連載【ミックス&マスタリング入門】第6回目では、ミックスの作業効率を上げるためのトラックの整理について解説しました。
今回は、バストラックとステムミックスについて解説します。
バストラックに関しては少し専門的な話になりますが、ミックスを理解する上では避けて通ることはできません。
じっくりと学んでいきましょう!
バスを理解する
バストラックの役割
バス(BUSS)のことは、一度「オーディオファイルの書き出し」の際に触れましたが、DAW初心者の方には、バストラックは少しややこしい内容です。

ミキサー内の音声信号の流れを作る作業をミックスではルーティングと呼びます。
ミキサー内にある複数のチャンネルの音声信号をひとつにまとめる役割を、バストラックは持っています。
各トラックの音は何も設定しなければ、マスターチャンネルへダイレクトで送られますが、バスを設定すると、音声信号はバストラックを経由してマスターチャンネルへ送られます。
バストラックは一括で操作することができる
「ミックス時になぜバストラックが必要なのか?」という質問に簡単に答えるのであれば、グループ内の複数のトラックを一括で操作することができるからです。
前回、トラック整理で「DRUMSフォルダー」を作りましたが、ミックス時にキック、スネア、ハイハットなどのフォルダー内のトラックを個別ではなく、ドラム全体のボリューム調整をしたい場合などが出てきます。
そんな時は、フォルダー内のトラックの音声出力をすべてバストラックへ送ることにより、「DRUMS フォルダー」を一括で操作することができるようになります。
バスを使うことにより、フォルダー内の各トラック単位だけではなく、フォルダー単位でも操作することができるようになるのです。
ステムミックスがスタンダード
バス単位で管理するミックス
各トラックをグループ分けして、バス単位で管理するミックスをステムミックスと呼びます。
ボーカル、ギター、ドラムなどグループ分けをしたトラックを、各トラックとフォルダーの2段階で、ボリューム調整やエフェクト処理をするのがステムミックスです。
グループ単位でミュート/ソロの切り替え、ボリューム調整、エフェクト処理をするミックス作業は、現在のスタンダードな手法となっています。
ステムミックスからマスタリング
通常のマスタリング作業は2ミックスから行いますが、マスタリングの手法も時代とともに変化してきていて、近年ではステムミックスからマスタリングを行う場合もあります。
マスタリング作業でミックスの失敗を修正するのには限界があり、修正する場合はミックスに一度戻ったほうが良いです。
しかし、ミックスエンジニアとマスタリングエンジニアが違う人間の場合、それは困難な作業になることがほとんどです。
そんな時、ステムミックスからのマスタリングだと、他のグループに影響を与えずに、ボーカル・グループの音量調整をしたり、EQ調整をしたりといったような調整をすることができます。
初心者の方には、現段階ではステムミックスからマスタリングは重要ではありませんが、グループチャンネル単位でのミックス作業がスタンダードであることは頭に入れておくと良いでしょう。
CUBASEでのグループチャンネルの設定方法
前回、「CUBASE Pro」で各トラックをフォルダーへ分けましたが、現時点では、バストラックにはルーティングされていない状態です。
CUBASEでは「グループチャンネル」という名前ですが、実際にバストラックを作り、ルーティングをしていきましょう。
グループチャンネルの作り方はいくつかありますが、ここでは代表的な2つの方法を紹介します。
グループチャンネルの設定1
グループチャンネルの設定の1つ目のやり方として、MixConsoleウィンドウでまとめたいチャンネルを選択した後に「右クリック/control+クリック」する方法があります。
ドラムトラックで説明すると「DRUMS フォルダー」内にあるキック、スネア、ハイハットなどのすべてのトラックを、Shiftキーを押しながら選択します。

その後に「右クリック/control+クリック」すると画像のように「選択チャンネルにグループチャンネルを追加」が表示されますので、選択するとグループチャンネルが追加されます。
グループチャンネルの設定2
2つ目は、トラック追加ボタンからグループチャンネルを追加する方法です。
今度はボーカルトラックで説明すると、プロジェクトウィンドウでトラック追加ボタンを押した後に「グループチャンネル」を選択して「VOCALS Bus」を追加します。

この方法だと、ボーカルフォルダーにある各トラックの出力先は変更されていませんので、インスペクターか、MixConsoleで出力先を「Stereo Out」から「VOCALS Bus」へ変更する必要があります。

フォルダートラックの数だけグループチャンネルを作る
上記した2つのどちらのやり方でも良いので、前回作成したフォルダートラックの数だけ、グループチャンネルを作っていきます。
今回のプロジェクトは5つのフォルダートラックを使用していますので「VOCALS」「DRUMS」「GUITARS」「KEYS」「SYNTH」のグループチャンネルを作りました。
名前はわかりやすいように「VOCALS Bus」「DRUMS Bus」「GUITARS Bus」「KEY Bus」「SYNTH Bus」のように付けています。
ルーティングの確認
すべてのグループチャンネルを作り終えたら、グループチャンネルのソロ/ミュートを切り替えながら、各パートがしっかりとバスへ送られているか、ルーティングを確認しましょう。

上手くルーティングされている場合は、ボリュームのフェーダー操作で上げ下げをすると、グループ内の音だけが反応することを確認することができます。
まとめ
これまでマスタートラックに直接経由されていた音声信号が、バストラックを経由してマスタートラックへ送られる状況になりました。
次回はボーカルのピッチ補正、ハーモニー生成など、本番ミックス前に終わらせておきたいことについて解説します。
