【目指せ!小説家】第6話 キャラクターを創造する

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連載【目指せ!小説家】第5回では、小説を書くための基礎となるステップ、「物語を作る」工程について解説しました。

第6回では、「キャラクターを創造する工程について解説します。

目次

はじめに

今回は「キャラクターを創造する」工程について解説します。これは小説の主人公やヒロイン、他の登場人物たちを設定していく工程です。


魅力的なキャラクターは、時にストーリーそのものよりも強く読者の心を掴みます。


どんなキャラクターを作れば良いのか? どう作れば良いのか? 「主人公以外のキャラクター」は? 順に紹介していきますね。

どんなキャラクターを作れば良いのか?

「どんなキャラクターを作ればいいか」を考える前に、「そのキャラクターにはどんな役割があるのか」ということを考えてみましょう。


たとえば、読者が小説の始まりから終わりまでを一緒に過ごすことになるのは「主人公」です。


小説中の出来事は主人公を中心として語られ、特に一人称小説の場合は、読者はすべての情報を主人公の視点から、主人公の解釈として得ることになります。


「主人公」というキャラクターの役割は、物語の水先案内人であると同時に、読者の第一の共感先であることです。


読者はストーリーを通して主人公の問題が解決されることを望み、主人公の苦難を我が事のように共感してくれるのが理想形です。「主人公」とはつまり、そのような役割を果たす人物として設定されます。

『ハリウッドの脚本術』によれば、これは一種のobsession(強迫観念)です。

たとえば「主人公」の娘(ヒロイン)が悪者に誘拐され、危険に晒された場合、読者は「この娘(ヒロイン)を救い出すために、主人公はあらゆる手段を用いてもよい」という強迫観念を植え付けられます。

それは時に、主人公が悪者を殺害する行為を正当化するかもしれません。読者の共感と承認を得ている主人公は、その瞬間に「殺人者」ではなく、「正義のヒーロー」として読者に受け入れられます。

(『ハリウッド脚本術―プロになるためのワークショップ101』より、内容の要約)

「どんなキャラクターを作れば良いか」という最初の問いに戻りましょう。


魅力的なキャラクターというのは様々な要素の複合形ですが、その第一の要素は「共感に足る人物である」ということになります。


つまり少なくとも「主人公」に関しては、「読者が共感できる・共感してもよいと認める」キャラクターを創造する必要があります。

どう作れば良いか?

キャラクターは『設定』によってではなく、『行動』によって読者に示されます。


あなたが主人公を「優しい人物」として設定していたとしても、主人公が具体的に「優しい行動」を取らなければ、その設定は読者に伝わりません


キャラクターの設定欄にいくら魅力的な設定を詰め込んだとしても、そのキャラが実際にそういう行動を取らなければ、それらの設定は一つも読者には伝わりません。


主人公に共感させる最も簡単な方法として、『SAVE THE CATの法則』を紹介しておきましょう。


ブレイク・スナイダーという脚本家が提唱するこのテクニックは単純明快で、物語の序盤に「主人公に猫を助けさせる」だけで、容易に読者からの承認共感が得られるというものです。


「猫を助ける」というのはあくまで比喩ですが、とにかく序盤のうちに、読者が「この主人公は良い奴だ」と思える行動を取らせてあげればいいわけです。


それは「ヤンキーの主人公が捨て猫を拾う」という場面かもしれませんし、「警察官の主人公が、同情すべき犯人を見逃してやる」場面かもしれません。


とにかくそれらは、読者が主人公を見定めている間に(つまりは最も序盤の場面で)実際の行動として示されて、読者が思い描く主人公の人格に組み込まれなければなりません。


そのちょっとした共感の場面があるかどうかで、その後に訪れる主人公の苦難を、読者が応援できるかどうかが決まってしまいます。


「この主人公は実はあんなに良い奴なんだから、報われるべきだ」という応援と共感の感情が生まれるかどうかがカギです。


そしてそれは設定ではなく、実際の行動から生まれます

「主人公以外のキャラクター」は?

ここまで「主人公」について見てきましたが、他のキャラクターはどうでしょうか。


たとえば、主人公と敵対する「悪役」は?


これについても、「そのキャラクターにはどんな役割があるか」という観点から考える必要があります。


「悪役」は主人公が倒さなければならないキャラクターであるわけですから、第一の要素は「共感」ではなくなります。


下手に「悪役」に対して共感できるようにしてしまうと、読者は主人公と悪役のどちらを応援すればよいかわからず、物語の筋を見失って混乱してしまいます。


「悪役」の役割は、単純に考えれば「主人公に苦難を与えて、最終的には打倒される」というものです。そのために、悪役は姑息で卑劣な性格をしているかもしれません。


それだけではなく、主人公よりも地位や財力の面で上回っており、強力であったりする必要があります。


「ヤンキーの主人公」であれば、悪役は「卑劣な性格の校長」や「残忍な性格のヤクザ」であるかもしれません。


役割から逆算すると、ヤンキーと敵対する者は「女子供」や「生活保護を受給している老人」ではありえません。主人公よりも悪役の方が立場も力も弱かったとしたら、それはただの弱い者いじめになってしまいます。


このように、すべてのキャラクターはストーリー上でその役割を適切に果たすために、その役割から逆算されて設定されます。


そのキャラクターが魅力的であるかの前提部分は、ここにかかっているわけです。

おわりに

今回ご説明したのは、キャラクターの創造に関わる超基礎的な部分です。


より魅力的な人物を登場させるために、作家はこのルールを意図的に破ったり、与えられるべき役割を逆転させたりして、より複雑な登場人物と物語を作ろうとします。


しかしこれはあくまで基礎的な部分であり、初心者には守って欲しいところです。型を破るのは、型をある程度身に着けて、実際に使ってみてからにした方がいいでしょう。


キャラクターのバランス感覚を間違えてしまうと、読者は簡単に物語から興味を失くしてしまいます。主人公に共感できない小説を読むことがいかに苦痛かは、想像に容易いでしょう。

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