音大では、作曲以外にどのようなことを学ぶことができるのでしょうか。そしてそれは、自身の作曲活動に、どのように活かせるのでしょうか。
「表現」をするために大切なことについて探ってみましょう!
音大で学べる様々なこと
音大では、作曲法や楽曲分析以外にも、様々な授業を受けることができます。
自主的に学んだ他専攻の授業などが、自身の作曲活動に大きな影響を与えることが多くあります。
音大では作曲以外にどのようなことを学ぶことができるのか、探ってみましょう!
演奏することの大切さ
多くの作曲専攻では、ピアノだけでなく、その他の楽器も学ぶことができます。いろいろな楽器に触れることは大切なことです。
たとえば、ヴァイオリンやフルートは構造がピアノと異なるため、できることも限られてきます。
ピアノではだいたいの和音を簡単に弾けますが、ヴァイオリンでは和音によっては演奏が困難ですし、フルートでは一般的ではありません。
このように、楽器それぞれに特性があるため学生は管弦楽法を学ぶのですが、理論的に理解するだけではなく、実際に演奏できることも大切です。
ある作曲家が、「管弦楽法を効果的に修得するためには、楽団の中で演奏することが一番だ」と述べたことがあります。
作曲法の理論は、実践に即したものでなければいけません。特に管弦楽法の場合は、演奏の経験が重要になってくるということを理解しておく必要があるでしょう。
音楽を学問的に知る
音楽に関する研究を行う学問を音楽学といい、日本では多くの音大や、一部の総合大学で学ぶことができます。
音楽学の知識を持つことが作曲にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
音楽学とは言ってもその研究内容は様々で、いわゆるクラシック音楽に関しては、音楽史の研究が盛んであるように思います。
ところで作曲とは、まだ存在していない作品を創作することで、その作品は、公で演奏されることによって、多かれ少なかれ人に影響を与えます。
それは未来を創造する行為であると言っても良く、その意味では未来志向なものです。
そんな作曲に対して、過去の音楽を研究する音楽史はどのような意味を持つのでしょうか。
フランスの作曲家フォーレは、パリ音楽院の院長に就任し、音楽院の改革に取り組みました。
その改革の一つが、「音楽史の授業を、作曲と和声法を履修する学生全員の必修とする」というものでした。
その背景には当時の音楽院が抱えていた問題も関係していますが、フォーレ自身の信条も大きく関係しています。
フォーレは学生時代に、同時代の音楽だけではなく、中世やルネサンスの音楽も学びました。その経験によってフォーレは音楽の伝統に対する感覚を養うことができたのです。
作曲は未来志向なものだと述べましたが、伝統を尊重することも大切です。
そもそも音大で学ぶ作曲方法とは、ヨーロッパの伝統的な作曲方法です。その伝統を保持しながらも、作曲家個人の個性によって革新的な音楽が作られてきました。
その音楽に対して人々が評価し、その評価の積み重なりが音楽史であると考えることができます。
伝統と個性のバランスが重要なわけですが、個性を追求するために多くの作曲家が興味を抱いたものが民族音楽学です。
特に東洋人である私たちにとっては、自分たちの音楽のルーツを知ることも大事です。
近代以降の音楽には民族音楽の影響も多く見られ、それは彼らの個性を形成しているものの一つなのです。
音楽から離れて
音楽だけでなく、他の芸術を知ることや、哲学を学ぶことも重要です。これらは音楽と近い関係を持ち、これまでも互いに影響を与えてきました。
その他にも外国語も重要です。外国語を学ぶことは個性や感性を磨くためというよりも、音大で学ぶ作曲方法をより理解するために重要です。
たとえばシューマンはドイツ語を、ラヴェルはフランス語を使っていました。彼らはその各々の自国語を用いて、泣いたり笑ったり、気持ちを伝えたりしてきたのです。
日常的に使っている言語は、少なからず自身の音楽作品に影響を与えるものですのです。
シューマンの作曲方法を修得したいと思ったときに、ドイツ語の知識を少しでも持っていることは修得の手助けとなるでしょう。
またそれだけでなく、現代はインターネットを介して世界中のいろいろなところと繋がることができます。そんな時代に外国語を話せることは作曲活動を有利に運んでくれます。
このようにいろいろな面を考えてみると、外国語を学ぶことも重要なのです。
まとめ
今回は、音大で学ぶことのできる様々な授業について紹介しました。
興味あることは何でも取り組んでみると、きっと最終的には作曲に生かすことができるでしょう。
かつて、フランスの作曲家メシアンが、その弟子で最初は数学と建築を学んでいたクセナキスに対し、「君は数学を知っている。なぜそれを作曲に応用しないのか」と言った逸話は有名です。
表現をするためには、知っていることを何でも創作に応用する、ある種の貪欲さが必要なのかも知れませんね。
次回は授業から少し離れて、作曲専攻の学生生活についてご紹介します。