連載【目指せ!小説家】第4回では、小説を書く最初のステップである「着想」について解説しました。
第5回では、小説を書くための基礎となるステップ、「物語を作る」工程について解説します。
はじめに
今回は小説を書くための基礎となるステップ、「物語を作る」工程について解説します。これはいわゆる「プロット」という、ストーリーの骨組みを作る工程であり、大抵の場合、優れた「小説」は優れた「プロット」無しには生まれません。
どんなプロットを作れば良いか? どのように作れば良いか? どう学べば良いのか? 順に紹介していきますね。
どんなプロットを作れば良いか?
「プロット」とは、ストーリーの骨組みのことを指します。
一本の小説がどうやって始まり、どのようなことが起こって、最終的にどう終わるのか。本文の執筆にかかる前に、この点について明確に設定しておくのが「物語を作る」工程です。
これを事前に作っておかないと、小説は行き当たりばったりの内容になってしまい、収拾がつかなくなります。それはつまり、小説そのものが完成しないか、ストーリーの質が著しく低下することを意味します。
プロットの形は作家によって異なり、どの程度まで作りこむかも人によります。しかし最低限、初心の方は『最後まで書き切ることができるプロット』を作ることを目標としましょう。
より良質なプロットを作る方法や、自分に最適なやり方は、実践の中で試行錯誤しながら見つけていく方が理に適っています。
『最後まで書き切ることができるプロット』とは大体、最低限「始まりと終わりが決まっており」、「登場するキャラクターと彼らが果たす役割が決定されていて」、「物語が大きな矛盾なくスムーズに進む骨組み」のことを指すと言えるでしょう。
問題になるのは大抵3番目の部分ですので、この部分を過不足なく詰めるために、作者は苦心することになります。
どう作れば良いか?
プロットを作るための、最も簡単な流れを確認しておきましょう。
まずは大雑把で良いので、「誰に何が起きるか」、「誰が何をするか」、「出来事と出来事がどう結びつくか」ということを念頭に置きながら、物語を書き出してみます。
たとえば、桃太郎の1章のプロットを作るとすれば、以下のようになりますね。
極論、これで良いわけです。プロットは『因果関係』に着目した要約であると定義することもできますので、「誰に何が起こって何故そうしたか」ということが記されていれば、最低限その役割を果たしてくれます。
この場合は、「おばあちゃんが桃と出会い」、「彼女がそれを持ち帰り」、「その桃から桃太郎が生まれたので」、「二人は桃太郎を育てることに決める」という物語上の因果関係が書き出されています。
必要に応じて、「彼女はなぜ桃を持ち帰ることに決めたか」、「なぜ桃が流れてきたのか」ということもあらかじめ設定しておきます。
桃太郎夫妻は、子宝に恵まれなかったのかもしれません。夫妻のどちらかに、不妊の問題があったのかもしれません。桃は何者かによって、その川へと意図的に流されたのかもしれません。
おや? ここからまた、新しい物語が生まれていきそうですね。
どう学べば良いか?
そのようなプロットを作ろうと思っても、初心の方には「プロットの完成形」そのものがイメージしにくいと思います。ですから、最初に「既に存在するプロットのひな型」を参考にしてみた方がいいでしょう。
その際、『ハリウッド脚本術―プロになるためのワークショップ101』という本が、シナリオライティングの基礎的な参考書になります。
本書は小説ではなく脚本術についての参考書ですが、シナリオ作成における重要な基礎概念を一通り学ぶことができます。さらには本書を読み進めながら一つ一つの質問に答えていくことにより、そのまま一つのプロットが完成する仕組みになっているのが特徴です。
具体例としては、「主人公と敵対する人物は誰ですか?」、「主人公と敵対者は、なぜ争わなければなりませんか?」、「主人公と敵対者は、それを他の方法によって解決できませんか?」といったような質問に答えていくことにより、プロット上の重要事項を決めながら、同時に矛盾点を潰していき、一つのスムーズな物語が立ち上がってくる仕組みになっています。
せっかくなので、これらの質問を桃太郎に当てはめてみましょう。
おや? 桃太郎と鬼は、なぜ交渉によってではなく闘争によって問題を解決しなければならないのでしょうか。そもそも、なぜ桃太郎が戦わなくてはならないのでしょうか。
プロットの重要な役割の一つは、出来事の因果関係を明確にしておくことです。もしも鬼と桃太郎が戦っている状況に必然性が無ければ、読者は物語の展開に激しい違和感を覚えてしまうでしょう。
※この質問は一見、アクション映画を作るための質問に見えるかもしれません。しかしこれが、あらゆるジャンルのシナリオに通ずる普遍的な状況設定であることは、本書を読み込めば自ずと理解できる仕組みになっています。あらゆる物語は対立構造を内包します。
おわりに
今回ご紹介したのは、プロットの基礎中の基礎です。そしてハッキリ言ってしまうと、プロットについて学びたい場合は、関連書籍を数冊読んだ方が早いと言えます。
また、プロットの構築理論は小説よりも映画分野の方が発達しているため、ハリウッドの脚本術系の本を参照しておくことをお勧めいたします。
今回ご紹介した『ハリウッド脚本術―プロになるためのワークショップ101』は脚本術の世界では非常に有名な著作ですが、他に『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』、『物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』等の本も有用ですので、併せてここにご紹介しておきます。
ぜひ参考になさってください。