【はじめての対位法】13.3声対位法の「1:2」を作るために

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目次

3声対位法「1:2」の復習

前回から3声対位法の「1:2」について取り組み、「1:2」になる声部が、ソプラノに置かれるパターンとアルトに置かれるパターンを学びました。今回は低音声部に「1:2」を置いてみます。

その前に簡単に復習してみましょう。「1:2」で不協和音は弱拍のみに置かれ、その前の音からその後の音にかけて同じ方向に順次進行する場合に用いることができました。たとえば次のようになります。

譜例1

3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

それに引き換え、協和音はどのような場合でも強拍と弱拍の両方で用いることができました。

譜例2

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このルールを3声対位法に当てはめると次のようになります。

譜例3

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ここまで少し難しく感じている方のために、今回はちょっとしたコツを紹介します。2声にしても3声にしても「1:2」になるというのは音が増えることです。これは自由も増すということでありますが、その分難しく思えるもので、慣れるために少し努力を要するかもしれません。慣れるまでの間はいきなり「1:2」で書くのではなく、この「1:2」で書くべきところを「1:1」でアウトラインとしてまず書いてみてはどうでしょうか? たとえば次の譜例を見てください。

譜例4

3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

低音に定旋律が置かれています。ソプラノに「1:2」声部を置き、アルトには「1:1」声部を置いていきましょう。まずはアルトに音を付けてみます。

譜例5

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

ソプラノは「1:2」になりますが、ここはいきなり「1:2」声部を書かずにアウトラインとして「1:1」を置いてみましょう。

譜例6

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

アウトラインを「1:2」にしてみる

この「1:1」に基づいて「1:2」にしていきましょう。ポイントは「順次進行を作る」ということです。

まず譜例6の①でソプラノはh音、②ではa音になっています。この2音は既に順次進行になっていますので、音符を加えるのではなく、休符を加えてみましょう。つまりソプラノの冒頭に二分休符を置くのです。

譜例7

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このように「1:2」の冒頭には二分休符を置くことができ、休符を置かれた声部は目立って聞こえます。ということはその声部は独立した別の声部であるように聞こえるのでとても効果的です。

さて、②から③にかけてはどうでしょうか? ここは跳躍進行していますので、順次進行できるようにしてみましょう。しかし、aからhに上がると低音と不協和音になってしまいます。弱拍で不協和音を用いるためには、その次の音へ同じ方向に順次進行しなければいけません。この例では次のようになるべきです。

譜例8

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しかしこれでは③の強拍で低音とソプラノが不協和音(完全4度)を作ってしまいますので認められません。ということは、②の弱拍は協和音になる音でなければいけません。加えて順次進行になるためには、②のaか③のeのどちらかと順次進行になるようにしましょう。②のaから順次進行する場合、上行してhになると不具合が生じます(譜例8)。下行してgにすると、これでは低音と不協和音を作ってしまいます。

譜例9

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それでは③のeへ順次進行してみてはどうでしょうか? eへ順次進行で進む音はdかfです。このうちdを②の弱拍に置くと、この音と低音aで不協和音(完全4度)を作ります。

譜例10

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それではfではどうでしょうか?

譜例11

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

こちらだと協和音(短6度)になりますね。fを②の弱拍に置きましょう。

さて、③の弱拍を考えてみます。③はeの音、④はcの音になっています。③の弱拍にdの音を置くことで、「e→d→c」と順次進行を作ることができそうです。だけどここは注意が必要です。もし③の弱拍にdを置くと、次のように④の強拍との間に連続5度を作ってしまいます。

譜例12

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完全5度を続けて用いる連続5度は対位法においても避けなければいけませんので、dを置くことはできません。ここの弱拍でも協和音を置く必要がありそうです。eが順次進行するとfかdの音に進みます。もちろんdは連続5度を生じさせるため使うことができません。fは低音との音程が短7度になってしまいます。この不協和音を置いた場合、④の強拍は次のようにgにならなければいけませんが、これではこの強拍で不協和音になってしまいます。

