前回は「楽譜」について説明しました。
今回は、歌の上手い魅力的なヴォーカリストの基準のひとつ、「リズム感(グルーブ感)」について説明します。ヴォーカルがどんなリズムを感じているかは、とても重要です。リズムを感じて歌うことで、歯切れの良い歌になり、聞き手にとってもリズムを感じられるようになります。
リズム感をつけるためのは、実際に体を動かして行うことが効果的です。段階的なトレーニング方法を紹介しますので、ぜひ練習してみましょう。
テンポに合わせてリズムを叩けるようになろう
いよいよリズムの世界に入っていきます。まずは拍子について説明します。楽譜の最初には拍子が書かれています。この分数のような数字は、その曲が何分の何拍子かを表しています。
たとえば次の画像のように、拍子にはいろいろな種類があります。
その他にもいろいろな拍子がありますが、考え方は全て同じです。実際に楽譜を見て手を叩く練習をしてみましょう。これはリズムトレーニングの基礎であり、とても重要なところです。歌の上手い魅力的なヴォーカリストの基準である、「リズム感(グルーブ感)」がある、です。手の叩き方も大事ですので、以下の解説を参考にして下さい。
空間を意識して叩くのがポイントです。ビートは波のようにうねって常に動いています。決して点のように止まったイメージでリズムを感じないようにしましょう。
楽譜1~7を使ってリズムの練習してみよう
メトロノームを準備して、速さを♩=60にして下さい。楽譜に書いてあるように口で「1、2、3、4」と言いながら、手拍子マーク(音符)があるところで手を打ちましょう。
それではさっそく練習です。
どうでしたか? 慣れてきたら、メトロノームの速さを上げて練習してみましょう。
次に、8分音符を入れた楽譜で練習してみましょう。8分音符は、今までひとつ手を叩いていたところに2つ入れるので、速く叩く必要があります。「いーち、にーい、さーん、しーい」と数えると叩きやすいかと思います。ちなみに、アメリカではこういったときは、「one and two and three and four and」と数えます。ぜひ英語読みにも挑戦してみて下さい。
それでは、ここからは足も使って練習をしてみます。足は右足、左足のどちらでも良いですが、つま先を固定して、かかとでリズムをする習慣をつけておくと良いでしょう。まずは4分音符だけのものですが、足が入るので難易度が一気に上がります。最初はゆっくりから始めて、少しずつ速くしていきましょう。
いかかでしたでしたか? 足が入ることによって、かなり難しく感じたかと思います。
では次は、先ほどと同じように8分音符を入れた練習に入ります。焦らずにゆっくり練習していって下さい。
この1~7の楽譜の練習を、慣れるまで続けて下さい。
歌いながらリズムを打つ
それでは、さらに複雑な練習に入っていきます。先ほどのリズム練習を、歌いながらしてみましょう。歌は、今回は誰でも知っている簡単な歌にします。前回の復習で、まずは楽譜を読んでみましょう。音符の下に、ドレミで音の名前を書いてみてください。
いかかでしたか? スラスラと書けましたか? こちらが答えです。自分の書いたものと比べて、合っているかどうか確認してみて下さい。
まずはこの曲を、テンポ80(♩=80)程度で歌えるようにして下さい。音程に自信がなければ、鍵盤かチューナーを使って音を確認しながら歌ってみましょう。完璧な音程で歌うのは大変なので、だいたい合っていれば良しとします。歌えるようになったら、いよいよリズム打ちをつけていきましょう。
「きらきら星」を歌いながらリズムを叩こう
かなり本格的な練習です。これから紹介する3種類の楽譜を使って、歌いながらリズム打ちをしてみましょう。手拍子と足の位置を見ながら、最後までそのリズムで歌いきります。
