連載【目指せ!小説家】では、小説の書き方を基礎の基礎から解説します。
そこで、執筆に関わる技術や知識の前に、そもそも「小説」とは何か?ということを確認しておきましょう。
はじめに
「小説ってなに?」「どういうものなの?」と聞かれて、自信をもって解答できますか?
もしも不安だという人は、執筆に取り掛かる前に、まずは自分が作ろうとするものは何なのか、その全体像をきちんと把握しておきましょう。
小説とは何か
実は、「小説」というものを正確に説明できる人はいません。
それは、小説というものが定義の曖昧な作品形式であり、「これは小説だけど、これは小説でない」ということを、一概に断じることは誰にもできないからです。
しかし強いて言うのであれば、「小説とは、散文の形式によって書かれた、虚構の物語である」と定義することができます。
散文とは、俳句のような形式上の縛りが無い、自由に書かれる文章形式のことです。虚構の物語とはつまり、フィクションであるということですね。
これが小説の一応の定義であり、これ以外の定義は基本的には存在しません。つまり、自由な文章で書かれたフィクションは、ミステリであろうとホラーであろうと携帯小説であろうと、みな一様にして小説であると言えます。
また一見して「小説」であるようには見えないような、奇妙奇天烈な文章作法に則って書かれたものであっても、著者が「これは小説である」と主張するならば、それはやはり小説であると言うことができるでしょう。
なぜなら小説とは、“自由”に書かれた虚構の物語なのですから。
ちなみにノンフィクションは、一義的には小説には含まれません。「ノンフィクション小説」とされるものがあることは事実ですが、一般的には、「ノンフィクション」と「小説」は区別して扱われます。
ただし「ノンフィクション」と「フィクション」の境界が曖昧になっていることも事実であり、厳密に二者を区別することはできないともいえます。
どんな種類があるの?
このように、小説というのは極めて自由な形式ですので、現在は幅広いジャンルの作品が小説と呼ばれています。
それでは、小説にはどのような種類があるのでしょう。小説の種類は、主に「長さ」と「内容」から区別することができます。
小説を「長さ」で区別する際には、長編小説・中編小説・短編小説の三種類に分類することができます。
それぞれの長さを区別する、一応の分量としての定義は存在するのですが、この辺りはざっくり捉えて頂いて構いません。
一つの作品に一冊丸ごと使われている場合は長編小説であり、一つの本の中に複数の作品が存在する場合は、基本的には短編小説か中編小説になります。
また、小説はその「内容」、つまりはジャンルによっても区別することができます。最も大きな括りは「純文学」と「娯楽(大衆)小説」です。
「純文学」とは、ノーベル賞を取ったりするいわゆる芸術性の高い「文学」です。純文学よりも娯楽性を追求したジャンルが「娯楽小説」で、その中でもミステリやサスペンス、ホラーにSFと細分化されます。
もちろん、こういったジャンルの分類は曖昧な部分も多いので、やはり一概にこうであるとは言えません。これはあくまで、通例的・商業的な区分であると言えます。
ただし小説を書く場合は、最低限自分が「どのジャンルの作品を書きたいのか」ということは考えておいた方が良いでしょう。
いつからあるの?
小説というのは、はるか昔から存在してきたわけではありません。この作品形式は、様々な芸術の発展と共に少しずつその基盤が形成されていき、現在のような多様な形に成熟しました。
小説の最も古い前身は、古代の神話のような「物語」と、人類の歴史と常に共にあった「文学」に求めることができます(もちろん、他にも様々な意見があります)。
そもそも、「文学」と「小説」は何が違うのでしょう。
「文学」とは、小説よりもずっと広い概念であり、言語を用いた芸術作品の総称でもあります。
たとえば詩や民謡、日記に随筆など、言語を用いて表現される芸術は広く「文学」であると言えます。小説もポエムも歌詞も、みな一様にして「文学」という芸術形態というわけですね。
一方で、「物語」と「小説」の差異はかなり曖昧です。
過去には、両者を定義づけて区別するための議論が色々とあったのですが、現在ではほとんど失敗に終わった気配があります。
しかし「物語」が「小説」よりも古い概念であることは確かであり、小説は古代の神話のような原始的な物語から始まり、歴史上の「文学」の発展と共に準備され、17世紀頃にヨーロッパの近代小説が誕生したことから、現代のような形式を取るに至ります。
小説の特徴
小説という作品形式の全体像について、ざっくりとではありますが解説しました。ここから何がわかったでしょうか。
「小説って何なのか、もっとわからなくなってしまった」という人もいることでしょう。しかし結局のところ、「小説」というのはそういったものなのです。
ルールが無いのがルール、決まりが無いのが決まり、定義がほとんど無いのが定義であるとも言えるのが、「小説」という作品形式です。
「小説ってなに?」と聞かれた時に、どうやって答えればよいでしょう? 模範解答としては、「自由な散文形式によって書かれた、虚構の物語である」ですね。
しかしそれ以上の定義を求められた時には、各々の小説観から説明を試みるしかありません。万人が認める「小説」の詳細な定義というのは、残念ながら存在しえないのです。
しかし、それこそが「小説」の最大の力であると言えるのかもしれません。
小説には目を見張るような視覚効果も、思わず耳を奪われるような音響も、型にはめられるフォーマットも、基本的には存在しません。
そのような曖昧かつ、余分な要素を削ぎ落した極めて自由な芸術形式だからこそ、小説は感情の複雑な“隙間”に入り込み、ある時には読む者をしっかりと捉えて、一生涯に渡って離さないような強烈な読書体験を与えるのかもしれません。
まとめ
今回は、小説とは何か、そしてその分類や起源についてご紹介しました。
さあ、小説が書きたくなってきましたか? でも、もう少しだけ待ってください。
次の記事では、具体的な執筆のステップに進む前の、小説を構成する前提条件を確認しましょう。何事も少しずつ、確実にです。