【目指せ!小説家】第7話 本文を執筆する

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連載【目指せ!小説家】第6回では、「キャラクターを創造する」工程について解説しました。

第7回は、「本文を執筆する」工程について説明します。

目次

はじめに

今回はついに、本文の執筆に取り掛かります。


何について書くかを決めて、プロットを作り、そこで活躍するキャラクターが立ち上がってきたならば、後は小説の本体を完成させるだけです。


その際に、最低限注意しなければならないことについて解説します。

1人称か?3人称か?

基本的に、小説は1人称3人称どちらかのスタイルで書かれます。

人称語り口特徴
1人称私は〜した。原則、全ては主人公の視点を通して語られる。主人公への感情移入がしやすい。
3人称彼は〜した。トムは〜した。原則、全てのキャラクターは外部から描写される。多くのキャラクターや場面を描きやすい。
2人称あなたは〜した。実験的な作品や演出でしか扱われない。

基本的に、一本の小説は人称を統一して書きます。


まれに、章ごとに人称が切り替わったり、もしくは特定の章のみ人称を変えたりして書かれる作品もありますが、初心者は避けた方が無難です。


どちらの人称が優れているということはありません。


しかし比較的、難易度が高いのは3人称の方です。


全てを主人公に語らせておけばよい1人称とは違い、3人称は常にキャラクターとの適切な距離感を保つ必要があります。


『視点のブレ』など、3人称小説には注意すべき落とし穴が多く、あの村上春樹氏でさえ、3人称で長編を書くのはとても難しいと語ります。


したがって初心の方には、まずは1人称で小説を書いてみることをお勧めします。

良い文章を書くためには?

たくさん小説を書いたからと言って、それに比例して文章力が向上していくということは、残念ながらありません。


執筆の体力が付くことと、文章が上手くなることは別の問題です。


それはいわば、ランニングを続けたからといって、速く走れるようになるとは限らないということに似ているかもしれません。


つまり、文章力というのは書き続ければ自動的にスキルアップしていく類の能力ではありませんので、向上のためには意識的かつ継続的に訓練する必要があります。


文章力を高めるためには、優れた小説を写経してみるのが効果的です。


あなたが理想とする作家を一人選び、その小説を一本分、最初から最後まで書き写してみましょう。


そうすることによって、読むだけではわからない文章のリズム感地の文と会話の比率など、優れた文章の特徴を自分の中に取り込んでいくことができます。


『天地明察』などの作品で知られる冲方丁氏も、これまでに数多くの名作を模写したという話です。


そもそも文章力というのは非常に抽象的な能力で、特に小説においては、文章の良し悪しを評価する絶対的な基準は存在しません。


良い文章を書くためには、前もって自分自身の文章の審美眼を養っておく必要があります。


そのために、小説の写経・書き写しは非常に効果的な手段の一つです。

最低限気を付けること

文章力を高めようとするよりも、最低限「駄目な文章」を書かないように気を付ける方がいくぶん容易です。


そして最低限、「駄目ではない文章」さえ書くことができれば、一本の小説を書くのに不自由しません。


そんな『最低限』の文章テクニックを一つ紹介しておきましょう。それは単に、『シンプルな文章を心掛ける』ということです。


たとえば以下の2つの文章では、どちらの方が良く見えますか?

1.「それは良くないな」
  彼はそう言った。

2.「それは良くないな」
  彼は晴れた日の牝牛のように美しい所作で、厳しくそう言い放った。

どちらの方が良いでしょう。


一見してみると2番の方が、なんだか凄い文章のように見えるかもしれません。


しかしよくよく見てみれば、「美しい」という形容詞や「厳しく」という副詞、さらには「晴れた日の牝牛のように」という意味不明な比喩表現のせいで、文章がゴチャついてしまっています。


これでは、ちっとも情景が浮かんできませんね。


書いた本人は鮮やかな名文を書いたように思っているかもしれませんが、読んでいる方としては意味不明であり、苦痛でさえあるかもしれません。


結論としては、1番の「彼はそう言った」、で描写としては必要十分なわけです。


このように、文章は努めてシンプルになるように心がける方が、失敗が少なくなります。


具体的な方針としましては、余計な形容詞や副詞、下手な比喩表現は極力削除するのが良いでしょう。


ホラー小説の大家であるスティーブン・キングの言を借りるなら、「全ての形容詞副詞を削除しろ!」という奴ですね。

おわりに

まとめると、初心者の方は「一人称」「シンプルな文章」の小説を書くことをオススメします。


他の余計なことは考えずに、それで一本小説を完成させてみましょう。


しかしそれだけでは、小説を書く「基礎体力」はついても、より良い文章を生み出す「文章力」は思うように伸びていきません。


長い時間走り続ける能力と、短い距離を速く走る能力は違うわけです。


良い文章を書くために効果的な訓練は、良い文章を真似してみることです。


優れた作家の優れた文章をどんどん模写して、時にはその技術を模倣することで、文章力は少しずつ磨き上げられていきます。


もしも思ったように文章力が向上しなかったとしても、少なくとも「悪い文章」を見極められるようにはなるはずです。


最低限「悪い文章」さえ書かなければ、読者は違和感なく小説を読み進めてくれます。


そして以前にも言った通り、高い文章力というのは小説家に必須の能力ではないわけです。

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