【はじめての楽典】第18章 調判定① 何調で書かれている?

【はじめての楽典】第17章では、「和音」のうち「四和音」「和音の転回」「コードネーム」について学びました。

今回から、ついに楽典の最終章、「調判定」の項目です。

日本で見られるたいていの楽典のテキストでは、調判定が最後の方に載っています。

これは、調判定が楽典の総合的な知識を必要とし、かつ、それらが応用できるような理解ができているかを探るのに、うってつけだからです。

調判定とは?

調判定は、楽典的には「ある区切られた一定の長さの旋律部分が、何調で書かれているかを推定すること」です。

和音による調判定もありますが、ここでは割愛します。

もちろん、楽曲は調号を用いて書かれているのが普通で、調号と、曲の終止音(和音)を見れば、何調なのかだいたい判断できます。

しかし、曲の流れの中で、調号をわざわざ変える程ではない転調はよく出てくるので、どこから何調に転調しているのか判断できることは、楽曲を理解するために大切なことなのです。

また、最初に述べたように、調判定をするには読譜力はもちろんのこと、音程音階調和音とあらゆる知識を駆使する必要があるため、応用問題として優れているのです。

調判定の方法① 臨時記号がついている音で判断

調判定の旋律は、調号がついていない状態で書かれていることが多いです。その場合、まず何の音に♯あるいは♭がついているかをチェックしましょう。


<譜例1>

楽典 入門 調判定 調号 シャープ フラット A dur イ長調

この旋律は♯のついている音が多いので、「♯系の調だ」との判断は簡単にできます。

調号のつく順番は覚えていますね。その順番通りに確認していきましょう。

ファに♯がつき、以降の音にはつきません。ということは、♯3個の調です。答えはA dur(イ長調)です。


<譜例2>

楽典 入門 調判定 調号 シャープ フラット fis moll 嬰ヘ短調 A dur 平行調 導音

譜例1と旋律は似ていますが、ところどころ違います。

一番大きな違いは、ミに♯がついていることです。しかも、ファの次に調号でシャープがつくべきにはついていないのに、なぜかその次のが♯なのです。

どういうことかお分かりになる方は、楽典が身についてきています。

♯3つの調は、A dur以外に平行調であるfis moll(嬰ヘ短調)がありますね。

短調の音階は、第7音を臨時記号で半音上げて、導音を作る必要があります。つまり、一見唐突に出てきたように思えるミ♯は、fis mollの導音なのです。

調号がついていれば、が臨時に半音上げられた音であることが分かりますが、調号がないと、元々の音階構成音なのか、臨時記号がついた音なのか判断できません。

そこで、これまでの知識の応用が必要となるのです。

もう一度、譜例1に戻り、念のため確認しましょう。こちらは、に♯はついていません。A durであることは明白です。以上をまとめます。


・旋律についている臨時記号で♯系か♭系か判断。
・次に、調号の順番に、どの音まで臨時記号がつくかを数える。
・調号がいくつか分かれば、短調のときに導音になる音をチェック。音階構成音より半音高くなっていれば導音なので短調。高くなっていなければ長調

調判定の方法② 次の音に跳躍進行しているかで判断

調判定で使われる旋律は原則、旋律短音階です。

実際の楽曲では和声短音階が使われることも、独自の音階を使うこともありますが、楽典の基礎練習ではそこまで判断する必要はありません。

旋律短音階は、上行形が第6、第7音を半音上げ、下行形は元に戻す(自然短音階になる)というものでした。

上行形の第7音は導音として、調判定では主音から第6音と同様に「音階固有音」と同じ扱い方をします。

第6音は、上行形に使われる場合のみ半音上がります。

音階固有音の最大の特徴は、「次の音に跳躍進行できる」ことです。跳躍進行とは、3度以上離れた音に進めることをいいます。


<譜例3>

楽典 入門 調判定 調号 シャープ フラット Es dur 変ホ長調 順次進行

<譜例4>

楽典 入門 調判定 調号 シャープ フラット Es dur 変ホ長調 跳躍進行

譜例3、譜例4はともに♭が3つ付き()、♭3つの短調c mollの導音である第7音が半音上がらずシ♭のままなので、♭3つの調号を持つ長調であるEs dur(変ホ長調)です。

譜例3では旋律が順次進行(2度ずつ進行)しており、譜例4はかなりの音が跳躍進行しています。

調判定の設問としてであれば、譜例4の方が判断しやすいですね。ある調の固有の音は、その調の中で安定している音なので、その次にどんな音に行こうとも、旋律の流れが揺らがないのです。

逆にいうと、音階固有音でない音は跳躍進行ができないということです。

調判定の方法③ 音階固有でない音は短2度進行しかできない

前章の言い換えですが、重要ポイントです。実際に曲を聴いてみれば分かるのですが、音階固有音でない音から次に跳躍進行すると、基本調のバランスが崩れます。


<譜例5>

楽典 入門 調判定 調号 シャープ フラット D dur h moll ニ長調 跳躍進行

上の旋律は、2小節目までは♯のつくファも次の音に跳躍進行しており、次のは♯がつかないままで跳躍進行しているので♯2個の調(D durh moll)です。

h mollであれば導音であるにも♯がついているべきところですが、ついていません。

のままで跳躍進行しているため導音になりえず、答えはD durとなるのですが、3小節目以降、に♯がついたり、ファの♯が取れたりと乱れてきます。

聴いてみても、3小節目から調がカオス状態になります。

ではこのようにしてみればどうでしょう。

楽典 入門 調判定 調号 シャープ フラット D dur ニ長調 跳躍進行

3小節目からに♯がつくのも、ファの♯が取れるのも同じですが、この旋律を聴いてみると一応、D durとして収まって聴こえないでしょうか。

これは臨時に高く(あるいは低く)されている音が、その次に順次進行しかしていないからなのです。より正確にいうと、


・音階固有の音が臨時に半音高くなった場合、その次の音に短2度上行する
・音階固有の音が臨時に半音低くなった場合、その次の音に短2度下行する


ということです。上の旋律の3小節目のファはそれぞれ臨時に高く(低く)された音なので、次に短2度上(下)にしか進行していないということです。

おわりに

以上が調判定の原則です。まだ少し分かりづらい方もいるかと思いますので、次回、もう少し譜例を使って説明を続けます。

調判定の知識は、理屈を知らずとも頭の中で譜面の旋律を鳴らしただけで何調か分かる方(一定数います)には不要かもしれませんが、旋律の構造を知るのに役立ちます。

覚えておいて損はありません。頑張りましょう。