連載【ミックス&マスタリング入門】第18回目は、マスタリングに使う重要なプラグインについて解説しました。
今回は、「メーター」「リミッター/マキシマイザー」「コンプ」「EQ」を使用した実際のマスタリング作業の基本を解説します。
メーターで確認する
メーターで確認しながら作業する
マスタリング作業は「メーター」でピーク値とRMS値を視覚で確認しながら行っていきます。
CUBASE Proにはマスターメーターとラウドネスメーターが標準で搭載されているので、別途用意する必要はありません。ピーク値とRMS値がわからないというCUBASE以外のDAWを使用している方は、定番と呼ばれている多くのマスタリングリミッターではピーク値とRMS値を確認することが出来るので、そちらで代用しましょう。
今回はIK Multimediaのメータープラグイン「Full Metering」を使用して数値を把握していきます。メータープラグインは、マスタリングに必要なさらに詳しい情報を得ることができます。
マスターメーターのPEAKとRMS
マスターメーターのPEAK(ピーク)は、曲の瞬間音量の最大値を示し、RMSは曲の音の大きさの平均値を示します。
PEAKは0dBを超えると音がクリップするということ以外は気にする必要がありませんが、マスタリングで重要視されるRMSは非常に重要です。
RMSは -8dB付近を目指すと良いと言われているものの、近年の市販されている楽曲だとRMSの数値が-6dBに突入しているものもあります。
第17回でも「音圧競争が再熱してきています」と書きましたが、これは音圧上げで最も重要なリミッター/マキシマイザーの性能が向上したことが大きいです。
ミックスのRMSチェック
市販されている曲と初心者の方の曲の迫力や音量差の決定的な違いは、RMSです。まずは勉強だと思って、市販されているCDをDAWに読み込んでから再生して、自分のミックスと市販曲のRMSの差をメーターで確認しましょう。
自宅でのマスタリングで音圧上げだけに関して言えば、市販曲のRMSに近づけていく作業で、上記画像は今回のミックスのサビの部分のRMSです。
RMSの数値は -13dB ~ -14dBですので、マスタリングプラグインを使って、-7dB ~ -8dBになるようにプラグインを使用して調整してゆきます。
使用するマスタリングリミッター
市販曲レベルの音圧を出す
マスタリング時に音圧に大きく関わってくるのは、マスタリングリミッターです。
マスタリングリミッターという名目のプラグインが多数存在しているものの、クオリティーの差が非常に大きく、市販されている曲ほどの音圧を稼げないものも非常に多いです。
FabFilter「Pro-L2」
今回使用するFabFilterのリミッター「Pro-L2」は、しっかりと市販曲レベルの音圧を出すことができます。
ミックスと同様にマスタリングリミッターの性能が左右する作業ですので、マスタリング時はしっかりとした製品を使いましょう。
リミッター/マキシマイザーの初期設定
アウトプットレベルの設定
FabFilter「Pro-L2」でRMSが -7dB ~ -8dBになるように音圧調整をする前に、「Pro-L2」のアウトプットレベルの設定をします。
CDが主流の時代のアウトプットレベルは -0.1dBでしたが、現在はネットで楽曲を配信するのが当たり前の時代で、配信する際にWAVファイルを様々なフォーマットに変換します。
その際にアウトプットレベルが -0.1dBだと、mp3などに音楽ファイルをエンコードすると、ピーク値が0dBを越えて音がクリップしてしまうことがあります。
-0.1dBでもクリップしないエンコーダーもありますが、アウトプットレベルは -0.3dBだと安全とされ推奨されています。
ディザー(Dither)の設定
ミックスからマスタリングまで 24bitで作業してきましたが、現在でもマスタリングではCDに合わせて16bit/44.1kHzで書き出す場合があります。24bitから16bitに変換すると音が劣化することになりますので、その劣化を軽減するためにディザリングを行います。
Cubaseにはディザリング専用プラグイン「UV22」が標準で付属しているので「UV22」を使用しても良いでしょう。
「Pro-L2」もそうですが、ほとんどのサードパーティー製のマスタリングリミッターではディザーの設定を行うことが出来ます。そのため、別途ディザリング専用プラグインを立ち上げる必要はありません。
もし、ディザリングプラグインを使用する場合は、マスタリングリミッターの後にインサートします。
ディザリングは特に難しい作業はなく、ディザー(Dither)の設定で16bitを選択して機能を有効にするだけです。
曲の音圧上げと調整
曲の音圧を上げる
アウトプットレベルとディザーの設定が終わったら、マスタリングリミッターに標準で搭載されているいろいろなプリセットを聞きながら、曲調に合った好みのものを選択します。
もちろん細かい設定をすることも出来ますが、「Pro-L2」はプリセットを選んで入力ゲインを上げるだけの簡単操作で音圧を稼ぐことが出来ます。
EQとコンプで調整する
プラグインの性能が良いと言っても、音圧を上げてRMSが -7dB台に突入すると、音が歪んできたり、低域が強調されてきますので、「Pro-L2」の前にEQとコンプを立ち上げて調整していきます。
今回は「コンプ→EQ」の流れで調整しましたが、マスタリング時に「コンプ→EQ」と「EQ→コンプ」の順序で悩む方もいると思います。これに関しては、ミックスでのトータルコンプの掛け具合などの個人差がありますので、決まりがあるわけではありません。
まとめ
どのDAWを使うにしても、今回解説した「メーター」「リミッター/マキシマイザー」「コンプ」「EQ」はマスタリング作業の基本となります。
他にもマスタリングでは、いろいろなツールとM/S処理と言われるテクニックを使用しますが、まずはこの4つのプラグインの使い方をしっかりとマスターしましょう。
最終回となる次回は、ワンランク上に行くためのミックスとマスタリングのテクニックを解説します。