短系…2度、3度、6度、7度
「完全系と長短系ってどういうこと?」と思われるでしょう。これには「倍音」というものが絡んできます。
ざっくりとした説明になりますが、倍音とは、ピアノや弦のある1音を鳴らした時に同時に発生する、その振動数の整数倍の振動数の音のことです。
元の音を1倍として、第2倍音は1オクターブ上、第3倍音はその更に完全5度上、第4倍音はさらに完全4度上です。ここまでの音程を完全系と呼び、それ以外を長短系と呼びます。
もっと掘り下げて説明すべきかもしれませんが、今はとりあえず、音程には完全系と長短系があるということだけ覚えれば十分です。
そして、大切なことをもう一つ。完全系の音程が長短系になることも、その逆もあり得ません。「完全3度」や「長8度」などという音程は存在しません。
まとめ
音程は、音楽を形作る基礎部分にあたります。幹音でできた音程は、全て覚える以外に方法がありません。大変そうですが、コツを掴めば楽に覚えられます。
次回は各音程の数え方について、さらに詳しく説明します。