【はじめての対位法】15.これまでの対位法のまとめと自由対位法

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目次

重要な「不協和音の扱い方」

2声対位法の「1:1」から3声対位法の「1:4」まで学んできました。これまでに学んだことを例を挙げながら復習しつつ、今回は3声の自由対位法を紹介します。

対位法のルールとは「不協和音の扱い方」であると言えます。連続5度や連続8度に気をつけなければいけないものの、協和音はおおよそ自由に使うことができます。逆に不協和音は用いられるためにいくつかのルールを守らなければいけません。協和音のように便利に使うことはできないわけです。これらの不協和音のルールについて、ルールから外れてしまっている例を見ながら復習しましょう。

譜例1

1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 対位法 音楽理論 独学 自宅

これは低音声部に定旋律が、ソプラノ声部に「1:2」が置かれているものですが、音程に関するミスが2ヶ所あります。まずは2小節目の低音とアルトに注目してみましょう。ここでは音程が長7度という不協和音になっています。よく見てみると同じ小節のソプラノとアルトの音程は協和音(短6度)になっています。しかし、対位法の規則にとって重要なことはここではありません。

3声の対位法の場合、低音との音程関係に気をつけなければいけません。つまり、「ソプラノと低音との音程」と「アルトと低音との音程」はルールに沿って作られる必要があり、「ソプラノとアルトとの音程」は気をつけなくても良いというものでした(もちろんソプラノとアルトとの音程も「美しい」ものであることは理想ですが、ルール上はその必要はありません)。譜例1の2小節目ではソプラノと低音との音程、ソプラノとアルトとの音程は規則通りになっているのですが、アルトと低音との音程でルールから外れてしまっているのです。

譜例2

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むしろ重要なのは低音との関係ですので、次のように直してみると改善されます。

譜例3

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さて、もう1つのミスは3小節目です。どこが間違っているのでしょうか?

譜例4

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小節の強拍で不協和音が生じています。これは対位法的には間違いでしたね。「基本的に」不協和音は弱拍で用いられました。またその前の音から順次進行し、さらに同じ方向に順次進行して協和音になる必要があります。なので、譜例4は次のようにすると認められることになります。

譜例5

1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

しかし、先ほど「基本的に」と述べたのには理由があります。例外もあるのです。それはシンコペーションが使われる場合です。「1:2」の対位法において、ある小節の弱拍からその次の強拍にタイがかかることをシンコペーションと言いますが、このタイ(シンコペーション)がかかる音は強拍であるのにもかかわらず、不協和音にすることができます。

譜例6

シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

しかしこの音は、その次に順次進行で協和音になることによって認められるのです。

譜例7

シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

なので、譜例4もシンコペーションが用いられると改善されます。

譜例8

シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

これらを踏まえて譜例1を直してみると次の2通りにすることができますね。

譜例9

シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

シンコペーションについてもう少し振り返ってみると次のようなものがシンコペーションの良い例となります。

譜例10

シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

ここでは①と②に着目しましょう。①は強拍にシンコペーションがかかり、不協和音になっています。なので、その次の音に順次進行することで協和音に解決しています。

②はどうでしょうか? ここではシンコペーションのかかる音は協和音です。このような場合はシンコペーションのない場合と同じように自由に扱うことができました。シンコペーションも取り扱いに注意するものは不協和音が生じる時です。

さて、次の例ではルールから外れたシンコペーションが使われています。

譜例11

シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

早速気がつくのは2小節目。強拍にシンコペーションがかかって不協和音になっています。しかしその音は跳躍進行で弱拍の協和音に進んでいます。ここは順次進行で協和音に解決すべきですね。

その次にルールから外れている部分は4小節目です。ここはシンコペーションのかかる強拍と低音との音程が減4度となっていて不協和音です。この場合は、協和音に順次進行することで解決しなければいけません。だけどここでは順次進行してはいるものの、協和音ではなく不協和音(減5度)に進んでいます。というわけで認められません。これらを規則通りにすると次のように改善できます。

譜例12

シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

もう一つの対位法のポイント=リズムの扱い方

3声の自由対位法にチャレンジする前に、対位法においてどのようにリズムを扱うかおさらいしましょう。「1:4」までは具体的に不協和音の扱い方に気を使えばどうにかできましたが、リズムが自由になると、その分リズムのルールにも気にしなければいけません。例を見ながら振り返ってみましょう。

譜例13

リズム シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

この例は、残念ながらほとんどのリズムに間違いが含まれています。まず2小節目。ここでは小節の前半に比較的短い音符である四分音符が、後半に長い音符である二分音符が置かれています。リズムについての規則では、むしろ逆にしなければいけません。つまり、1つの小節の中で長い音符が先に出て、短い音符は長い音符の後に出なければいけません。たとえば次のようなリズムになるはずです。

譜例14

リズム シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

また、全体的にリズムの形が単調です。同じリズム形が続くと退屈に感じてしまいます。せっかくの自由対位法なので、自由にリズム形を変えていきましょう。譜例13を整えると次のようになります。

譜例15

リズム シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

リズムを綺麗に扱うことができている例として次のものを挙げます。

譜例16

リズム シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

四分音符などの短い音符は小節の後半に置かなければいけませんが、ここでは小節の前半に四分音符を置くパターンが出ています。まず1小節目を見てください。早速四分音符が出ていますね。これは例外的に認められるものでした。

ここのポイントは、四分音符が2回続いた後にシンコペーションが置かれていることです。次の例も同じようなもので、全て認められます。これらは教本によってはむしろ「優美」なリズムとして称されるものでもありました。

譜例17

リズム シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

また、譜例16の4小節目も四分音符から始まっていますが、これも認められるものでした。なぜなら、その前の小節の後半で四分音符が既に出ているからです。このように、前の小節で四分音符が正しく扱われていれば、四分音符が小節の前半に置かれていても問題ありません。この例として、次のリズム形も認められることになります。

譜例18

リズム シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

3声の自由対位法

これまで対位法の復習をしてきましたので、いよいよ3声の自由対位法に取り組んでみましょう。とは言っても、3声の自由対位法について新しいルールはありません。まずはその例を出しますので、ピアノなどで弾いてみてその雰囲気を味わってみましょう。

譜例19

リズム シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

ここで自由対位法の課題を出します。これまでのルールを土台にして、対位法を構築していきましょう。

課題

リズム シンコペーション タイ 1:2 協和音程 不協和音程 不協和音 強拍 弱拍 順次進行 対位法 音楽理論 独学 自宅

前回課題の解答例は次の通り。「1:4」をアルトに置いたものと低音に置いたものを挙げます。

前回課題解答例

1:2 1:4 順次進行 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論 独学 自宅

まとめ

今回は、例を見ながらこれまでの対位法の総復習をしました。総括をすると、ポイントは「不協和音の扱い方」と「リズムの扱い方」であります。この2つのポイント、つまり不協和音とリズムの法則を守ることで自由対位法が作られ、対位法を修得できるわけです。

次回からは、対位法が実際にどのように作品に応用されてきたのか、実例を挙げながら紹介したいと思います。カノンやフーガの例に触れながら、作曲家たちがどのように対位法を用いていたのか見ていきましょう。

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