前回から実践編として、曲を使って練習をしています。
今回は第2弾として、「音程が良いヴォーカリスト」をさらに発展させて、「ハモりができるヴォーカリスト」を目指します。
流行っているたくさんの音楽を聴いてわかる通り、ほとんどの曲はハモりが入っています。ヴォーカル自身が自分の声を重ねてハモらせることも多いです。メロディだけを歌っているというわけにはいかず、現在のヴォーカリストはハモりの能力が要求されます。
ハモりはひとりで歌う時よりさらに難しい音程感覚が要求されます。感覚的な部分が多いので、実践あるのみです。カラオケが上手く歌えても、ハモりができない人は多いです。なぜかというと、カラオケは鳴っている音に合わせて歌っているだけだからです。
ひとりでハモりの練習は難しいと思いますが、スマホなどの便利な録音機材がたくさんあるので、ぜひそれを活用して下さい。友達と一緒に練習できる人は、それでも良いでしょう。これから紹介する練習用の楽譜には二声か三声かを記入してあるので、それを参考に個人または複数で練習を進めて下さい。
音階を使ったハモり練習
音程が取りやすいのは音階ですね。まずは音階を使ったハモりの練習をしていきましょう。二声から始めて、慣れてきたら三声にもチャレンジしてください。誰か一緒に練習ができる場合はその方が良いですし、ひとりの場合は録音機材を活用してハモりの練習をしてみましょう。
6つの楽譜の全てのパートを練習しよう
全音符を使った楽譜 二声・三声
二分音符を使った楽譜 二声・三声
四分音符を使った楽譜 二声・三声
大事なことは、カラオケのように音を聴いて合わせるのではなくて、自分の中にある音感で歌うことです。カラオケが上手に歌えるのは、メロディのガイドラインがあるからです。もちろん合わせて歌うのも重要なスキルなのですが、ひとつ上のレベルにいくためには、メロディガイドなしで正しい音程で歌うことが必要です。音階なので次に出る音がイメージしやすいと思います。
もうひとつ意識してほしいことは、ハモりパートを歌う時は、相手(違うパート)の音を聴いてそれに合わせて歌うということです。少しマニアックな話になりますが、ピアノの音程は完璧にハモるようにはできていません。歌や楽器で合わせるハモりこそが究極のハーモニーなのです。今までは鍵盤楽器やバンドのギターのコードを聴いて歌ってきたと思いますが、ここではアカペラ(無伴奏)に挑戦してみて下さい。とても良い練習になります。
根音、第三音、第五音を使ったハモり練習
ここからは三声の和音に絞って練習していきます。同じように複数人のメンバー、または多重録音を使って練習してください。
ここでは以前に説明した「コード(和音)」を使って練習をしていきます。和音のお団子を覚えているでしょうか。さっそく「Fのコード」について問題です。「Fのコード」の根音、第三音、第五音を答えてみて下さい。
答えが出たら、「和音の重ね方」の解説で確認をしてみましょう。
これを本来は3人1組になって行います。ひとりが根音(この場合はファ)で、もうひとりが第五音(この場合はド)で、最後に真ん中の第三音(この場合はラ)を重ねるという練習です。最初に出した音の五度上を重ね、さらにその真ん中の根音より三度上の音を重ねることで、和音を作ります。
ひとりで練習する場合も、根音、第五音、第三音の順番で重ねていって下さい。慣れてきたら和音を変えてみても良いでしょう。根音を担当の人が出した音によって、第五音、第三音が変わってきますね。これは鍵盤から出る音に合わせるといった練習ではなくて、出ている音の五度上を歌う、三度上を歌うという練習です。3人で力を合わせて極上のハーモニーを作って下さい。
次に楽譜を使ったカデンツ練習をします。カデンツとはコード進行のことです。基本のコード進行を声を使って作っていきましょう。簡単なものから、短調のやや難しいものまで用意しました。ぜひチャレンジしてみて下さい。
6つの楽譜の全てのパートを練習しよう
楽譜1 Cメジャー
楽譜2 B♭メジャー
楽譜3 Dメジャー
楽譜4 Cマイナー
楽譜5 Aマイナー
楽譜6 Dマイナー
3人いる場合は毎回同じパートではなく、練習のたびに違うパートを担当しましょう。楽譜1~3はメジャーの音階で明るい響きですね。楽譜4~6はマイナーの音階で暗い響きがしますが、途中で一瞬明るい響きがするのを感じるでしょうか。これは専門用語でいう和声的短音階という音階を用いているからです。第七音を半音上げることで、より主音に向かってのエネルギーを強くします。個々の和音の響き、そして全体の和声進行を感じながら練習しましょう。
曲を使ったハモり練習
ここでは曲を使ったハモり練習を行います。結婚式上でもよく披露されている「アメージンググレイス」を使用します。三声に編曲してあるので、各パートをしっかり練習して下さい。音をハーモニーに当てはめる感覚を持ちましょう。
歌詞は原曲の発音を可能な限りカタカナで表しました。まずは二声から始めて、次に三声を練習するようにしましょう。楽譜の上にコードを載せてあります。第2章で練習したように、和音だけ取り出して練習するのも良いかと思います。
「AmazingGrace」の練習をしよう
一人で練習する時も複数で練習する時も、可能な限り録音をするようにしましょう。あとで聴き直してみると、自分たちでは気がつかなかったことを多く発見できます。また、何度も最初から通す練習よりも、気になる箇所を練習し、最後に全体で合わせるといった形の方が効率が良いです。繰り返し練習をして曲を仕上げて下さい。
終わりに
今回はたくさんの楽譜を使用しました。それはなぜかというと、ハモりができるようになるためには、実際に声を出しハモる感覚を身につけていくしかないからです。コードなどの理論を身につけて、さらにそれを声で表すことで上達が早くなります。
ハモりの練習をすることで「魅力的なヴォーカリスト」の項目のひとつである「音程」感覚が、飛躍的によくなります。そして、実はハモり練習には、もう一個重要な要素が含まれています。それは「音色」です。音程が合っていても「音色」がきれいでないとハモって聴こえません。複数で練習する場合は、音程だけでなくこの「音色」を合わせる必要があります。潰れたような声でハモろうとしても絶対にハモれません。無理やり叫んでいるような声でも無理です。柔らかい響きのある声がハモりに適しています。「音程」とともに「音色」を良くする意識を持って下さい。