前回まで、長音階と短音階の違いと仕組みについて学んできました。

音階への十分な理解は、音楽や楽曲の構成に欠かせないことの一つです。
今回から、音階への理解を前提に「調」の説明に入ります。楽典の七合目から八合目といったところです。息切れしないよう、ゆっくり頭に入れましょう。
音階③ さまざまな音階
音階は、音を順番に一定の規則で階段状に並べたものです。
私たちが普段耳にする多くの曲は長音階、もしくは短音階で成り立っていますが、音階の種類は他にもあります。
代表的なものを挙げますが、記憶しておかなければならないほどではありません。
半音階
ピアノの鍵盤をドから順に白鍵と黒鍵の全てを弾いていくと、1オクターブ上のドまで入れて、13個の音があります。これが半音階(隣り合う音同士が全て半音でできた音階)です。
全音音階
半音階と逆に、隣り合う全ての音が全音(半音2つ分の間隔)でできた音階のことを、全音音階といいます。


音階の種類はこの2つです。長短音階のような半音の箇所がないので、音階を構成する音はいずれも6つしかありません。
弾いてみると、不思議な響きがしませんか? 始まりと終わりがはっきりしないような、調があるようなないような、ふわりと宙に浮いたような独特の響きです。
全音音階は、20世紀の初頭、フランスの作曲家であるドビュッシーがよく用いたことで 広く知られることとなりました。
ある調で書かれた曲の中に部分的に用いたり、最初から最後まで全音音階だけで書かれたりしていますが、いわゆる「無調音楽」のはしりといえるかもしれません。
民族的音階
ヨーロッパやアジアの国々や地域では独自の音階「民族的音階」が使われ、特色ある民族音楽を作っています。
もちろん日本にも、平安時代から雅楽に使われている音階をはじめとした、特有の音階がいくつか存在します。
ここでの説明は省略しますが、興味のある方は、インターネットなどで響きを確かめながら調べてみて下さいね。
調① 「調」とは?
これまでの章にも、「調」という言葉は何度も出てきました。
音楽と調は切っても切れないものであり、楽典の説明をするに欠かせないにもかかわらず、その仕組みがなかなか複雑なため、肝心の説明はどうしても楽典全体の後半以降となってしまいます。
さて、調とは、一定の秩序をもった音で構成された曲が持つ、響きの整合性の総称です。
と書くと難しそうですが、要は、ある調の構成音(音階音)を用いて曲を作ると、まとまって聴こえるということです。
音階の章で例に出てきたハ調の長音階だけを使ってメロディーを書くと「ハ長調」の曲になります。「ドレミの歌」などは正にそうですね。
後で半派生音が少し出てきますが、最後の章で種明かしします。
長音階で書かれた曲を長調、短音階で書かれた曲を短調といいます。
調号で調の種類を決める
音階の章で、長音階や短音階の隣り合う2度が長か短か、という説明をした際、いちいち覚えなくとも良いとご説明しました。それは、調号というものがあるからです。
調号は、ある特定の音から始まる長、短音階を構成するために必要な変化記号を、あらかじめ曲の最初、音部記号のすぐ右隣にまとめて表示したものです。
たとえば、ニ調の長音階の構成音は下のようになっていますが、

これを調号を用いて表すと、

このようになります。
最初に表示することで、その後いちいち変化記号を書く手間が省けますし、何より演奏前にその曲の調の判断がつきやすくなり、歌ったり譜読みしたりすることを楽にしてくれます。
ひとつの調号につき、長調と短調がひとつずつ存在します。長、短音階は7音で構成されているので、調号も♯、♭それぞれ7つまでつけたものが存在することになります。
それぞれ種類ごとに分けてまとめてみましょう。
♯系の長調

ドから始まるハ長調は、どの種類にも含まれない、幹音だけでできた調ですが、構成上最初に入れておきます。
♯1つの調はソの音から音階が始まる「ト長調」で、ファの音に常に♯がつきます。
♯2つの調はレの音から音階が始まる「ニ長調」で、ファとドの音に♯がつきます。 以下、イ長調-ホ長調-ロ長調-嬰へ長調-嬰ハ長調となります。
♯はファ、ド、ソ、レ、 ラ、ミ、シの順に増えていきます。
♯系の短調

幹音だけでできる短音階は、ラから始まるイ短調です。
♯1つの調がミから始まるホ短調、♯2つがシから始まるロ短調、以下、嬰へ短調-嬰ハ短調-嬰ト短調-嬰ニ短調-嬰イ短調となります。
♯がつく音の順番は、長調と同じです。
♭系の長調

♭1つの調はファから始まるヘ長調で♭はシの音に、♭2つはシ♭から始まる変ロ長調で、♭はシとミにつきます。
以下、変ホ長調-変イ長調-変二長調-変ト長調-変ハ長調となり、♭はシ、ミ、ラ、レ、ソ、ド、ファの順で増えていきます。
♭系の短調

♭1つがレから始まるニ短調、♭2つがソから始まるト短調、以下、ハ短調-ヘ短調-変ロ短調-変ホ短調-変イ短調となります。
♭のつく順番は長調と同じです。
まとめ
さて、以上の全ての調については、調号を見たら調が反射的に出てくるようにしておくのが理想です。
丸覚えは難しいですが、調の成り立ちには幾つかの規則性があることに、既にお気づきかもしれませんね。次回はその規則性の説明をしていきます。
