【はじめての和声法】14.転調法の第一歩を進んでみよう

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転調 近親調 属調 下属調 平行調 同主調 和声法 音楽理論 自宅 独学
目次

「近親調への転調」とは?

これまでに準固有和音ドッペルドミナンテという2種類の借用和音について学びました。このような借用和音は転調に活かすことができると述べましたが、さてどのように活かすことができるのでしょうか? 今回からは借用和音を用いた転調の方法について勉強してみましょう。

まず転調とは、曲の途中で調が変わることを意味します。そして、転調するとそれまでの雰囲気と違う感じがしたり、ドラマティックな印象を受けたりするものです。転調はやろうと思えばどの調にでも変わることができますが、ここでは簡単な転調法として、近親調への転調を2回の記事に分けて紹介します。

ところで近親調とは何でしょうか? 簡単におさらいをしてみましょう。近親調とは、属調下属調平行調、そして同主調のことです。他の調を近親調に含めることもありますが、主要な近親調はこの4種です。

たとえばCdurを主調にしてみると、Cdurの属調はcの完全5度上であるgを主音とするGdurです。

譜例1

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逆にcの完全5度下であるfを主音にするとFdurになり、これはCdurの下属調にあたります。

譜例2

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平行調とは主調と同じ調号を持つ調のこと。Cdurは調号を持たないので同じく調号を持たない調は何かと考えてみると、それはamollですね。

譜例3

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平行調は、主調が長調の場合はその短3度下の短調にあたり、主調が短調の場合はその短3度上の長調にあたります。たとえばGdurの平行調はその短3度下の短調であるemollですし、gmollの平行調はその短3度上のBdurです。

譜例4

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同主調はその名前の通り、主調と同じ主音を持つ調のことです。例を挙げてみると、Cdurの同主調はcmollで、それは同主短調と呼ばれます。gmollの同主調はGdurで、それは同主長調と呼ばれます。

譜例5

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これらの主調と近親調の関係は次のようになります。

表1

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平行調と同主調は主調が長調である場合は短調になり、主調が短調である場合は長調になることが特徴的です。それでは練習問題として、例にならいながら、問題の調の近親調は何か考えてみましょう。


例:Ddur
例の解答:Ddurの属調はAdur、下属調はGdur、平行調はhmoll、同主調はdmoll


練習問題
①Fdur ②cismoll ③Desdur


解答:
①の属調はCdur、下属調はBdur、平行調はdmoll、同主調はfmoll。
②の属調はgismoll、下属調はfismoll、平行調はEdur、同主調はCisdur。
③の属調はAsdur、下属調はGesdur、平行調はbmoll、同主調はdesmoll。

「近親調への転調」の実例

次の譜例を見てください。これはCdurとその近親調の音階です。

譜例6

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近親調のそれぞれの音階に、Cdurには含まれない音があります。このような音はその調に特徴的な音であるといえます。以前の回ではそのような音を便宜的に「特有音」と名付けましたね。たとえばGdur(属調)のfisやFdur(下属調)のb、そしてamoll(平行調)で作られる導音のgisやcmoll(同主調)に含まれるesやasはどれもCdurには無い音です。

さて、今回と次回のメインテーマである「近親調への転調」ではこのような特有音を上手に活用しましょう。特有音を使うと調を変えやすくなります。次の例を見てみましょう。最初はCdurで書かれていますが、いつの間にかGdurになっています。特有音がどこで用いられているのかチェックしてみましょう。

譜例7

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さて次の例はCdurの曲ですが、最終的にはなんとAsdurまで転調しています。

譜例8

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どうしてこんなことになっているのかというと、次のような転調過程を通っているからです。

表2

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まず最初の調はCdurです。しばらくはCdurが続きますが、5小節目でフラットが現れています。この和音は何でしょうか?

前に準固有和音について学びました。準固有和音とは長調の中でその同主短調に特有な和音を借りてきた和音のことでした。この同主短調に特有な和音とは、IIとIV、V、そしてVIの和音のことですが、それらはそれぞれII、IV、V9VIと記され、基本形だけではなく転回形やそれぞれの7の和音も使用が認められましたね。

譜例9

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つまり譜例8の5小節目ではVIが使われているのです。そしてこのVIとは当然cmollのVIと同じ和音ですから、それをきっかけにしてcmollに転調しているわけです。

譜例10(譜例8の4小節目~)

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先ほど挙げた表2ではcmollに変わった場所を6小節目としています。ドミナンテからトニカに進んだ瞬間が調の「完全に」確定する瞬間であるとされますので、Cdurからcmollに変わった瞬間はVIが現れた5小節目ではなく、6小節目としています。VIが出た時点では次の例のようにその後もまだCdurのまま進行する可能性もありますが、6小節目のようにcmollのIに進むと完全にcmollだと分かりますね。

譜例11

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さてcmollの後はfmollに転調します。表2では11小節目で転調していることになっていますが、9小節目からcmollに含まれていないdesやbの音が書かれていますので、このあたりからfmollと解釈しても良さそうですね。どこから転調したのか識別するには少し慣れが必要ですので、今はシンプルにVからIに進んだ瞬間からfmollであると考えて大丈夫です。ただ、その転調の準備は9小節目から始まっています。

譜例12(譜例8の9小節目~)

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この後はすぐにAsdurに変わります。

譜例13(譜例8の11小節目~)

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もしかしたら既に気付いているかと思いますが、CdurからAsdurへとだいぶ遠くの調まで進んだように見えますが、Cdurの次はその同主短調であるcmollへと、cmollの次はその下属調であるfmollへと、fmollの次はその平行調であるAsdurへと近親調への転調を繰り返しながらAsdurに進んでいます。

譜例14

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さて、今回は次の課題を出します。この課題の調は最初amollになっていますが、様々な調に転調しています。今回の記事で紹介したことを参考しながら、課題の曲がどのような調に転調しているのか解釈してみましょう。

課題

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前回の課題の解答例は以下のとおりです。

前回課題解答例

ドッペルドミナンテ 属調 属和音 和声法 音楽理論

まとめ

これからいよいよ転調について取り組みます。まず今回は和声の中でどのように転調が行われているのか、いくつかの例を出しながら解説しました。今後紹介する転調法は「近親調への転調」ですが、そんな近親調への転調も、「属調への転調」、「下属調への転調」、「平行調への転調」、そして「同主調への転調」を組み合わせながら繰り返すと遠い調にまで転調できるのです。

実際に近親調への転調は多くの楽曲の中で用いられます。たとえば古典派のソナタではとても重要な役割を持つのがこの転調のテクニックです。これらの実例についても今後紹介したいと考えています。転調法についてマスターして、実際の作曲に役立てることができるようにしていきましょう。

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