【簡単ヴォーカルレッスン】06.耳を鍛えよう

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前回は「リズム感」について取り上げました。

今回は「耳を鍛える」をテーマに解説します。これはヴォーカリストに必要な「音程」を合わせるためにも大切で、また「音色」「表現力」にも関わってきます。

広い意味での耳の良さというのが、音楽には必要です。ヴォーカルなど音楽に関わっている人は特に、耳を良い状態にしなければいけません。いろいろな方法で耳を大切に、そして鍛えていきましょう。

目次

耳を鍛える前に

耳を鍛えるということの前に、まずは耳を疲れさせないようにしましょう。イヤホンをして街を歩いている人を多く見かけます。また、ゲームなどでもヘッドホンをつける人もいるでしょう。ところが、長時間イヤホンやヘッドホンで音を聴いていると、かなりの負担になります。また、聴いている音が激しい音、大きな音だと、その負担は計り知れません。今回はまず耳を休めて感覚を取り戻す活動をいろいろしてみましょう。

①耳を澄まして聴こえてきた音を全て書き出そう

まずは落ち着いて耳を澄ましてみる練習です。

用意するもの:
 筆記用具、紙

方法:
 ①目を閉じる。
 ②60秒間、目を閉じたまま、聴こえてきた音に耳を傾ける。
 ③聴こえてきたもの全てを紙に記入する。

紙に書くのはどんなものでも良いです。聴こえてきたもの全てを記入して下さい。これは普段意識していなかった音に気づく練習です。最近はスマホを触るなど、常に何かをしながらの状態の人が多いのではないでしょうか。何もしない時間を作って、耳と心と身体を休めましょう。

②利き耳を見つけバランス良く音を聴こう

利き腕や利き足があるのと同じで、耳にも利き耳があります。電話に出る時、決まった方で話をしませんか? 意識せずパッと取った時に押さえた耳が利き耳です。つまり、利き耳ではない方で聞くためには、はっきりと意識をする必要があります。両方の耳を平等に使うトレーニングをしてみましょう。

用意するもの:
 鍵盤など音が出るもの

方法:
 ①左耳を左手で押さえる。
 ②音を出して、右耳だけで、その音をじっくり聴く。
 ③次に右耳を右手で押さえる。
 ④同じように左耳だけで、その音をじっくり聴く。
 ⑤上記の内容を繰り返し、聴こえ方の違いや聴き取りやすさを感じてみる。

これも普段意識していないことを意識する練習です。どちらかが聴き取り難かったり、聴こえやすい音の高さが変わったりすることに気づくかと思います。

ただ、それは癖の場合もありますし、もしかしたら何かの病気の場合もあります。普段からどちらかの耳にだけイヤホンをつけている人は、両耳のバランスが悪くなっているかもしれません。これを機に、両耳バランス良く聴く習慣を身につけましょう。

③耳栓を活用しよう

これは夜ぐっすり寝れない人にもおすすめです。耳栓をすると周りの音が遮断され、自分の心臓の音が聴こえてきます。人によっては、仕事中かなり耳を使っていることもあるでしょう。特にライブハウスやスタジオで、大音量で長時間演奏を聴くような方は危険です。定期的に耳を休ませる時間を取って下さい。喉も耳も一生大切にしなければいけないものです。耳を休ませようという意識を持ち、何か気になることがあればすぐにお医者さんに行くようにして下さい。アーティストの方は難聴になる人が多いです。それは耳の使いすぎやストレスが原因です。早めの対応が必要です。

Let’s Try!

