連載【目指せ!小説家】第1回では、「小説とは何か?」について確認しました。
それでは、小説とはどのような要素から成り立っているのでしょうか。第2回では、執筆を始める前に確認しておくべき前提条件についてご説明します。
はじめに
今回は、小説という作品形式がどのような要素から成り立っているかを解説します。
先に結論から述べますと、基本的には、小説は『本文』『ストーリー』『登場人物』という3つの要素から成り立つと言えます。
これらの要素がどのような性質を持ち、どのようにして『小説』を構成していくのか。具体的な執筆ステップへ進む前に、これらの前提条件を確認しておきましょう。
本文
小説の最も表面的な要素は『本文』です。
「当たり前でしょ」と思われる方も多いでしょうが、基礎的な概念ほどしっかりと把握しておかなければなりませんね。
小説とはとにかく曖昧なものですから、その実像はできるだけきちんと把握しておく必要があります。
小説は台詞と描写、そして心情風景を表した文章の集合体であり、小説の全ては、基本的に『本文』によって伝えられます。
よく言われる『文章力』というものは、この『本文』を構築する能力です。もちろん、文章力は高ければ高いほど良いでしょう。
軽妙な文体、的を射た比喩、読む者を思わずハッとさせるような描写。こういった文章によって構成された小説は読者を強烈に引き込み、それだけで満足度の高い読書体験を提供してくれます。
しかし仮に文章力が低いとしても。「プロの小説家みたいな流麗な文章なんて書けないよ」と思ったとしても。それを必要以上に嘆くことはありません。
なぜなら、文章力はあくまで『本文』を執筆する能力なのですから。そして小説は、なにも『本文』のみによって構成される作品形式ではないのです。
ストーリー
『本文』によって、小説全体を通して語られるもの。それが『ストーリー』です。
小説は無作為で無秩序な文章の羅列ではありませんので、そこには必ず一定の筋書き、順序立てられた物語が存在します。
どれだけ文章が上手くても、肝心のストーリーが陳腐で、何の面白みも無いとしたら……そんな小説は、積極的に読みたいとは思いませんね。
逆に、文章力が低くとも、ストーリーさえ抜群に面白ければ、それは十分に良い小説になりえます。
この『ストーリー』を作る能力は、俗に構成力やストーリーテリング能力とも呼ばれます。
また、ストーリーは一定のフォーマット下で構成されることもあります。日本で最も有名な物語の類型は『起承転結』ですが、海外では『三幕構成』と呼ばれる物語の構成が一般的です。
文章力も低いし、面白いストーリーを作れる自信もない? 心配ありません。文章力は鍛えることができますし、ストーリーの構築にも様々なテクニックが存在します。
特にストーリーの構築方法というのは、古来からずっと研究されている分野であり、その基礎的な技術を知っているのと知らないのとでは、ストーリーの質はまったく違うものになってしまいます。
これらの具体的な方法は、この連載を通してお伝えしていきますので、一緒に少しずつ、前に進んでいきましょう。
登場人物
文章力も高い、物語も面白い! そんな小説に巡り合えたら、とっても幸せなことですね。
しかし小説には、もう一つの大事な要素が存在します。それが『登場人物』です。
ストーリーはすごく面白いのに、主人公に全然感情移入できない……。文章がとても上手いのに、出て来る登場人物がまるで人形みたいで、全然魅力的じゃない……。そういった違和感は、小説を読み進める上で、非常に大きな障壁となり得ます。
『登場人物』もまた、『本文』や『ストーリー』と同じくらい重要な要素なのです。
『キャラクター小説』という言葉があるように、魅力的な『登場人物』は、それだけで小説を成り立たせてしまう力を持っています。
たとえ文章が下手で、それほど面白いとはいえないストーリーだったとしても……読者の心を掴むたった一人の強烈なキャラクターの存在が、読者にページを繰らせる原動力になることもあります。
そして、小説の始めから終わりまで読者と一緒にいるのは、他でもない、主人公という一人のキャラクターなのです。
そして、そんな魅力的な『登場人物』を創造する方法は……残念ながら、『ストーリー』ほどは確立されているとは言えません。それはほとんど、偶然の産物であったりもします。
しかし登場人物を出来るだけ魅力的に見せる方法や、感情移入をしやすくする基礎的なテクニックというのは存在します。それらはもちろん、今後の連載でじっくり見ていきます。
3つの要素の重要性とは?
「自分は文章力が皆無だから、小説なんて書けない」。本記事を読んでくれた方なら、こんな言葉がどれだけ意味の無いものかがわかっていただけたと思います。
小説は主に、『本文』『ストーリー』『登場人物』という3つの要素から構成され、そのどれもが重要であることには変わりませんが、そのどれかが低かったら絶対にダメ、というわけでもないのです。
プロの小説家であっても、文章は上手いのに物語はどうにも陳腐な作家。ずば抜けて面白いストーリーを書くけれど、逆に文章力はそれほどでもない作家。魅力的なキャラクター同士の会話劇だけでヒット作を書いているような作家。様々いるわけです。
むしろ文章力が高い作家よりも、ストーリーやキャラクターの創造力がずば抜けている人の方が売れる傾向にあります。
ですから、その中で自分の得意な領域を見つけ出し、まずはそこで勝負してみるのが良いでしょう。
文章も下手だし、物語も思い浮かばないし、キャラクターも作れない? なかなか困った事態ですが、何とかなります。
文章力は最低限、日本語の読み書きができれば何とかなりますし、物語の作り方はすでに研究され尽くされている分野であり、数えきれないほどのフォーマットやテクニックが存在します。
魅力的なキャラクターの作り方も、最低限「これだけはしない方がいい」というものは存在します。
そして、それらを手順に沿って構築していくことで、小説は確実に完成させることができます。
まとめ
今回の記事では、小説を構成する3つの要素である『本文』『ストーリー』『登場人物』についてご説明しました。
これらを作っていく具体的な手順やコツを、この連載を通して少しずつ学んでいきます。
さあ、次の記事ではいよいよ、具体的な執筆ステップに入っていきましょう。