この3つのリズムで歌って、何か気づいたことはありませんか? 同じメロディでも、リズムによって曲の雰囲気が変わりませんでしたか? 実はこれがとても大切なことなのです。ヴォーカルがどんなリズムを感じているかは、ものすごく大事なことです。リズムを感じて歌わないと、ダラダラと歯切れの悪い歌になります。
リズム感をつけるためのは、このように実際に体を動かして行うことが効果的です。自分の好きなアーティストなどの曲も、自由に手拍子や足でリズムを取りながら歌ってみましょう。それだけでかなりリズム感が良くなってきます。練習は楽しく、そして効率良く行って下さい。
エアドラムでリズム感を鍛える
ドラムを演奏している人を見たことがあるでしょうか。足と手が同時に動いて、一定のリズムをキープし続けています。バンドのリズムの要はドラムです。
プロのヴォーカリストの中にも、ドラム経験者は多くいます。ヴォーカルは歌だけではなく、色々な楽器を体験しておくことで、表現力や音楽性の幅が広がります。
ドラムを持っている人はあまりいないと思いますので、エアドラムで練習していきましょう。使うものはペン2本です。買える方はドラム用のスティックだけでも買っておくと、良い練習ができます。
では、ドラムの手の構え方です。ドラムは手を交差して叩きます。右手が上、左手を下にして下さい。テーブルでも良いですが、音が気になる場合は本やタオルを叩いても良いでしょう。
まずは右手だけで「1、2、3、4、5、6、7、8」と一定のテンポで8回叩いてみて下さい。次に左手を入れてみます。リズムを打つところを◯で表現しますので、叩いてみましょう。
3と7のところで左手を入れるだけです。このリズムをずっと続けてみましょう。少しだけドラムらしくなってきましたね。しかしもちろん、これだけでは終わりません。ドラムには、このリズムにさらに足が入ります。足を入れたものを表示してみます。難易度が一気に上がると思いますが、頑張って挑戦してみて下さい。
ドラムの基本リズムを叩けるようになろう
足を入れたリズムをエアドラムで叩いてみましょう。
ちなみに、上のリズムを楽譜で表すと次のようになります。
正しくは、1拍に2つ、8分音符で音を入れていました。これは8ビートの基本のリズムです。特にJ-POPは8ビートのものが多いので、好きな曲を流しながら、この8ビートを叩くことができれば良いと思います。いつのまにか速くなったり遅くなったりして、最初は曲に合わせるのが難しいかもしれません。しっかりと練習に取り組んで下さい。
終わりに
リズム感を良くすることは、音程を良くするより難しいと言われています。チューナーのように目に見えるわけでもなく、感覚や感性に任せられる部分が多いからです。本気でリズム感を鍛えようと思ったら、必ず毎日トレーニングを続けて下さい。それはメトロノームに合わせるといったことだけでなく、いろいろな曲を聴いて身体でリズムを感じるようにすることです。
最後に「裏打ち」についての話をします。表打ちと裏打ちは簡単に説明すると以下のようになります。「表打ち」というのは、拍に合わせて一緒にリズムを打つことです。
これに対して裏打ちというには、拍の裏で打つリズムです。
これはメトロノームを使ってする練習ですが、好きな曲に合わせて裏打ちをするだけでも良い練習になります。まずは音楽を楽しむところからです。表打ちから裏打ち、そして再び表打ちなど自由にコントロールできれば、かなりリズム感はついています。
リズムの感じ方というのは、音楽ジャンルによって大きく違ってきます。音楽の構成は「リズム」「メロディ」「ハーモニー」です。ロックのリズム、ジャズのリズム、パンクのリズムなどなど、曲によって様々です。リズムの世界は大変奥が深いです。メロディももちろん奥は深いですが、まずはリズムについていろいろ調べてみると面白いと思います。
もしこれから曲を作ろうと思っている人は、まずリズムパターンから考えてみるのも良いと思います。あなたが一番好きな曲は、どんなリズムを刻んでいるでしょうか。ぜひ注意して聞いてみてください。きっと新しい発見がありますよ。