【ミックス&マスタリング入門】第20回 ワンランク上のテクニック

連載【ミックス&マスタリング入門】第19回目は、「メーター」「リミッター/マキシマイザー」「コンプ」「EQ」を使用した実際のマスタリング作業の基本を解説しました。

最終回の今回は、ワンランク上の作品クオリティーに仕上げるためのテクニックをご紹介します。

トータルリバーブでミックスのまとまり感を出す

全体パート用のリバーブ

ミックスにまとまり感が今ひとつ出ていないという場合は、FXチャンネルに全体パート用にリバーブを立ち上げ、センド/リターンでトータルのまとまりを出します。

ボーカルでは「Plate」のリバーブを使用しましたので、トータルリバーブには「Hall」のキャラクターを使用しました。各パートのリバーブのセンド量をひとつずつ調整しますが、低音パート以外はすべてのパートにリバーブを掛けます。

リバーブはミックスの段階で使用

すべてのパートのセンド量を設定するのは非常に面倒なので、「2ミックスにリバーブを掛けてはいけないの?」と思う方もいるはずです。

マスタリング作業時の2ミックスにリバーブを使うと、キックやベースなど低音パートにもリバーブが掛かってしまい、音像がぼやけてしまいます。

そのため、絶対というわけではありませんが、リバーブは基本的にはミックスの段階で使用して、マスタリング作業時にはほとんど使いません。

ボーカルをより聴きやすくする

DAWのオートメーション機能

すでにコンプでボーカルのダイナミクスは調整していますが、ボーカルの歌い出しなどで音量が小さかったり、歌詞が聴き取りにくい箇所があったりと、修正したい箇所が何点かは必ずあります。

そんな時は、ボーカルをより聴きやすくするために、DAWでフェーダー・オートメーション機能を使ってボリュームデータを書いて音量を調整します。凝りだすとボーカルの一音一音を細かく調整することになりますので、これは想像以上に手間の掛かる作業です。

WAVES「Vocal Rider」は、この手間の掛かる音量のコントロールを自動で行ってくれ、記録したデータはボリューム・カーブとして書き出すこともできます。

Melodyneを使って時間を短縮する

ボーカルの音量調整のスタンダードな方法はオートメーション機能を使ったやり方ですが、ノートの音量を一音一音調整することができる「Melodyne」が便利で、作業時間の短縮ができます。

エントリー版の「Melodyne essential」ではノートの音量を調整することができませんが、それ以上のエディションであれば、ボーカルの一音一音細かく調整することが出来ます。

DTM DAW ミックス マスタリング Melodyne ノート 

自動調整の「WAVES Vocal Rider」は違いがありますが、DAWのオートメーション機能とMelodyneを使用したノート音量の調整は、自分で音を聴きながら調整するため、修正後の結果にほとんど違いはありません。

しかし、結果は同じでも、ボーカルの音量調整に掛かる作業時間が大きく違ってきます。以前にも述べた通り、ミックスとマスタリングは非常に時間の掛かる作業です。そのような理由からも、作業時間の短縮につながるツールは積極的に導入していくことをオススメします。

マスタリング時の高音域処理

音圧を上げて音がうるさくなる場合

マスタリングで音圧を上げていくと、ミックス時には気にならなかったハイハット、シンバル、タンバリンなどが耳につき、うるさく感じる場合があります。

EQで耳につくポイントを探して削ってあげるというのもひとつの方法ではありますが、2ミックスに手をつけるので、他のパートにも影響が出てしまい、なかなか上手くはいきません。

ミックスに戻るまえにディエッサーを試す

ミックスに戻り、ハイハットやシンバルの耳につく周波数帯を削るという方法もありますが、その前に試してほしいのが、ボーカルの歯擦音の軽減で使用したディエッサー(DeEsser)です。

あまり知られてはいませんが、マスタリングでもディエッサーは使用され、世界的に有名な超一流マスタリングエンジニアもディエッサーを使用しています。

Spectral Shaperがおすすめ

個人的におすすめなのはiZotope Ozoneシリーズの最上位版「Ozone Advanced」に収録される「Spectral Shaper」です。

DTM DAW ミックス マスタリング ディエッサー iZotope Ozone Advanced Spectral Shaper

ディエッサーというよりもディエッサー系プラグインと言ったほうが正しいですが、「Spectral Shaper」は正確にマスタリング時に耳につくところを軽減してくれます。

スタンダード版と違い、最上位版の「Ozone」は高額ではありますが、「Spectral Shaper」は導入する価値があります。

マスタリングのM/S処理

MidとSideにわけて処理

通常、マスタリングはLR(レフト/ライト)の2ミックスを処理していきますが、MidとSideに2ミックスを分離して行うのがM/S処理で、現在のマスタリングではよく使われるテクニックのひとつです。

初心者の方には少し難しい話ですが、LRでの処理ではできない音の広がりを出したり、音圧を出すことがM/S処理で出来ます。

M/S処理には対応しているプラグインが必要で、現在は多くのメーカーでM/S処理に対応した製品を販売しています。

EQのM/S処理テクニック

かなり奥の深い世界ですので、ここで詳しく解説するのは難しいので、M/S処理に対応しているIK Multimediaの高解像度イコライザー「EQual」を使用した即効性のあるEQのM/S処理テクニックをひとつご紹介します。

DTM DAW ミックス マスタリング IK Multimedia イコライザー EQua M/S処理

M/S処理に対応したEQを持っている方は、画像を参考にSideの低域をカットして、中高域を少しブーストしてみましょう。2ミックスの通常のLRでのEQ処理とは違い、低音域がスッキリして、広がりが出ているのを体感することができるはずです。

リファレンス曲と比較して「何かが決定的に違う」と感じたときは、悩む前に、音圧の出ている現代の曲はマスタリング時にM/S処理が行われているということを思い出してください。

まとめ

トータル20回でミックスとマスタリングを初心者の方に向けて解説してきましたが、今回で終了です。

一昔前に比べると、ミックスとマスタリングは、さまざまな情報をネットや書籍で手に入れることができるようになりましたが、当然、業務秘密が多い世界です。これまで解説してきたことも、両作業のほんの一部に過ぎませんが、それでも飛躍的に作品クオリティーが向上することは間違いありません。

納得のいくものが出来上がりましたら、ぜひ動画サイトや音楽配信サイトに公開しましょう。あなたの楽曲に出合える日を楽しみにしています!