作曲を学んでみたい、けれど一方で、学ぶことによってオリジナリティがなくなってしまう気がする……。じゃあ、作曲を学ぶ意味って?
『音大で学ぶ作曲』連載第1回では、音大で作曲を学ぶメリットや、意外な意義について考えてみましょう。
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作曲を始めてみると感じるいろいろなこと
音楽の魅力に取り憑かれ、いつか自分の力で生み出してみたいと思い、作曲を始めた人も多いのではないでしょうか?
そして作曲を自己流でやってみる。『音楽は世界の共通語』と言われたりするけれど、文章を書くのと違ってスラスラといかない。
絵を描くのと違って自信持って書けない。そして見様見まねでやっている作曲が、本当にちゃんとできているのか不安になってくる……。
そして、音楽大学で作曲の勉強をしようと考え出す人もいるのでは?
しかしそもそも、作曲を学ぶことなんてできるのでしょうか?
言葉と比べるとより多様な意味を持つことのできる『音』、絵画とは違って具体的に目に見える形として現れない『音』。
そんな『音』を用いる音楽を、大学というアカデミックな場所で学ぶことなんてできるのでしょうか?
よく考えてみると、作曲家の中には独学で作曲法を修得した人がたくさんいます。
たとえば、あの有名な『ゴジラのテーマ』を作曲した伊福部昭や、『ポピュラー音楽史上最も成功した作曲家』であるポール・マッカートニーも音大に行っていません。
それでも後世に残る名曲を作ることができるのです。
音大に行くメリットとは??
それでは、多くの人々が音大へ行き、作曲を学ぶのはなぜでしょう? 音大では特別な作曲方法を学べるのでしょうか?
音大の学費は高く、ある私立の音大では卒業までに850万円の学費を支払う必要があります。
しかし、学外で習えば1レッスン1万円以上支払わなければ習えないような先生のレッスンを4年間習うことができ、さらには作曲に関する授業の他、楽器のレッスンや音楽学、語学の授業も受ける機会が、音大にはたくさんあります。
また、付属の図書館や音楽資料室では、作曲を勉強するために必要な高価な楽譜や音楽書を自由に取り扱うことができ、それはとても魅力的です。
そのように環境に恵まれること、が音大で学ぶことの最大のメリットです。
そして音大には、音楽家を志す多くの人がやってきます。
そのような人々と知り合い、語り合い、そして時にはけんかをするというのも大事なことで、一生の友達として交流できる人と知り合えることは作曲家として、そしてなによりも人として貴重なことなのではないでしょうか。
ドイツの作曲家ブラームスは、ヴァイオリニストであるヨアヒムとの深い友情の中で多くの名曲を生みました。
ヨアヒムの存在なくしてはおそらく彼のヴァイオリン協奏曲も生まれていなかったでしょう。
音大で作曲を学ぶことの意義について考えてみる
音大という恵まれた空間に魅力があることははっきりしましたが、それでは、そんな音大で作曲を学ぶことは可能なのでしょうか?
『音』は目に見ることができません。しかし目に見ることのできない音楽であるからこそ、作曲を学ぶことに意義があり、可能性があるのではないでしょうか。
作曲に限らず、なにかを表現するとき、熱中するあまりに客観的でないものができてしまうことがよくあります。
夜に書いたラブレターのように、書いたものを改めて見てみると恥ずかしくなることもあるのです。
なにかを表現するときには、表現するという情熱も大事ですが、それに加えて、その表現されたものを批判する力も大事になってきます。
つまり、自分の作品を客観的に見る力です。
作曲に関する様々な理論や方法は、実は批判力を養うためのものでもあるのです。
また、音大では、師事する作曲の先生のレッスンの中でも、その力を強く育てることができます。
どんなに自信を持って書いた音楽でも、先生は厳しく批評してきます。
その批評に対して、初めのうちは抵抗を感じることが多々ありますが、時間が経って改めて作品を見てみると、その批評が正しかったことに気がつくのです。
音楽は、客観的に創作することが難しいものです。だからこそ、批判力が作曲において、とても重要な要素なのです。
まとめ
作曲を続けていると、理論を習うことや作曲を学ぶこと自体に抵抗感を感じることがよくあるかと思います。
そういった理論や作曲法が、自分自身のオリジナリティを損なわせてしまうのではないかと恐れてしまうのです。
しかし理論や作曲法を学ぶ中で、もしそのオリジナリティが損なわれたと感じるのであれば、もしかするとそのオリジナリティは本当のオリジナリティではなかったのかもしれません。
そしてなにかを表現するということは、表現したものを世の中に出すということで、世に出せば必ずなにかしらの批判を受けるでしょう。
それらの批判と向き合う力を養うために、理論や作曲法を学ぶことは有意義なのです。
今回は、作曲を音大で学ぶことの意義について考えてみました。
次回からはより踏み込んで、実際に音大で学べる作曲方法について一緒に考えていきましょう!
>次回 2時間目 音大で学べる音楽理論
