【目指せ!小説家】第10話 小説家になるには?

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連載【目指せ!小説家】第9回では、完成した小説をどのように扱えば良いか、どうすれば実際に出版されるのかを解説しました。

最終回である第10回は、小説家になるために必要なスキルについて説明します。

目次

はじめに

これまで、小説の基礎的な部分から具体的な工程、果ては執筆後の流れまでを追ってきました。


しかし結局のところ、この連載を読んでくださっている方々の本当の最終目標は、『小説を書き上げること』ではなく……その先、『小説家になること』なのではないかと思います。


今回は最終回として、小説家になるために必要な具体的なスキルをご紹介して、この連載を締めくくりたいと思います。


本当に小説家になりたいという人は、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。

シナリオ構築スキル

小説家に最低限必要とされるスキルセットは、おおまかに『シナリオ構築スキル』『作品経験値』『文章力』の3つであると言えます。


1つ目の『シナリオ構築スキル』については、すでに本連載で何度か触れている通り、ある程度の学習可能な体系が存在します。


まずはこれらを『本』から学びましょう。どの本が良いということはありませんが、代表的な著作を2~3冊も読めば十分です。


その入門としては、ニール・D・ヒックス『ハリウッド脚本術』か、シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』辺りを勧めておきます。


注意点としては、できるだけ『具体的かつ体系的な書物』を選んでください。


小説ではなく脚本術の本を推奨しているのは、そのためです。


残念ながら、小説のハウツー本には主観的で曖昧な著作が散見されます。


可能な限り『具体的かつ多くの人から参照されている本』から、体系化されたシナリオ構築スキルを取り込んでみてください。

作品経験値

一通りのシナリオ構築技術を理解した後は、色々な作品に触れてみてください


小説でも映画でも構いません。


しかしその際には、それらの作品がどのような構造をしていて、どういった点が優れているのかを具体的に考えながら鑑賞してください。


つまり、できるだけ作り手の側に立ち、批判的に鑑賞・分析するということです。


この過程の目的は2つです。


1つ目は、様々なシナリオの『パターン』を自分の中に取り込むこと。


2つ目は、作品の評価能力を身に着けることです。


シナリオの『パターン』を1つでも多く知っておくに越したことはありません。


物語はゼロから生み出すよりも、ある程度のパターンに沿って構築した方が容易であるばかりか、単純に面白くなることが多いからです。


『王道』とされる筋立てをそのまま土台として使っても良いですし、『王道』をあえて捻り、逸脱するのも良いでしょう。


どちらにせよ、それには『シナリオの形式(パターン)』への理解が不可欠です。


2つ目の『作品の評価能力』とは、「客観的に見て自分の作品が面白いかどうか」を判別するのに不可欠な能力です。


自分の作品が面白くないとしても、「面白くない」ということに気づけることが重要です。


それは単なる自虐心、自信の欠如ではなく、具体的な理由を伴った判断である必要があります。


なぜなら「面白くない」のならば、「なぜ面白くないのか」を突き止めて、「面白く」すれば良いだけだからです。


この能力は、たくさんの作品を作り手の立場から、批判的な目線で鑑賞・分析することによって養われます。


あなたが面白いと感じる作品が、なぜ面白いのかを論理的に説明できるようになりましょう。

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文章力

何度も述べた通り、小説家は、ずば抜けた文章力が無いとなれないというものではありません。


小説はその全てが美しい文章や、名文で構成されている必要はないのです。


最低限、『何が起こっているか』を混乱なく書き出すことができれば十分だといえます。


つまり『美しい文章を書くための』文章力は優先度が低いので、そういったトレーニングは(とりあえずは)必要ありません。


しかしその一方で、小説家に不可欠な『文章力』も存在します。


それは『小説を最後まで完成させる文章力』と、『小説を書き続ける文章力』です。


これは『執筆の体力』と言い換えることもできます。


小説は、最後まで書き終えなければ新人賞に応募することもできませんし、本の形にもなりません。


当たり前ですね。


つまりは『美しい名文を生み出す高度な文章力』よりも、『下手でも最後まで書ききる文章力』の方が、ずっとずっと重要なのです。


『高度な文章力』がなくても小説は成り立ちますが、『書ききる文章力』がなければ、そもそも小説は完成しないのですから。


これにプラスして、『継続して書き続ける文章力』も必要です。


作家志望の人は、いつかどこかで小説家になることを諦めて、書くことを辞めてしまいます。


『職業作家になった人』というのは、『職業作家になるまで書くことをやめなかった人』だと言い換えることもできます。


こういった意味での文章力は、どうやって養うことができるのでしょうか。


それは結局、書き続けるしかありません。


1つでも多くの作品を書き上げて、作品を最後まで書き上げることを当たり前にするしかありません。


何度もマラソンを走り切って、完走することに慣れるしかないのです。


継続するために必要なことが継続することだなんて、何だか皮肉ですね。


でも、何だってそんなものではないでしょうか。

おわりに

今回お話したことは、エンタメ色の強い大衆小説寄りの内容です。


小説は必ずしも『面白くなければならない』というわけでも、『こういった技術の下に書かれなければならない』というわけでもありません。


そもそも、エンタメばかりが小説ではありません。


人間社会への深い洞察、小説という複雑な構造を利用した感情の想起……小説という媒体は様々なことができます。


しかし、今回ご紹介したスキルの1つ目と2つ目を習得すると、最低限『自己満足ではない小説とは何か』ということが理解できると思います。


これらのスキルは、結局のところ「人に読んでもらう小説を書くための基礎知識」であると言えるかもしれません。


3つ目の『文章力』は、小説家になるために、もしくは小説家であり続けるために必要なスキルです。


一冊でも多くの小説を書きましょう。


一日でも長く書き続けましょう。


この最終回を書くにあたって、筆者は商業作家仲間に意見を仰ぎました。


彼に「小説家になるために、一番必要なことって何だろう」と聞くと、彼は「書き続けることでしょ」と即答しました。


それについては、筆者も同意見です。

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