音大では、どのような作曲を学ぶのでしょうか。扱う作品の編成、そして「歌曲」を例とした具体的な作曲手順についてご紹介します。
音大で作る作品の編成とは??
音大では、様々な編成の作品を作曲するために、それぞれの編成にあったオーソドックスな作曲方法を学びます。最高学年になると自由に編成を決めることができるのですが、それまでは編成が指定されていることがほとんどです。
二重奏曲や歌曲、弦楽四重奏曲、そして大学によっては管弦楽曲の提出も求められるそうです。
課題とされているものには、理由があります。たとえばヴァイオリン・ソナタなどの二重奏曲の作曲は、ピアノ以外の楽器のために作曲をする導入です。
歌曲は器楽とは異なり、制約の多い編成です。なぜなら人の声は楽器とは異なり音域が狭い上に、技術的にも制限があるからです。そして歌い手によっても、得意な音域と技術は大きく変わってきます。
さらに、歌曲は詩を使います。詩をどのように取り扱うのかという問題も、歌曲を作曲する上で重要なポイントとなるのです。
そして、弦楽四重奏曲は室内楽の定番の編成です。この編成では、ピアノを使うことができないこともポイントです。
また、弦楽四重奏とは簡略化された管弦楽とも考えられます。弦楽四重奏の弦楽器の数を増やし、そこに管楽器を加えれば、古典派の管弦楽曲の様式に近づきます。
多くの管弦楽曲を作曲したR.シュトラウスがその著書の中で、「管弦楽の作曲を学ぶために、まず多くの弦楽四重奏曲を書くことをお勧めしたい」と述べているように、この編成はそれが室内楽として重要な編成であるというだけでなく、管弦楽の作曲のための第一歩ともなるのです。
そして管弦楽曲はいうまでもなく、多彩な表現を可能にするとても重要な編成です。
今回は以上の中から、少しややこしい歌曲の作曲方法について学んでみましょう!
歌曲のいろいろな作り方
歌曲を作る際には、声に関する様々な制約があると述べましたが、じつはその作曲方法はとても多彩です。
そもそも、使用する歌詞を自分で作詞しても良いのです。その際、作曲の前に作詞をするいわゆる「詞先」か、作詞の前に作曲をする「曲先」を選ぶことができます。
また、作詞作曲を同時進行させて行うことも可能でしょう。
さらに、歌詞の言葉とメロディの関係も多様です。つまり、言葉のアクセントを守りながらメロディをつける方法と、逆にそれらを気にせずに自由にメロディをつける方法もあります。
音大では伝統的な歌曲の作曲方法として、既存の詩に、その言葉のアクセントを厳守しながら曲をつける方法が採られます。逆に、ポピュラー音楽の世界では自分で作詞をし、その言葉のアクセントはそこまで厳守されていないように思えます。
かつて恩師が、ある有名なポップス歌手の曲を例にして語ってくれたことが印象に残っています。
恩師が言うには、「その歌手の曲には日本語としておかしなアクセントがある。だけどそのおかしさが、外国訛りの日本語のような雰囲気を出し、魅力的でクールなんだ」ということでした。
つまり、伝統的な作曲方法とポピュラー音楽の作曲方法にはそれぞれにメリットがあり、そもそも作品の価値とは作曲方法によってではなく、作品そのものの魅力によって決まるのです。
音大で学ぶ歌曲のレシピ
さて、具体的にはどのような手順で歌曲を作曲するのかみてみましょう!
まず大事なことは、詩を吟味することです。詩は曲の雰囲気を決定づけます。そして選んだ詩を朗読し、読んでいる中で印象的な部分や、自然にメロディが浮かんでくる部分があったらメモしましょう。
そして、それぞれの言葉の正しいアクセントを調べて、それもメモしましょう。音大では正しいアクセントを求められることが多いので、学生は日本語アクセント辞典などで調べます。
その作業の後に、アクセントに合うメロディをつけていきます。この作業はとても重要です。
たとえば、「花が」という言葉にメロディをつける際、アクセントは次のようになります(「/」は上げる調子、「\」は下げる調子、「―」は高さを維持することを意味します)。
アクセント:/―\
歌詞 :はなが
もしそれを次のようにすると「鼻が」となってしまいます。
アクセント:/――
歌詞 :はなが
そのようにならないために、「花が」につけるメロディは次のように山形のメロディとなるのです。
この流れで歌曲は出来上がります。
そして最後にもう一点、歌曲を作曲する際に心がけてほしいことがあります。それはピアノの役割についてです。ピアノは詩の雰囲気を際立たせる役割を担います。
歌曲のピアノは、特にR.シューマンの歌曲の中で効果的に使われているので、ぜひ楽曲を分析して取り入れてみましょう!
まとめ
今回は、扱う作品の編成をご紹介し、歌曲の作曲方法に着目してみました。
ほんの少しだけ触れましたが、楽曲分析をすることも作曲のためには重要です。分析によって、その作曲家の作曲方法が垣間見えてきます。
次回は、音大ではどのように楽曲を分析するのかをご紹介します!