【はじめての楽典】第6章 さまざまな記号と楽語②強弱記号と演奏方法

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楽典 入門 音楽理論 強弱記号 自宅 独学

『はじめての楽典』ではこれまでに、ある音楽を表すために、音符リズム速度記号までを学んできました。

今回は、演奏時の表現方法を指示する様々な記号や言葉を覚えましょう。

目次

強弱記号

fp といった基本的な強弱記号については、第2章でいくつか説明したものを知っていれば十分だと思います。

pf を3つ、時には4つ重ねた強弱記号も存在しますが、単独楽器の演奏で pppp からffff までの大きさの幅が出せるかどうかは微妙なところですから、やはり2つ程度に留めておく方が無難でしょう。

強弱記号は一旦表示すると、次に新たな記号が出てくるまでその強さを保ちます。

しかし、徐々に強さを変化させたり、ある1つの音だけに通用させたりということも、演奏表現として必要なところです。いくつかご紹介します。速度記号同様、イタリア語を用います。

次第に大きさを変化させる

crescendo クレッシェンド だんだん強く(cresc.と略します)

という図形を用いることも多いです。

diminuendo ディミニュエンド だんだん弱く(dim.
decrescendo デクレッシェンド だんだん弱く(decresc.

こちらはこのような図形も用います。

特定の音だけを強く演奏させる

sf スフォルツァンド(sforzando
sfz スフォルツァート(sforzato
rf. リンフォルツァンド(rinfortando
rft. リンフォルツァート(rinforzato
 アッチェント(accento, 「アクセント」と呼ぶ方が一般的です)
fp フォルテピアノ強く、そしてすぐに弱く

アクセントより上部にある記号の基となるイタリア語の意味は、それぞれ微妙に違います。rf.rft. は単なる強さの強調ではなく、どっしりした安定感のある強さを表します。ただ、そこまで考えずに使用されている場合もあるでしょう。

特定の音だけ弱く演奏させるという記号はなく、いくつかの楽語を組み合わせて指示することになります。実際、「この部分だけを強く」に比べ、「この部分だけを弱く」を表現する機会はかなり少ないものです。

発想標語

作曲家は、自分の曲をどのように演奏してもらいたいかのイメージを、さらに細かく発想標語を用いて指示します。

発想標語は曲の冒頭、速度記号の後に指示される時と、曲中に細かく出てくる時があります。最初に大きく指示されると、曲全体のイメージがそうなのだな、と考えて良いでしょう。

代表的なイタリア語の発想標語のみを以下に記します。

agitato アジタート 急き込んで、興奮して
amabile アマービレ 優しく、可愛らしく
animoso− アニモーソ 大胆に、勇敢に
appassionato アパッショナート 熱情的に
brillante ブリランテ 輝かしく、華やかに
brioso ブリオーソ 陽気に、快活に
cantabile カンタビレ 歌うように、表情をこめて(cantandoも同義)
capriccioso カプリチョーソ 気まぐれに、
comodo(commodo) コモド 気軽に、ほどよく
conanima コン・アニマ 活気をもって
conbrio コン・ブリオ 生き生きと、活気をもって
confuoco コン・フォーコ 熱烈に、火のように
conmoto コン・モート 動きをつけて
conspirito コン・スピーリト 元気に、活気をつけて
delicato デリカート 繊細に、優美に
dolce ドルチェ 柔らかく、優しく
dolente ドレンテ 痛ましげに、悲しげに
dramatic ドラマティック 劇的に、迫力をもって
elegante エレガンテ 優美に、優雅に
energico エネルジコー 力強く
espressivo(espr.) エスプレッシーヴォ 表情豊かに、感情を込めて
fantastico ファンタスティコ 幻想的に
fastoso ファストーソ きらびやかに
galante ガランテ 優雅に、優美に
giocoso ジョコーソ 陽気に、おどけて、楽しげに
grandioso グランディオーソ 雄大に、ゆったりと
grazioso グラツィオーソ 優雅に、華やかに
leggiero(legg.) レッジェーロ 軽く
maestoso マエストーソ 威厳に満ちて、堂々と
marciale マルチャーレ 行進曲風に
misterioso ミステリオーソ 神秘的に
mosso モッソ 動いて
pastorale パストラーレ 牧歌的に、田園風に
pastoso パストーソ 柔らかく、暖かみのある
piacere ピアチェーレ 楽しげに、気持ちよく
quieto クイエート 穏やかな、静かな
risoluto リゾルート きっぱりと、決然と
scherzando スケルツァンド おどけて
sensibile センシービレ 敏感に、感覚でとらえて
sentimentale センティメンターレ 感傷的に
serioso セリオーソ 厳粛に、重々しく
spianato スピアナート なめらかに、安らかに
spiritoso スピリトーソ 元気に、生き生きと
tranquillo トランクイッロ 穏やかに、心安らかに
veloce ヴェローチェ 急いで、素早く

付加語

これまで出てきた楽語に付加語を付けることで、更に細かく指示ができます。主に速度記号に付けますが、発想標語にも付けられます。少しだけ紹介します。

assai アッサイ , molto モルト 非常に 
nontanto ノン・タント , nontroppo ノン・トロッポ それほどではなく
poco ポコ少し
con コン 〜と共に
senza センツァ 〜なしで
ma マ しかし
quasi クァージ 〜のように
più ピウ より多く
meno メーノ より少なく
subito スビト 急に
alla アラ 〜風に

Allegro ma non troppo だと、「速く、しかし甚だしくなく」という意味になります。meno f は「強くをより少なく」=「今までより弱く」という意味です。複雑ですね。

その他の演奏記号(主なもの)

実際の記号は、下の譜面上に番号で記しています。

①② legato レガート(英:slur スラー )
各音の間を滑らかにつないで演奏する(①と②の間は切って演奏する)

③ staccarto スタッカート
その音を短く切って演奏する

④ tenuto テヌート
その音の長さをしっかり保つ

⑤ fermata フェルマータ
その音を実際の音符より長く伸ばし、次の音との間を十分空ける

⑥ mezzostaccarto メゾ・スタッカート
その音をやや短めに切る

marcato マルカート
各音をはっきりと演奏する(記号はありません)

まとめ

前回も書きましたが、クラシック音楽での楽語にはイタリア語が用いられることが多いです。いわば音楽の共通語として、自分で楽譜を読む時にも必要ですし、曲を提供する立場でも便利です。

しかし、もっと細かいニュアンスを伝えたければ、日本語でも英語でも、分かりやすい言葉を用いて構いません。

演奏記号を自分で新たに作ることも禁じられてはいません。現代音楽では、見たこともないような記号が使われることも多いです。

とはいえそれらの記号は、たいてい現代奏法において、ある程度共通とされています。自分の好みでいくつも適当な演奏記号を作るのは避け、譜面上に言葉で説明するようにしましょう。

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