前回で全10回の連載を終えた【音大で学ぶ作曲】。
番外編として、気になる具体的な作曲方法を考えてみましょう。テーマは「ポップスの作曲」です! 音大で学んだことを活かすことはできるのでしょうか?
音大で学ぶポピュラー音楽の作曲家たち
音大で作曲を学ぶ人の中には、ポピュラー音楽の作曲家を志す人も少なくはありません。たとえば彼らは、映画音楽の作曲家やジャズプレイヤー、ポップスのシンガーソングライターを目指していたりします。
ところで、このようなジャンルの作曲家を志す場合、音大で作曲を学ぶことにどのような意義があるのでしょうか?
まずは、今挙げた3つの分野それぞれについて考えてみましょう。
映画音楽、ジャズ、ポップスの3ジャンルの作曲家の中で、音大出身者が多いのは映画音楽の作曲家でしょう。
この理由としては映画音楽にはクラシック風の音楽が多く、またそれらはオーケストラで演奏される場合が多いからです。オーケストラを扱う管弦楽法の技術は、音大でこそ学ぶことのできる技術です。
また、ジャズプレイヤーの中にも音大を卒業した人は多く、特にアメリカにあるバークリー音楽大学はジャズの名門校として有名です。日本では洗足音楽大学などでジャズを学べるそうです。
最後に、ポップスの場合について考えてみましょう。ポップスの作曲家には音大出身者もいますが、それ以上に、音大で作曲を学ばなくても作曲家になれた人の方が多いように思えます。
音大で学ぶ作曲方法を、ポップスの作曲に活かすことはできるのでしょうか?
今回はこのテーマについて考えてみます。
ポップス作曲の手順とは?
まず、ポップスの作曲家がどのような手順で作曲をするのか、考えてみます。人によって様々ですが、多くは次の3パターンに分類できるでしょう。
①歌詞を先に書いて、その後にその歌詞に合せてメロディを作っていく
②メロディを先に書いて、その後にそのメロディに合わせて歌詞を作っていく
③楽器を弾きながらメロディもハーモニーも、時には歌詞も同時に作っていく
この中では、②の手順で作る作曲家の方が比較的に多いように思います。②の良い点としては、メロディから先に作るために、自由にメロディを書くことができるということです。
多くの人にとって、メロディを書くことよりも文章を書くことの方が簡単にできます。それは、メロディを書くことは、なかなか日常的にやることではないからです。そのためメロディを作る方が難しく、そのための技術が必要になります。
さらに、歌詞を先に書いてしまうと、その歌詞という制約の中でメロディを書かなければならなくなります。これはより難しいことです。
また、まだ慣れていない人が歌詞を先に書くと、歌詞が理屈っぽく硬い文章になってしまうことがあります。
人は言葉によって、普段からいろいろなことを考えています。そのため、言葉を書くと無意識のうちに、文章を論理的に整えてしまうものです。
そのようなわけで、メロディを先に書く方法が自由にメロディを書くことができ、より扱いやすいのですが、実際のところ、作曲方法は人によって本当に様々です。
以上の3パターンの手順を合せて作る人もいます。たとえばある有名なシンガーソングライターは、ある程度歌詞の構成を大まかに考えておいて、その構成に合うようにメロディを作り、その後に具体的に歌詞の言葉を当てはめていくそうです。
メロディを生み出すための秘訣
ところで、先にメロディを作るとしても、どうやってメロディを生み出すのでしょうか?
人によっては鼻歌から作っていく人もいるそうですが、比較的作りやすい方法としては、メロディを作る前にあらかじめコード進行を決めておくという方法かと思います。
そしてまさにこの方法でこそ、音大で学んだ作曲方法や音楽理論の知識を応用することができます。
和音には、その和音を構成する音があります。
たとえば「Cメジャー」の和音でしたら「ド、ミ、ソ」の3つの音が、「Cマイナー」でしたら「ド、ミ♭、ソ」の3つの音が和音を構成する音で、これらの音のことを和声法ではそのまま和音構成音と呼びます。
「Cメジャー」→「Dマイナー」→「G7メジャー」→「Cメジャー」というコード進行を使うとすると、その和音構成音は「ド、ミ、ソ」→「レ、ファ、ラ」→「ソ、シ、レ、ファ」→「ド、ミ、ソ」という風になります。
そうなってくると、それぞれの和音で使うことのできる音がはっきりしてきます。
たとえば「Cメジャー」は「ド、ミ、ソ」なので、ファやラという音を基本的には含みませんし、「G7メジャー」は「ソ、シ、レ、ファ」なので、ドやミ♭という音を基本的に含みません。
そのようなわけで、それぞれの和音構成音のみでメロディを作ってみると、たとえば次のようなメロディが生まれてきます。
はじめのミの音は「Cメジャー」の和音構成音で、次のレの音は「Dマイナー」の和音構成音です。そしてリズムを整えると、よりメロディらしくなります。
これで短いメロディは完成です。この続きは新たに同じように作ることもできますが、今作ったこの短いメロディを上下に少しずらし、少し整えることでつなげていくこともできます。
このように、作曲方法や音楽理論の知識を応用して歌を作ることができます。プロのポップスの作曲家でも、この方法を用いている人はたくさんいるでしょう。
ただ、注意することは、ポップスの作曲家に限らず多くの作曲家は、必ずしも意識してこの方法を用いているとは限らないということです。
彼らはこれまでに吸収した様々な作曲方法を、無意識の中で応用して用いている場合が多いのではないでしょうか。
これはとても大切なことで、無意識に用いることができるまでに吸収した作曲方法でこそ、より自分自身の音を表現できたりするものです。
まとめ
さて、今回はポップスの作曲家の作曲手順と、メロディを生み出すための一つの方法をご紹介しました。
今回ご紹介したものは、一部分に過ぎません。作曲家にはそれぞれにそれぞれの方法があって、それが彼らの音楽だけではなく、個性をも形作っているのです。
自分のオリジナルな作曲方法を、皆さんも生み出してみましょう!