第13章から15章まで、「調」について学んできました。
今回から、「和音」についての説明に入ります。
大ざっぱな説明ですが、和音は楽曲をメロディーと伴奏に分けた時の、伴奏部分を担当するものです。
構造をよく理解した上で伴奏となる和音を工夫すると、単純な和音進行と較べて、同じメロディーでも全く違った雰囲気になります。
楽典の基礎には「伴奏づけ」は含まれていないので、残念ながら今回は説明を省略しますが、基本の構造をしっかり理解しましょう。
和音とは
広義での和音は、「2つ以上の音が同時に鳴っている状態、あるいはその響きを得るために書かれた楽譜上の音符」となります。
2つ以上であれば、3つでも8つでも、同時に鳴れば和音と呼べるので、音の組み合わせは無限にありそうですね。
しかし、この楽典で学ぶべき和音はもっと狭義で、三和音と四和音と呼ばれるものだけです。
三和音はある音の上に、3度ずつ音程の離れた音をお団子のように2つ、計3つ重ねたものです。
四和音は、三和音のさらに3度上にもう一つ音を加えたものです。
三和音の種類
三和音の一番下の音は、和音の基礎となる音で、「根音」と呼びます。
根音から3度上の、真ん中の音は第3音、根音から5度上の一番上の音を第5音といいます。
三和音は、互いの音程差により4種類に分類されます。
長三和音
根音と第3音が長3度、第3音と第5音が短3度の関係となっている三和音を、長三和音といいます。根音と第5音は完全5度となります。
キーボードや鍵盤アプリがあれば、実際にその響きを聴いてみて下さい。明るく華やかな感じがしますね。
英語ではメジャーコード(majorchord)といいます。
<長三和音の例>
短三和音
根音と第5音は完全5度のままで、根音と第3音を短3度の関係とした三和音を短三和音といいます。第3音と第5音は、入れ替わりに長3度となります。
長三和音と比べると、しっとりと、やや暗いイメージの響きです。
英語ではマイナーコード(minerchord)。
<短三和音の例>
減三和音
根音と第3音、第3音と第5音がいずれも短3度の関係にある三和音を、減三和音といいます。根音と第5音は減5度となるので、減三和音と呼ばれます。
どこかよりどころのないような、そのままでは終われない感じの響きがします。
<減三和音の例>
増三和音
減三和音と逆に、根音の上にそれぞれ長3度の関係にある音を重ねたものを、増三和音といいます。根音と第5音は増5度の関係になります。
こちらもこのままでは終われそうにない響きですが、減三和音より広がりがある分、ぱっと明るくなるような響きですね。
<増三和音の例>
三和音の種類は以上です。
もちろん、3度ずつの関係を持つ和音は他にもあります。たとえば短3度+減3度でできた和音、増3度+短3度でできた和音なども作ることはできますね。
しかし、三和音と呼ばれる4種類の響きは、全て長調または短調の音階構成音だけで作ることができるのです(短調は和声短音階を用います)。
どういうことかというと、あるメロディーの伴奏に三和音だけを使う場合、この4種類の三和音だけで十分ということです。他の響きは不要です。
たとえば、下のc mollの和声短音階に、
その音階構成音で、すべての音に三和音を作ってみるとこうなります。
お分かりになるでしょうか。長、短、減、増の4種類の三和音がすべて含まれています。次でもう少し詳しく見ていきましょう。
三和音の和音記号
ある調の音階構成音によって作られる三和音には、それぞれ呼び方と働きがあり、呼び方を和音記号といいます。
長調と短調の和音を分けて説明します。
長調の和音
C durの音階構成音でできる三和音は当然幹音だけになり、計7つの三和音を作ることができます。
和音記号はローマ数字の大文字で表します。呼び方はI(いち)度、II(に)度……ですが、音程と間違えないよう「I度の和音」「II度の和音」ということもあります。
音階同様、和音にも主要なものには名前がついています。
主音 ⇒ 主和音
属音 ⇒ 属和音
下属音 ⇒ 下属和音
以上が主要三和音と呼ばれるものです。それ以外の4つの三和音は副三和音といいます。
極端なことをいえば、途中で転調しない曲は、主要三和音だけで何とか伴奏をつけられます。短い童謡などで試してみて下さい。
それくらい、主要三和音はその調の骨格となる和音なのです。
ちなみに、長調の和音は長三和音と短三和音が3つずつ、減三和音が1つでできています。
短調の和音
c mollは調号♭3つの調ですが、分かりやすいように臨時記号で書いています。
短調は導音を作るため、第7音を半音上げた音階構成音となります。
そのため増三和音ができたり、減三和音が2つになったりとバラエティーに富んだ和音となっています。
主要三和音は長調のときと同じです。
属和音と下属和音はどちらも重要な和音なのですが、実は同じ主音から始まる長調と短調(同主調)の和音のうち、構成音が同じなのは属和音(V)だけなのです。
実に貴重な和音といえますね。
まとめ
今回の内容はやや複雑ですが、これまで学んできた楽典がしっかり身についているかどうかの訓練になります。
分からない言葉や説明があれば、もう一度戻って確認しておきましょう。
次回は和音の応用編、四和音と転回形について説明します。