耳を鍛える準備をしよう
①耳を澄まして聴こえてきた音を全て書き出そう
②利き耳を見つけ、バランス良く音を聴こう
③耳栓を活用しよう

この3つを実践して下さい。①、②に関してはどこでもできますね。喫茶店などでも面白いですし、山に行った時などにしてみると、いろいろな発見があると思います。喫茶店であれば会話の内容やコップの当たる音、人の歩く音など、山だったら鳥の鳴き声や木の葉っぱが出す音、川の流れる音も聴こえてくるでしょう。こういった、「耳に対する意識」を常に持ち続けて下さい。

いよいよここから耳を鍛える活動に入ります。

音の高さを感覚的に掴む

以前、音の高さを視覚的に捉えることを説明しました。チューナーを使って音の高さがどうなっているかを確認しました。今回は、その高さを感覚的に掴む練習を紹介します。

皆さんはリトミックというものをご存知でしょうか。小さい子からリトミックをしていると、音楽性が広がると言われています。リトミックは音楽を身体で感じる活動です。音に合わせて動いたり遊んだりして、身体を動かして音楽というものを味わいます。ぜひ体験してみましょう。さっそくいくつか紹介します。

①音の高さを手で表す

これはリトミックなどでも行われている、音の高さを味わう活動です。鍵盤で2つの音を出してみて下さい。ここでは仮に「ソ」と高い方の「ド」の音とします。この2つの音の高さを、右手と左手で表してみて下さい。ここで大切なのは、右手の「ソ」の音に対して、左手の高い「ド」をどの位置(高さ)で出すかです。

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この練習は、慣れきたらどんどん速くしてみたり、音を3つにしてみたりして下さい。音を増やす場合は、右、左、右と交互に出すようにして下さい。

こういった耳の訓練は「聴音」といって、よくある方法が、聴こえてきた音を楽譜に書き込む練習です。しかし、いきなりそういった練習は、あまり良いとはいえません。座って筆記用具を持って取り組むより、身体全体で感覚を身につけましょう。

②明るいコードが暗いコードかを当てる

さて、ここでひとつ新しい言葉が出てきました。「コード」です。コードというのは「和音」のことです。一番シンプルなコードは3和音です。練習に入る前に、まずはコードについて少し解説します。鍵盤を見て下さい。

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画像には全音と半音とありますが、どんな違いがあるか分かりますか? ドとレの間にはひとつ鍵盤があるのに対して、ミとファやシとドの間には鍵盤はありませんね。この間に鍵盤があるかないか、という法則はここでは深く掘り下げませんが、音階を作る考え方になります。とりあえず今は、ドとレの間には半音が1個、ドとミの間には半音が3個、といったことが分かれば良いです。

次にコードは英語で表記されていますので、ドレミを英語で表すとどうなるかをご説明します。吹奏楽やオーケストラの経験がある方はドイツ語を使用していたと思います。ドイツ語表記は英語とほぼ同じで、シの音だけが異なるので気をつけて下さい。英語表記は、表のようになります。

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この表記がそのままコードを表す時に利用されるので、しっかりと覚えておいて下さい。

ではいよいよ、コードの具体的な音の説明をします。コードは和音のことで、和音は最低3つの音から出来ています。さらに重ねていき、4つの音、5つの音と、どんどん複雑な和音をコードで表すことができますが、今回はシンプルな三和音に限定します。和音は3つのお団子だと思って下さい。その3つのお団子で音を作ります。

例として「C」のコードについて説明します。

①先ほどの表の通り、Cはドの音ですので、ドの音が基準になります。

②ドの音を元にして音を重ねます。まずはドの音から「半音4つ」上がった音を重ねます。ドの半音4つ上は、ド→ド♯→レ→レ♯→ミなので、ミの音です。

③さらにミの音から「半音3つ」上の音を重ねます。ミ→ファ→ファ♯→ソでソの音となります。または「主音から5個上の音」(専門用語で「5度」と言います)と考えてソ、としても良いです。

④これでCのコードは「ド」「ミ」「ソ」の和音だと分かります。

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コードは大きく2種類に分けられます。「メジャーコード」「マイナーコード」です。簡単に言うと、「明るい響きのする和音」と「暗い響きのする和音」です。

メジャーコードというのは、先ほど説明した音の重ね方のコードです。マイナーコードは、先ほどの和音の作り方と同じですが、第三音だけが違い、メジャーコードの時の「半音下の音」、つまり「主音から半音3つ上の音」です。

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読み方は、メジャーコードの場合は、C(シー)、D(ディー)など、そのままアルファベットだけで表記します。マイナーコードはアルファベットの後ろに「m」をつけてCm(シーマイナー)、Dm(ディーマイナー)などと読みます。

これでメジャーコードとマイナーコードが分かりました。ではこのコードを使っての耳のトレーニングをしましょう。和音を演奏してもらい(またはアプリを使用して音を出してもらい)、メジャーコード(明るい和音)だったら手でパーを出し、マイナーコード(暗い和音)だったら手をグーで出して下さい。

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もちろんコードの種類はCやCmだけではありません。いろいろな和音がありますので、聴き比べてみましょう。

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Let’s Try!

