【音大で学ぶ作曲】8時間目 実演から見えてくる作曲方法

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作曲科の学生の集大成である試演会。ここから学ぶことのできる作曲方法はたくさんあります。今回は、試演会を通してどのような作曲方法を学ぶことができるかをご紹介します。

目次

一年間の集大成、試演会!

作曲科の学生の集大成は試演会です。一年間かけて作曲した作品が、この試演会で演奏されます。

このような実演の機会は有意義なもので、ここから学ぶことのできる作曲方法はたくさんあるのです。

試演会からどのような作曲方法を学ぶことができるのでしょうか? 考えてみましょう!

演奏家から学ぶ作曲方法

試演会に向けて、作曲科の学生は、演奏を依頼している学生たちと多くの練習やリハーサルを重ねていきます。

その最中での会話からは多くのことを学べます。というのも、演奏家が演奏をしている中で気づくことや、演奏の苦労を知ることができるからです。

たとえば、演奏が難しいフレーズや奏法は、管弦楽法の理論だけではわからないこともあります。

次の楽譜を見てみましょう。

この楽譜はオーボエのために書いたものです。しかし、この楽譜をオーボエ奏者に渡せば、よほど特殊な能力を持った奏者でない限り、この楽譜は難しいと言われることでしょう。

というのも、息つぎの箇所がないからです。オーボエという楽器は多くの息を使います。そういったことを考えると、この楽譜を演奏することは難しいのです。

いつの時代でも作曲家はその情熱のあまりに演奏家に対して無茶な要求をしてしまうもので、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「ハンマークラヴィーア」も作曲当時は演奏不可能な超難曲でした(この作品は現代でも難曲であることに変わりありませんが、それでも演奏できる奏者はたくさん出てきました)。

そうはいっても、演奏家にとっては、より簡単な楽譜の方がいいはずです。たとえば、先ほどの譜例も、次のように奏者をもう一人増やせば、ちゃんと演奏できそうです。

かつて大学の恩師からは、「一緒にお酒を飲みに行けるような演奏家の知り合いを作った方がいい」とよく言われました。練習の場だけに限らず、普段のさりげない会話の中から吸収できることはたくさんありそうです。

実演から見えてくるアンサンブルの秘訣

演奏不可能ではなくても、作曲者自身が書いた音が想像していたものから大きく離れていて困ることもあります。

たとえば、次の譜例を見てみましょう。

ここでは、フルートが低い音域でメロディを吹いていて、すぐその下でピアノが伴奏しています。

一見、きちんとアンサンブルできる楽譜に見えるかもしれませんが、実はこの場合、フルートのメロディはピアノの音にかき消されてしまう可能性が大きいです。

フルートの低い音域は豊かな美しい響きを持っていますが、強い音を出すことが難しく、どうしても弱い音になってしまいます。そこにピアノが加わると、ピアノの音質の強さにフルートが負けてしまうのです。

しかし、この解決方法はいくつかあります。たとえば、ピアノの伴奏をいっそのこと無くしてしまうか、

とてもシンプルな伴奏にするか、

もしくは、フルートよりも高い音で伴奏するか、などです。

このような問題は、クラリネットの低い音域にも言えます。クラリネットの低い音域はシャルモー音域と呼ばれ、美しい響きを持っていますが、この音域もピアノの伴奏を被せることによってかき消されてしまいがちです。

これらの問題は管弦楽法の教本だけでは分からないものです。このようなアンサンブルの秘訣も、実演を通して知ることができます。

まとめ

このように、試演会を通して学ぶことができる作曲方法はたくさんあります。管弦楽法の修得には特に実演が大事なのです。

さて、試演会までたくさん練習やリハーサルを重ねれば、いよいよ本番です! 本番での演奏からも吸収できる作曲方法があります。

演奏を通して、作曲科の学生たちはどのようなことを得られるのでしょうか? 次回はそのことについてご紹介します。

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