【目指せ!小説家】第4話 物語を着想する

連載【目指せ!小説家】第3回では、小説を執筆し、完成させるまでの具体的なステップについてご説明しました。

第4回では、小説を書く最初のステップである「着想」について解説します。

はじめに

今回は小説を書くための最初のステップ、「着想」の工程について解説します。優れた着想は、それだけで小説を価値あるものにしてくれることがあります。

優れた着想とは何か? どのように考えれば良いのか? 最低限何をすれば良いのか? 順に紹介していきますね。

優れた着想とは

着想とは、アイデアと言い換えることもできます。つまり着想工程とは、「どんな小説を、どんな風に書こうかな」ということを考えるアイデア出しの段階です。

優れたアイデアは、内容の如何にかかわらず、それだけで小説の価値をグッと引き上げてくれることがあります。「思いついた段階で、書く前からすでに傑作であることが決定してしまっている」という状況もあるわけです。

「そんなことがあるのか?」と思う方もいるかもしれませんね。たとえば、高見広春『バトル・ロワイアル』という小説をご存じでしょうか。

「40人の中学生達が、孤島で最後の一人になるまで殺し合う」

この衝撃的な舞台設定を持つ『バトル・ロワイアル』は、発売前から話題となって100万部を超えるベストセラーになっただけではなく、映画化されて社会現象になり、世界的にもいわゆる『バトル・ロワイアル物』という一つのジャンルを作り上げてしまいました。

このアイデア・舞台設定を模倣した作品群は、今では数えきれないほど存在しています。『バトル・ロワイアル』は優れた着想が爆発的な商業的な結果を生み出した、一つの好例であるといえるでしょう。

「着想」工程がいかに重要か、何となくわかりましたか?

現代では「完全にオリジナルな作品など存在しない」と言われて久しいわけではありますが、それでも既存の要素の組み合わせによって、もしくはすでに存在しているアイデアを別の角度から見ることによって、十分に新規性の高い着想を得ることができます。

どのように考えればよいか

もしも『バトル・ロワイアル』のような、「誰も見たことのないような、全く新しいアイデア」を思いつき、それを小説の形にできたとしたら。あなたは人気作家の仲間入りができることでしょう。

しかしそんなことは誰にでもできるわけではありませんし、残念ながら「こうすれば必ず良いアイデアが思い浮かぶ!」という夢のような手法も存在しません。それでは一体、どうすればいいのでしょうか。

一つ考えられるのは、「すでに存在する、優れたアイデアを模倣してみる」というやり方です。つまりは他の優れた作品から、そのアイデアだけを借りてしまえばいいわけです。

それをパクると言ってしまうと語弊がありますが、世の中の作品のほとんどは過去の何らかの作品の模倣であるといえます。問題はそのアイデアをどのようにして調理するか、どのようにして自分なりの味付けをするか、という部分にかかっています。

たとえば全米でベストセラーになり、映画化もされた『ハンガー・ゲーム』という小説のあらすじは、「24人の子供たちが、テレビ中継される中で最後の一人になるまで殺し合う」という内容です。

おや? これは『バトル・ロワイアル』のあらすじに酷似していますね。『ハンガー・ゲーム』は実際にその点を指摘されていますが、基本的には、「同じ題材を扱った別の作品である」とされています。

このように同じアイデアからスタートして、それを自分ならどう書くかを考えるのも一つの手でしょう。ただし、何から何までパクるのはやめてくださいね。すでに存在している着想を自分なりに噛み砕いて、いかに独自性を出すかがポイントです。


※本項はいわゆる『盗用』『パクリ』を助長しているわけではありません。また『ハンガー・ゲーム』が『バトル・ロワイアル』の盗用であると主張しているわけでもありません。

アイデアは優れていなくてもいい

「それじゃあ、良いアイデアが思いつかなかったら小説を書いちゃいけないの?」「他の人の真似をしないと駄目なの?」と思われる方もいるかもしれません。これも違います。

小説の基となるアイデアや舞台設定は、必ずしも新規性に溢れていて衝撃的であったり、既存の優れたアイデアの借用であったりしなければならないわけではありません。

いわゆる『王道』とされる筋立てに沿いながら、緻密な設定や鮮やかなプロット立て、または魅力的なキャラクターに軽快な文章力など、別の部分で勝負してもいいわけです。

今回はあくまで着想工程ということで、その一例として「極めて優れた着想」について紹介したわけではありますが、実際のところは、着想段階から優れている小説というのはそうそうありません。

ですからとにかく、「自分は何を書きたくて」「それをどんな風に書くか」。最低限この二つさえわかれば、次の「プロット立て」の工程に進んでしまって構わないわけです。

「自分は儚い恋愛ものが書きたいから」、「病弱な女の子との恋愛物を書こう!」。それだけでいいわけです。もしかしたらプロットを作っている間に、もっと良いアイデアが思いつくかもしれませんね。

おや? プロットを立てている間に、面白いタイトルが思いつきましたか? ……『君の膵臓を食べたい』? それはとっても良いアイデアですね!

おわりに

「アイデアは必ずしも優れていなければならない」というわけではないにしろ、少しでも優れたアイデアを基にして小説を書いた方が良いというのも、また事実でしょう。

そして優れたアイデアを思いつくためには、そもそも世の中にはどんな小説があって、それはどんな着想を基にして書かれているのか? という知識が必要だったりします。そのためには、一冊でも多くの小説を読んでおいた方が良いといえます。

しかし最後にも言いました通り、最低限「自分は何を書きたくて」、「それをどういう風に書くか?」ということさえわかれば、次の「プロット立て」のステップに進むことができます。

もしも思いつかなかったら、自分の好きな小説について考えてみましょう。それを自分なりに書くとしたら、一体どんな物語になりますか? そんなことをああでもないこうでもないと考えるのが、この着想段階なのです。