【はじめての楽典】第5章 さまざまな記号と楽語①休符と速度の表し方

『はじめての楽典』では、これまでに音とリズムについて学びました。

>前回の記事 第4章 『リズム』について知ろう②

それらに加え、作り手が細かなニュアンスを伝えるために、そして演奏者が曲をより理解するために、楽譜の中では記号や音楽用語が用いられます。

どんなふうに表現されるのか、見てみましょう。

はじめに

ある楽曲を、どの音をどんな長さで演奏するかだけを五線紙上に書いた場合でももちろん演奏は可能ですし、それなりにひとつの「曲」として聴こえます。

しかし、作り手側としては「この曲は全体的に速く」や「ここからここまでの間でどんどん盛り上げていきたい」など、音符だけでは表現できないことを譜面の中へ取り込んでいきたいと考えます。

また、演奏者側も、ある程度指示がないと、特にその曲が初見の場合にどう演奏すれば作り手の意思に沿うのかを掴めません。

そのため、さまざまな音楽記号や、音楽用語(楽語)が存在し、楽譜を読みやすくしたり、音楽表現をフォローしたりしています。

代表的なものをまとめてみました。

休符

第2章で音符の長さについて説明したときに、休符についても述べなければならなかったのですが、少し遅れての登場です。

>第2章 『音』について知ろう②音の長さと強さ

音楽は音符の流れが延々と続くのではなく、程よく音の流れを休ませることで、コントラストに優れ、動きのあるものとなります。

音符の長さの種類だけ、同じ長さの休符が存在します。休符で指示された長さだけ演奏を休みます。

下図では、それぞれの音符の下に書かれたものが、その長さの休符です。

もちろん、付点休符も存在します。たとえば付点四分休符は四分休符と八分休符を足した長さだけ休みます。

ただ、注意して頂きたいことがあります。付点休符は比較的短い長さの休みに使用するようにして下さい。

付点四分休符は、前回出てきた8分の6拍子のような、付点四分音符を1拍とする複合拍子の時には1拍分の休符を表すために使用しますが、単純拍子では原則として使用しません。

第4章 『リズム』について知ろう②

のようには書かず、

という風に、四分休符と八分休符に分けるのです。

その理由として、付点休符の長さが音譜に比べ、視覚的に捉えにくいということがあります。

実際にリズムを取ってみると分かる通り、音を出す付点音符は数えやすいのですが、音を出さない付点休符は少し数えにくいです。

また、付点二分休符は使いません。8分の6拍子で1小節を丸々休む場合には、全休符を使います。

時々勘違いされている方がいますが、全休符は「4つ休む」ではなく「その小節を全部休む」という意味です。

4拍子の場合も、2分休符と四分休符に分けて下さい。

ではなく

とします。

もちろん、4拍子に付点四分休符を使っても長さ的に間違いはありませんし、実際に使用している楽譜もあるかと思います。

ただし、クラシックの楽譜ではほとんど使用されません。

速度記号

ある曲をどれくらいのテンポ(速さ)で演奏すれば良いかというのは、重要なポイントです。

同じメロディーでも速度が違うと全く別の曲に聴こえてくることもあるので、演奏者にどれくらいの速さで演奏してもらいたいか、きちんと示しておくことが大切です。

速度標語

クラシック音楽では一般的に、速度を表す言葉(速度標語)にイタリア語を用います。

下に示す速度標語の中には、皆さんが聞いたことのある言葉も多くあると思います。

ただし、イタリア語でなければならないという決まりはありません。

自分で書く分には、英語でもフランス語でも、もちろん日本語でも用いて構わないのです。

しかし演奏する場合に、ある言葉が何を意味しているかを知っておく必要はあるでしょう。


「遅く」を意味する速度標語
Largo ラルゴ
Lento レント
Adagio アダージオ
Grave グラーヴェ

どの標語が一番遅い、などということはなく、それぞれの言葉の持つ「遅さ」の意味が違うのです。

上2つはゆったりした緩やかさ、Adagio は静かに、Grave は荘厳な、という意味を併せ持ちます。


「やや遅く」
Larghetto ラルゲット
Adagietto アダージェット
Andante アンダンテ
Andantino アンダンティーノ

イタリア語は「-etto」や「-ino」を末尾に付けると、本来の意味が弱められます。上2つは本来の「遅く」の意味が弱められ、「やや遅く」という意味になります。

Andante は「歩く速さで」という意味です。気持ちゆったりめに演奏します。AndantinoAndante より少し早くなります。


「中程度」
Moderato モデラート

程よい速さで演奏します。


「やや速く」
Allegretto アレグレット

「速く」を意味するAllegroに「-etto」を付けて意味を弱めたものです。Allegromoderatoと表記することもあります。


「速く」
Allegro アレグロ
Vivace ヴィヴァーチェ
Vivo ヴィーヴォ
Presto ブレスト

VivaceVivo は「速く+活き活きと」演奏します。Presto は速さ+盛り上がりという感じなので、曲の冒頭に示す速度標語にはあまり使用されません。

また、「-issimo」を末尾に付けると言葉の意味が強まります。LentoLentissimo で「非常に遅く」、AllegroAllegrissimo で「非常に早く」という意味になります。


速度を次第に変化させる標語もいくつか覚えておきましょう。

accelerando(accel.) アッチェレランド だんだん速く
ritardando(rit.) リタルダンド だんだん遅く
a tempo ア・テンポ 元の速さに戻る
temporubato テンポ・ルバート 自由な速さで
adlibitum(adlib.) アド・リビトゥム速さやリズムを自由に(アドリブの語源)

メトロノーム表示

1分間に拍をいくつ刻むかを設定します。1拍の音符とその数をイコールで繋ぎます。

上の楽譜だと、四分音符を1分間に120回刻む速さです。4分の4拍子なので、1分間に30小節演奏することになりますね。

速度標語でいうと Allegro といって良いでしょう。

このように表示されることもあります。

M.M.はメルツェルメトロノーム(Mälzel’sMetronome)の略で、メトロノーム速度のことです(メルツェルとはメトロノームを作った人の名前です)。

Ca.とはcircaの略で「約」という意味です。

まとめ

いわゆるクラシック音楽では、速度を標語で表すことが多いのですが、最近では(特に正確な速さを求める曲においては)ほぼメトロノーム表示となっています。

譜面上にはまだまだ色々な楽語が飛び交っています。次回も引き続き、音楽用語についてご説明します。

>次回 第6章 さまざまな記号と楽語②強弱記号と演奏方法