音を感覚で掴む練習をしよう
①音の高さを手で表す
②明るいコードが暗いコードかを当てる

この練習は、誰かに音を出してもらうとスムーズに進みます。もし難しい場合は、自分で鍵盤を使って音を出すようにして下さい。それだけでも大変良い練習になります。慣れてくると、普段から聴こえてくる音への反応も鋭くなります。

コードは音楽をする上でとても重要なものです。実はプロのアーティストの中には、楽譜は読めないけれどコードは分かる、という人も多いです。つまり、コードだけで作曲や演奏ができるのです。ギタリストなどは、コードの暗記は必須ですね。コードが分かると、弾き語りなどもできるようになります。ぜひこれを機にコードの勉強をしてみて下さい。一生役立ちます。

音のシャドーイングで音への反応を良くする

「シャドーイング」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。聞いたものをそのまま復唱することです。

これはかなり効果があり、1時間ほど実践していると、音への反応が大きく変わります。子どもは親が話すのを聞いて、それをそのまま真似しているうちに言葉を覚えていきますね。音も同じで、聞いたことを真似すると、音に対する感度が良くなるのです。

練習方法はとても簡単です。テレビやスマホから聴こえてきた音楽やBGMなどを口ずさむだけです。ただし言葉を使わず、ハミングや「ルー」や「ラー」にして下さい。

なぜ言葉を使わないかというと、言葉に意識が向いてしまい、音への意識が薄れてしまうからです。コマーシャルソングなどは絶好のシャドーイングの機会ですが、ここでは言葉を覚えるのではなく、ハミングなどで音を覚えるようにしましょう。この「自分で音を出す」ということに、大きな意味があります。もちろん耳だけを使っての訓練も良いのですが、自分で音を出している方が、音感は良くなります。

もうひとつ、シャドーイングの発展系としてやってほしいのは、モノマネです。テレビでアーティストのモノマネをする方がいますが、とても上手いですよね。そして当たり前ですが、音程も合っています。音程が悪いモノマネの人はいません。その人の癖や特徴を何度も聴いて練習し、真似ていくわけです。これは先ほどの、音を聴いてのシャドーイングと同じです。プロのヴォーカリストの中にも、他のアーティストのモノマネが得意な方がいます。真似をするということはとても良い練習方法なのです。これもぜひ実践してほしいです。

Let’s Try!

音のシャドーイングをしよう
①聴こえてきた音をハミングなどで音を出す。1日1時間は行う。
②好きなアーティストの曲を一曲決めて、完全にモノマネをする。

ちなみにジャズの世界でも、このモノマネ、耳コピは大事にされています。ジャズは決まった楽譜がなく、コード進行に合わせてその場でアドリブ演奏されます。過去の名演を聴きながら、演奏家たちは耳コピ、パフォーマンスを真似して、その名演を自分のものにしていくのです。オリジナルを作るためには、まずは過去あるもののモノマネから。そうやってスキルや感性は磨かれます。

終わりに

今回は「耳を鍛える」をテーマに、いろいろな角度から話をしました。全てにおいて言えることは、普段から意識して行動することです。イヤホンを付けて大きな音で長時間聴くのはやめましょう。

聴く音楽は、なるべく広いジャンルで、質の良いものを選んでください。たとえば一流のシェフになるためには、毎日良いものを食べて、質の低いものを食べないように気をつけるそうです。音楽の世界も同じです。普段から良い音楽に触れましょう。生で聴く機会があると、なお良いですね。音楽は耳だけで感じるものではなく、体全体で感じて表現するものです。普段からの意識を変えてみて下さい。

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