【はじめての楽典】第14章 調② 調名と調の規則性

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前回から「調」の学習に進み、佳境に入りました。

♯や♭が最大7個まで出てくる調名をすべて覚えるのは至難の業に思えますが、実は調というものは、非常に規則性を持って並んでいるのです。さっそく学んでいきましょう。

目次

調名はなぜかドイツ語?

「ハ長調」や「イ短調」は、調名を日本語で表したものですが、楽典の学習では音名と調名をドイツ語で表すことが非常に多いです。

以前にも少し触れましたが、日本には西洋音楽がヨーロッパのいくつかの国から、それぞれのルートで入ってきたため、音楽で使われる言語が入り混じっています。

イタリア語、ドイツ語、英語、まれにフランス語も使われています。そして、音名と調名はドイツ語がポピュラーなのです。

最も簡潔に調を表せることは間違いないので、覚えておいて損はありません。「変ホ長調」より「Es dur」の方が言うのも書くのも楽です。英語だと「E flat major」ですから、やはりドイツ語が簡潔です。

以下、全調の日本語読み、ドイツ語読みを列挙します。なお、長調を表すdur「デュア」短調を表すmoll「モール」と発音します。

ドイツ語で調を書く時には、長調を大文字短調を小文字にして「C : 」「fis : 」と略記できます。実に楽ですね。

今後はこちらの説明でもドイツ語で調名を表示しますので、是非慣れて下さい。

調号の規則性

上の図で、調号となる音の順番がどうなるかを見てみましょう。

♯系ファ、ド、ソ、レ、ラ、ミ、シです。最初のファから順に完全5度ずつ上がっていけば次の調の調号になります。

また、長調の場合、その調の導音となるべき音が、新たに増える♯です。

導音は主音と短2度(半音)の関係になければいけないところ、前の調号のままだとどれも長2度となってしまうので、第7音を半音上げる必要があるのです。

一方短調の場合は、導音を常に臨時記号によって作るので、そのような規則性はありません。しいて挙げるなら、主音の2度上の音(上主音)が新たに調号として♯がつくという規則性です。

♭系シ、ミ、ラ、レ、ソ、ド、ファの順です。シから完全5度ずつ下がった音が、新たに調号をつける音となっています。

長調は主音の完全4度上の音が新たな調号のつく音、短調は主音の短3度下の音が新たに調号のつく音となりますが、順番を丸暗記する方が早いですね。

主音の規則性

♯系の調は、幹音だけの調から、♯が増えるごとにそれぞれ主音が完全5度ずつ上がっていきます。♭系の方は、♭が増えるごとにそれぞれ主音が完全5度ずつ下がっていきます。

調号も主音も、♯系は完全5度ずつ上がり、♭系は完全5度ずつ下がっていきます。基本となる最初の調号の音と主音さえ間違えなければ、追っていくのは簡単ですね。

なお、音階構成音ではありませんが、短調の場合、調号の数が多くなると、導音を作る際にダブルシャープを用います。たとえばgis mollの調号は♯5つです。

これを旋律短音階の上行形にする場合、第6音と第7音を臨時記号で半音上げますが、gis mollの第7音はfisが音階構成音となっているので、さらに半音上げるためには♯の♯、すなわちダブルシャープが必要となるのです。

以前、ダブルシャープダブルフラットがなぜ必要なのか、問いかけだけをしていましたが、ここまでくればその理由がお分かりになるかと思います。

調によって、音階を構成する音は規則的に確定しており、その音が派生音であれば、派生音そのものを半音高く、或いは低くする臨時記号を用いなければなりません。

ある調を、その調たらしめる音階構成音がなくなってしまったら、基礎工事を怠った建物のように、調が不安定になってしまうのです。

「gis mollのファの♯の♯は結局ソと同じ音だし、ダブルシャープなんて面倒だからソで代用しよう」などと考えると、

音階構成音から第7音も導音もなくなってしまい、gis mollの体をなさなくなってしまうのです。

異名同音調

調の種類は全部で30個あります。しかし、実は調号の♯、♭がそれぞれ5つ以上つく調は、同じ響きを持つ調がそれぞれ存在します。これを異名同音調といいます。

長調の異名同音調は3種類あります。

♯5個⇔♭7個
♯6個⇔♭6個
♯7個⇔♭5個

の調の主音はどれも同じ響きの音です。例えば、シとド♭は鍵盤だと同じ位置ですね。

短調も同じように異名同音調は3種類です。

なお、異名同音はエンハーモニック(英:enharmonic)ともいいます。

調号6つの曲は♯、♭ともよく見かけますが、さすがに調号7つの調から始まる曲はほぼありません。曲の途中の転調時に、前後の関係で用いられることがあるくらいです。

まとめ

調を理解するには音程音階が頭に入っていないと難しいですね。総合的な知識を必要とします。

丸覚えでも良いのですが、せっかくですから「なぜそうなるのか」まで理解して頂けると嬉しいです。

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