作曲のレッスンって、どんなことをするの? 何が学べるの? 楽器のレッスンと違って、なかなか想像できない音大の作曲レッスン、その様子を覗いてみましょう!
作曲のレッスン??
音大生は実技のレッスンを中心とした一週間を過ごしますが、作曲のレッスンはどのようなものなのでしょう?
「ピアノやヴァイオリンのレッスンはなんとなく想像できるけれど、作曲のレッスンってどんなもの??」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
今回は作曲のレッスン風景を少し覗いてみましょう!
レッスンですること
作曲をするとき、作曲家は少なからず何かを表現しようという意欲を持つのではないでしょうか。
前衛音楽のように難解なものを作曲するときだけではなく、ポピュラー音楽を作曲するときも何かしらの表現の意欲を持つものでしょう。
つまり作品の背景には、作曲者のメッセージがあるのです。
しかしながら、そのメッセージを音楽で表現することは難しいものです。
作曲者には表現しようとしているメッセージが明確に見えていても、そのメッセージが音楽としてきちんと現れ、多くの人に伝わるとは限らないのです。
そこを判断するために客観的な視点が必要で、そのために作品を鑑賞する第三者として、先生の存在が貴重になってくるのです。
作曲のレッスンは、ほとんど会話で成り立っています。
何を表現したくて作曲したのか、表現するためにどのような音楽的な工夫をしたのか、この作品のオリジナリティとはなにか……。
そんな会話で成り立っているレッスンの積み重ねで、自分の作品を客観的に判断する能力を身につけていくのです。
オリジナリティを消してしまわないように
以前にも述べたように、熱中して作った作品でも、翌朝に冷静になって改めて見てみると、「なんでこんな曲を書いたんだ……」と思ってしまうことがあるものです。
自分の書いた作品を客観的に見て、修正をしたりするためにも自分の中に冷静に判断できる自分を作ることは大事で、作品が一通り完成したら発表する前に数日おいて見直してみると良いでしょう。
このことをよく「作品を寝かせる」と言うのですが、寝かせた後に作品を見てみると、書き換えた方が良い音や、むしろ積極的に書き換えたい音が見えてくるのです。
とはいえそこには注意が必要で、ある日のレッスンの中で私は先生から次のようなことを言われました。
「作品は時間が経てばお酒のように熟成するけれど、気をつけないと新鮮さを失ってしまう」
熱中して作曲をしていると、熱中しているあまりに粗い部分ができてしまうことがありますが、その粗さを整えるべきか、整えるにしてもどの程度整えるべきか考えた方がいいということです。
というのも、この粗さは時にその作曲者のオリジナリティとして現れる魅力的な部分である場合があるからです。
もしその粗い部分がどうしても気になる場合は、それをまるまる書き換えてしまうのではなく、この部分をより効果的に用いるための方法を考え直すべきだということも先生から聞きました。
たとえば、その部分を曲中ではなくて曲の頭に持ってくるとより効果的になることがあるかも知れませんし、場合によってはその部分から、独立した別の曲を作り出してもいいのかも知れません。
生まれ出た音楽をどのように扱うかということを、経験的に作曲のレッスンでは学ぶことができるのです。
グループレッスンで学べること
レッスンは個人のときとグループのときがあり、グループレッスンでは数名の学生が自作品についてプレゼンテーションをします。そこで他の学生がどのような作曲方法を使っているのか知ることができます。
ある学生はミュージックコンクレートという、自然や機械の音をコンピュータで加工して組み合わせる方法を採ったり、また別の学生は図形楽譜を使った、もはや五線譜を用いない作曲方法を採ったりします。それら様々な作曲方法を合せて用いる学生もいたりします。
作曲方法は本当にそれぞれ自由です。
とはいえ、比較的オーソドックスな作曲方法もあります。それは、メロディやハーモニー、リズムのモティーフをいくつか作って、それぞれを組み合わせたり、拡大させたりしながら曲を作っていく方法です。
このモティーフとは、音楽の最小単位のことです。たとえば、「ド→レ→ミ」という一音ずつ上昇するモティーフを作ったら、そのモティーフを拡大するために、次は「レ→ミ→ファ」というように音をずらしてつなげることができます。
そういったオーソドックスな作曲方法を学ぶために、音大生の多くはシェーンベルクの「作曲の基礎技法」という本で勉強します。
まとめ
今回は作曲のレッスン風景を少し覗いてみました!
レッスンでは様々な人の作曲方法に接することができ、それらは自分自身の作曲へ刺激を与えてくれます。
ところで、音大ではいろいろな編成の作品を作ります。
たとえば、ピアノ曲だけではなく、弦楽四重奏曲や歌曲など、様々な編成を作り分ける方法もレッスンで学ぶことができます。
次回はレッスン室に少し入ってみて、具体的な作曲方法についてみてみましょう!