音楽とは何でしょう。
『楽譜によって表された音やリズムを演奏することで生じる芸術的な響き』といえばサマになる感じもしますが、もちろん楽譜のない即興音楽もありますし、普通なら芸術的と思えない机を叩く音も、楽譜で指定していれば音楽です。
しかし何はともあれ、音楽は音を組み合わせていることに間違いありません(無音の曲も存在しますが)。そこでまず、楽典の第一歩として『音』について学びましょう。
前回の記事では、導入として「楽典って何?」「楽典を学ぶとどうなるの?」という疑問にお答えしました。
今回からさっそく、楽典の内容を見ていきましょう。まずは基本中の基本、音の種類と高さについて、わかりやすく解説します。
音の種類
楽音と噪音
音楽に使われる音は、大きく楽音(がくおん)と噪音(そうおん)の2つに分類されます。
楽音とは文字通り、音楽演奏によく使われる心地良い音のことで、オーケストラで演奏するような楽器の音や人の歌声などが含まれます。噪音は楽音以外の音です。人の話し声や、楽器でいえば太鼓の音などです。
西洋のクラシック音楽は近代まで、ほぼ楽音で構成された曲ばかりでした。20世紀に入り、次第に噪音が取り入れられるようになっており、通常なら楽音を出す楽器で噪音を作る(楽器のボディ部分を叩く、弓を反対に持ち替えて弦を鳴らす)など、現代において噪音は音楽の重要な部分を担っています。
もっとも、それらの音をどのように楽譜にしていくかは工夫が必要です。ここでは、楽音のみを取り上げていきます。
高さ、長さ、強さ、音色
たとえ楽器で楽音を出しても、ただ同じ音が延々と流れるだけでは、それを音楽と呼ぶかは別として、少なくとも音楽性を感じることはできません。楽音が音楽性を持つには変化が必要です。音が様々な形に変化することで、我々の耳は動きや流れを意識するのです。
楽音には以下の種類があります。
・音の高さ…「ドレミファソ」のように動きます。
・音の長さ…それぞれの音を色々な長さに区切ります。時には音と音の間に休みを入れます。
・音の強さ…同じ音を区切らず出す場合でも、ある部分は強く、ある部分は弱く音を出すことで流れや動きが生まれてきます。
・音色…楽器はそれぞれ音に特徴を持っています。いくつかの楽器を組み合わせると、音に深みが増してきます。一つの楽器でも、演奏の仕方で色々な音色が出るものもあります。
どの音をどういう風に演奏してほしいかを楽譜にするには、上で挙げた楽音の種類を書き分けられるようにしなければなりません。まずは音の高さです。
音の高さ
音の高さを書き分ける『五線』
楽譜は五本の横線=五線の上に書きます。琴のように五線ではない楽譜を使うものもありますが、楽典では主に西洋音楽を扱います。
線の数え方は、下から順番に第1線、第2線、……、第5線です。線と線の間を「間(かん)」と言い、同様に下から第1間、第2間、……と数えます。
五線上の音は、上に書かれた方が高い音です。五線だけで高さの違う音を11個書くことができますが、もう少し多くの高さを書くために五線の上下に加線を使います。
五線の上の加線は下から上第1線、上第2線、……と数えますが、下の加線は上から(五線に近いところから)下第1線、下第2線、……と数えるので気をつけてください。
音の場所を決める『音部記号』
五線に音を書き入れただけでは、それが何の音を表しているかはわかりません。音部記号(おんぶきごう)が必要です。
音部記号にはいくつか種類があり、音部記号が違うと、五線の同じ場所に書いた音符が表す音の高さも違ってくるのです。
①ト音記号
一番有名な音部記号ですね。楽譜を全く見たことがない人でもこの形は知っているでしょう。『ト音』は『ソ』の音のことです。第2線をくるりと取り囲むようにして記号を書き始めるのですが、この取り囲んだ場所が『ソ』の位置です。
②ヘ音記号
こちらも比較的よく見る、低音部に使われる記号です。『ヘ音』は『ファ』の音のことで、縦に並んだ2つの点が挟んでいる第4線上が『ファ』の位置を表します。
ちなみにファは英語だと『F』ですが、ヘ音記号は『F』の字をアレンジしたデザインになっています。おわかりいただけるでしょうか。
アルト記号
あまり見かけませんが、ヴィオラなどの楽譜に使われる記号で、オーケストラの楽譜には必ず出てきます。左の直線と右の曲線がくっついている第3線上に『ド』の音が来ます。ドは日本語で『ハ』なので、ハ音記号ともいいます。
テノール記号
アルト記号と同じハ音記号ですが、上にずれ、第4線上に『ド』の音が来ます。オーケストラで中低部を受け持つ、チェロやトロンボーンといった楽器に使われることがあります。
他にも記号はありますが、上の4つ、特にト音記号とヘ音記号を覚えておけば困らないでしょう。各記号で同じ高さのドの音(ピアノだと真ん中のドと呼ばれる音)を表示すると以下のようになります。
音部記号がいくつかある理由は、五線と上下加線だけで表せる音の高さに限界があるからです。確かに加線を増やせばどこまでも広げられますが、あまりに線が多いと瞬時に何の音か見分けられません。せいぜい3本くらいまででしょう。音の高さの幅(音域)が広い楽器をその範囲におさめるには、複数の音部記号を使うことが必要なのです。
まとめ
音楽に使われる音の種類と、音の高さを表すために必要な五線、音部記号について説明しました。
五線も音部記号もなければ曲は始まりません。基本中の基本です。
音の表し方が分かったら、次は音をどのように楽譜で表すか、です。次回は音の長さと強さについて学びます。