譜例13

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

なので、別の場合を考えてみましょう。④のcに順次進行で進む音はdを除くとhです。③の弱拍にhを置くと、その低音との関係は協和音。ここはhにしましょう。

譜例14

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④はc音で⑤はa音です。ここは「c→h→a」という進行にすると順次進行できますし、完全5度などの禁則も生じません。しかし①にも③にも、そして⑥にもhの音がありますので少しくどく感じます。

譜例15

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

ここはhの音ではない音を探してみましょう。④か⑤の強拍と順次進行する音は、gもしくはdです。gを④の弱拍に置くとその低音と不協和音(長2度)を作ってしまいますのでこの音は除外されます。

譜例16

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

dではどうでしょうか? これだと協和音になるので問題はなさそうですね。

譜例17

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

では、⑤の弱拍にはどのような音が置かれるでしょう? ⑤の強拍はa音、⑥の強拍はh音。この強拍同士で既に順次進行を作っています。どちらかの音と順次進行の関係になる音を考えてみましょう。

⑤強拍のaから順次進行するとgもしくはhに進みます。⑥強拍のhへ順次進行するのはcもしくはaです。ということで⑤の弱拍はg、h、c、aのいずれかの音になりますが、⑤と⑥の強拍に既にaとhが含まれているので、この2つの音は選択肢から除外しましょう。なぜならこれらの音を選ぶと、次のように同じ音が連続して続いてしまうからです。

譜例18

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

では、⑤の弱拍にはgとcのどちらの音が良いでしょうか? ここはどちらでも問題はないのですが、アルトがgになっていることに着目しましょう。ここでソプラノの弱拍にgを選ぶと音が重なってしまうことになります。せっかくなのでここはcにしましょう。とは言ってもあえてgにしても問題ありません。

譜例19

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

もう少しで終止です。⑥の強拍はhの音で終止の⑦はgisです。ここはシンプルに「h→a→gis」にしてはどうでしょうか?

譜例20

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これで完成です。少し難しく感じている場合は、このようにまずは「1:1」でアウトラインを作って、その後に「1:2」にしてみましょう。これは「1:4」でも応用できます。慣れるためには一つずつゆっくりと取り組んでみると良いですね。

低音に「1:2」を置いてみると

さて、今回は低音に「1:2」を置いてみましょう。まず次の譜例を見てください。

譜例21

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

アルトの声部に定旋律が置かれています。定旋律に合わせて「1:2」を置いていきましょう。

譜例22

定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

この定旋律はdから始まって、dで終わっているのでドリア旋法であることがわかります。冒頭小節では定旋律から完全1度、8度、完全5度離れた音を対旋律に置くことができましたが、低音の始めと終わりの音はその曲全体の雰囲気を決定する強い力があるのでした。なので、dの完全5度下のgではなく、ドリア旋法の主音であるdを低音に置いてドリアの雰囲気を守りましょう。

次はソプラノを書いていきます。これまでは低音声部に合わせて「1:2」の部分を付けていたので、「1:2」の声部に合わせて他の声部を付けることには最初違和感を覚えるでしょうが、順番が逆なだけで難しく考える必要はありません。これで完成ですね。

譜例23

ドリア旋法 定旋律 3声対位法 協和音程 不協和音程 強拍 弱拍 対位法 音楽理論

さて、今回は次の課題を出します。ソプラノの定旋律に合わせて低音に「1:2」声部、アルトに「1:1」声部を置いてみましょう。

課題

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前回の課題の解答例は以下のとおりです。

前回課題解答例

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まとめ

今回は3声対位法の「1:2」について前回までの内容を振り返りつつ、慣れるためのポイントを紹介しました。最初は難しく感じることもありますので、シンプルに「1:1」で考えて、その後から「1:2」にしていくという方法で慣れていきましょう。

また、低音に「1:2」声部を置くパターンにもチャレンジしましたね。いよいよ複雑になっていく対位法ですが、まずはシンプルに考えて次第に複雑にしていくことができます。これに慣れてきたら次は「1:4」に挑戦です。頑張って復習をしていきましょう。

対位法の教本
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