連載【目指せ!小説家】第8回では、書いた小説をもっと良くするための「推敲」の工程について解説しました。
第9回は、完成した小説をどのように扱えば良いか、どうすれば実際に出版されるのかを説明します。
はじめに
推敲も終えて、ついに小説が書き終わりました。
実際にどれくらいの時間がかかったかに関わらず、一本の小説を書き終えるためには、多大なエネルギーを消費したことでしょう。
それだけの労力をかけて書いたものですから、できることなら本の形になって書店に並んでくれると……欲を言えば、印税収入なんていうものが貰えると嬉しいですね。
今回は、完成した小説をどのように扱えば良いか、どうすれば実際に出版されるのかを解説します。
新人賞か、スカウトか
完成させた小説を出版するためには、出版社と出版契約を交わして本の形にしてもらい、書店に並べてもらう必要があります。
そのためには、新人賞を通過するか、WEB上の小説投稿サイトにてスカウトされるかの2通りの道があります。
つまりは、賞に応募するか、WEBで公開するかの2択なわけです(あくまでも、出版を目指す場合)。
小説の出版を狙う場合、基本的には書き始める前から、予めどちらで攻めるかを決定しておくことになります。
なぜなら、この両者というのは最終的に『小説が出版される』というゴール以外は、まったく異なるものだと言っても差し支えないからです。
新人賞には新人賞の戦略が必要ですし、小説投稿サイトには投稿サイトなりの戦略があります。
とりあえず数多の新人賞に応募して、投稿サイトにも掲載してスカウトを待ってみる……そうやって広く構えてみる姿勢を否定するわけではありませんが、よほどの傑作でもない限りは、無為に書かれた作品はどこにも引っかかりません。
完成させた作品というのは、時に自分自身よりも大事な宝物です。
そんな大事な小説を、何の考えもなしに公募へ出したり公開したりするのは、あまり利口であるとは言えません。
誰にも読んでもらえない、なんていうことが無いように、両者の特徴と性質を理解して、より良い結果にするべく、戦略を立てておきましょう。
新人賞に出してみよう
新人賞に作品を応募して、大賞を獲って小説家デビュー。
なんともわかりやすいサクセスストーリーですね。
それでは、大事な作品を新人賞に応募するときは、いったい何に注意すれば良いのでしょう?
出版社等が主催する小説の新人賞は、それぞれホラーやミステリといったジャンルの指定があるのはもちろんのこと、『こういった作品が受賞しやすい』という傾向がある場合があります。
たとえば歴史小説の賞なら、「この賞は精確な歴史考証を重視する傾向にある」という具合です。
つまり、それぞれの新人賞には求められる『作品像』があります。
これとあまりにズレた作品を応募してしまうと、選考段階において正しく評価されない恐れがあります。
こういった状況を俗に、『カテエラ(カテゴリーエラー)』と呼んだりします。
極端な話、児童文学の賞に官能小説を送るべきではないのです。
新人賞を本気で獲りに行く場合は、各新人賞の傾向と特徴を分析し、書き始める前から確とした戦略を練っておく必要があります。
たとえそれを考えないで書き上げてしまったとしても、自分の作品に合った新人賞がきっとあるはずです。
大事な作品をしっかりと評価して欲しいならば、新人賞についてきちんとリサーチして、必要ならば少し作品を微調整してから……の方が良いでしょうね。
小説投稿サイトからデビューするには?
近年では『新文芸』とも呼ばれるWEB発の作品が、出版業界で大きな市場を形成しています。
これに伴い、かつて多くの人が趣味で作品を投稿していた小説投稿サイトは、いまや小説家としてデビューするための現実的な窓口として機能しています。
投稿サイトに小説を公開し、何らかの形で出版社の目に留まると、向こう側から出版交渉を持ちかけられる場合があります。
しかしこちらの場合も、何の策も無しに公開するのはあまり利口であるとはいえません。投稿サイトの攻略は、基本的に『いかに注目を集めるか』という部分にかかっています。
小説投稿サイトはランキング形式を取っている場合が多いので、まずはそのランキングで上位を獲り、より多くの人の目に触れることを考えましょう。
投稿サイトによってその方法は異なりますが、業界最大手の『小説家になろう』においては、『ジャンル』『タイトル』『あらすじ』『投稿頻度』が要になってきます。
『小説家になろう』における重要項目
重要度 | 項目 | 備考 |
---|---|---|
高 | ジャンル | ファンタジーが支配的ですが、幅広いジャンルに出版のチャンスがあります。 |
中 | タイトル | キャッチーでわかりやすいタイトルが好まれます。 |
低 | あらすじ | あらすじにおいて、その作品がどのように面白いかをアピールする必要があります。 |
高 | 投稿頻度 | 1日1回以上の投稿に優位性があります。 |
投稿サイトの攻略は新人賞の選考とは性質が異なりますので、このような独自の攻略方法が存在します。
せっかく作品を投稿しても、こういった攻略方法を知らないと、すぐに有象無象の山に埋もれてしまうでしょう。
投稿するサイトの傾向に合わせて、作品のアピール方法を調整する必要があります。
さあ、作品を投稿してみましょう。
タイトルは……『闇夜に吠える』?
新人賞に応募するならば、このタイトルでも問題ありませんが、WEB上で公開する場合は、もっとわかりやすいタイトルにした方が良いですよ!
おわりに
このように、新人賞に応募する場合と小説投稿サイトで公開する場合は、注意点が異なります。
せっかく書き上げた小説ですから、最後まで気を抜かずに、送り出す直前まで微調整してあげましょう。
ほんの少しのリサーチが、ほんの少しの調整が、あなたの作品の明暗をすっかり変えてしまうかもしれませんよ。