自分の本をKindle(電子書籍)で出版したなら、ぜひ紙の本にもしてみましょう。この記事では、既にKindleで出版中の電子書籍を、紙書籍としても出版する際に必要なこと、その方法をご紹介します。

Kindleをペーパーバック(紙の方)で出版できるようになりました
2021年10月、日本でKindleの紙書籍(ペーパーバック)の出版が利用できるようになりました。費用は印刷コストのみで、新規読者の獲得や収益の増加が見込まれます。
そうでなくとも、個人が在庫を抱えることなく、数百円~数千円で簡単に紙の本を出版できるなんて、こんな機会はなかなかありません。
せっかくなので、ぜひペーパーバックを出版してみませんか?
この記事では、販売中のKindle電子書籍をペーパーバックでも出版する方法をご紹介します。
ロイヤリティを計算してみよう
さっそく準備を始めるその前に、印刷コストやロイヤリティを計算しておきましょう。実物のモノを売るため電子書籍ほどの収益にはならないことを覚悟の上で臨んでください。
ロイヤリティはなんと60%。ただしここから印刷コストが差し引かれます。赤字にならないように設定されているのですね。まずは印刷コストから計算してみましょう。
印刷コストの計算方法
印刷コストは、固定コストとページに対するコストで計算されます。インクが黒かカラーか、また、ページ数によって異なります。ページ数は表紙を除きます。これ以外の、本のサイズなどが違っても、印刷コストは変わりません。
黒インクの場合
本のページ数 | 固定コスト | 追加ページに対するコスト |
---|---|---|
24~108ページ | 400円 | なし |
110~828ページ | 175円 | 2円×ページ数 |
カラーインクの場合
本のページ数 | 固定コスト | 追加ページに対するコスト |
---|---|---|
24~40ページ | 475円 | なし |
42~828ページ | 175円 | 4円×ページ数 |
今回の書籍は黒インクで70ページのため、印刷コストは400円となります。ページによって金額が変わる110ページ以上を計算してみると、
110ページなら 175円+(2円×110ページ)=395円
112ページなら 175円+(2円×112ページ)=399円
114ページなら 175円+(2円×114ページ)=403円
となります。110ページ付近の本なら、110~112ページに仕上げると、ほんの少しお得です。
最小価格の計算方法
書籍の最小価格は、印刷コストとロイヤリティから、次のように計算します。
最小価格 = 印刷コスト ÷ ロイヤリティ60%
今回の書籍の印刷コストは400円のため、最小価格は
400円 ÷ 0.6 = 667円
となります。電子書籍の最低価格が250円であるのに対し、高い価格設定となります。
利益の計算方法
ロイヤリティは60%です。そこに印刷コストが含まれるため、利益は次のように計算できます。
利益 = 販売価格 × ロイヤリティ60% − 印刷コスト
今回の書籍の印刷コストは400円、最小価格は667円なので、キリの良いところでいくと、
700円で販売した場合
ロイヤリティ = 700円 × 0.6 = 420円
利益 = 420円 − 400円 = 20円
800円で販売した場合
ロイヤリティ = 800円 × 0.6 = 480円
利益 = 480円 − 400円 = 80円
となります。
ペーパーバック出版に必要なものは?
ペーパーバックを出版するためには、ペーパーバック用の原稿と表紙が必要となります。
原稿を準備しよう
まずはKDPからテンプレートをダウンロードします(https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G201834230)。原稿を作成する際には、必ずテンプレート使いましょう。紙の本に合わせて、左右の区別があって閉じる部分の余白が広くなっており、偶数ページの設定になっているので、レイアウト関連の間違いを無くすことができます。
テンプレートを開いたら、文章を作成するか、あらかじめ準備したものをコピペします。目次を作る場合は、WordでもPagesでもタイトルを設定することで、目次を自動作成できます。フッターにページ番号を入れることをお忘れなく。
そのままの見た目で本になるので、体裁も整えましょう。フォントや文字の大きさを適切に設定し、ページ区切りや行間の調整も使って、思った通りの見た目になるように調節します。出来上がったら、PDFファイルに出力して完成です。
表紙を準備しよう
表紙を作成するために、まず表紙サイズを計算します。ここでいう「表紙」というのは、表紙、背表紙、裏表紙を含めた1枚の画像です。KDPに記載されている内容をもとに、サイズを計算していきます(https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G201953020)。
今回の本の情報は次の通りです。
判型 148×210mm(A5サイズ)
ページ数 70ページ
この情報を計算式に当てはめると、つぎのようになります。
背幅 70ページ × 0.0572mm = 4.004mm
全幅 3mm + 148mm + 4.004(背幅) + 148mm + 3mm = 306.004mm
高さ 3mm + 210mm + 3mm = 216mm
このサイズで、背表紙や裏表紙を含めた表紙全体をデザインしましょう。裏表紙についてはバーコードが印刷される領域も考慮します。80ページ以上の場合は、背表紙にも文字を入れられます。
出来上がったらPDFに出力します。今回の書籍の表紙は、電子書籍の表紙をもとにKeynoteで作成し、PDF化しました。
KDPに登録しよう
KDPの本棚にアクセスすると、出版済みの電子書籍の欄に「ペーパーバックの作成」という部分があるので、そこから手続きに進みます。電子書籍の情報が入っているので、作業は多くありません。判型や用紙、インクの色などを選び、表紙と原稿のPDFファイルをアップロードしてプレビューを確認します。最後に価格を設定すれば、手続きは完了です。審査に通れば、Amazonでのペーパーバックの販売が始まります。
今回の書籍については、約8時間後に販売開始の連絡がありました。ただしこの時点では、Amazonに販売ページはあるものの、「取り扱いがありません」と表示されており購入はできない状態で、4日後に購入できるようになっていることが確認できました。
校正刷りを注文しよう(必要に応じて)
販売開始前に仕上がりを確認するなどの目的で、校正刷りを依頼できます。KDPの各書籍のメニューから申し込むと、間もなくメール送られてきて、Amazonカートに入った状態になっています。注文する場合は、カートから購入手続きに進みます。注文をやめる場合はそのままにしておけば、24時間後に自動的にキャンセルになります。
校正刷りは印刷コストのみで入手できるのですが、送料がかかります。場合によっては、印刷コストと送料を足したものが販売価格より高くなることもあります。校正刷りを確認してから販売開始をする、という方法も取れるので、必要に応じて利用しましょう。
まとめ
Kindleのペーパーバック(紙書籍)を出版する方法をご紹介しました。ただしここで解説した方法がすべて正解というわけではなく、やり方は様々ですので、参考としてご活用していただけたらと思います。
電子書籍に比べて利益は少ないですが、やはり紙の本はその良さがあります。せっかくの機会、ぜひ紙の本にもしてみてくださいね。