【はじめての楽典】第20章 調判定③ 経過音・倚音・逸音・転調

【はじめての楽典】第19章では、引き続き、最終章である「調判定」について学びました。

いよいよ今回が連載の最終回です。調判定をしっかりマスターしましょう!

目次

音階固有音でないのに跳躍進行することがある② 経過音と複経過音

経過音は、音階固有音が長2度で並んでいる間に入る音です。3つの音が半音で並び、なだらかに音が経過していきます。


<譜例1>

楽典 入門 調判定 経過音 複経過音 C dur

C durの旋律です。経過音となっているところは音階固有音ではないので、♯のついた音は次に半音上がり、♭のついた音は次に半音下がるという、いわば王道の臨時音の形です。

複経過音は、この臨時に半音高く(低く)なった音が次に一旦3度上がった(下がった)後、本来進むべき短2度上(下)の音階固有音にいくという形を取ります。


<譜例2>

楽典 入門 調判定 複経過音 C dur

譜例1の経過音の部分を、すべて複経過音にしてみました。違いはお分かりでしょうか。

調判定の問題としては、複経過音は「引っかけ」の役割を持っています。早合点せずに、旋律を最後まで追って下さい。

3小節目、4小節目でファが音階固有音であることが分かり、他の要素からもC durであることが分かるので、レ♯ソ♯などが複経過音となります。

複経過音の存在を知らないと、跳躍進行をしている説明がつけられなくなってしまいます。しっかり覚えましょう。

音階固有音でないのに跳躍進行することがある③ 倚音と複倚音

倚音(いおん)は、刺繍音や経過音のように2つの音階固有音の間にあるのではなく、いきなり現れ、次に半音上がり(下がり)、音階固有音に到達する非和声音です。


<譜例3>

楽典 入門 調判定 倚音 F dur

今まで出てきた非和声音(刺繍音・経過音)と共に、倚音を用いた旋律です。

刺繍音と経過音は、その前後の音と必ず短2度の関係にありますね。一方、倚音は前の音を必要としていません。

この旋律の調は原則に沿って考えれば分かると思います。答えはF durです。


<譜例4>

楽典 入門 調判定 複倚音 h moll

ファがつきにはつかない、ラ♯で跳躍進行しているから導音、と考えるとh mollという答えが出てきます。

まず目星をつけてから例外的な音を探してみると3か所ありますが、これらが複倚音です。

倚音と次の音階固有音の間に、一旦3度高い(低い)音が挟まる形です。複倚音とその前後の音だけを見れば、複経過音の動きと同じです。

倚音と経過音の違いは、前の音があるかないかということだけなのです。

音階固有音でないのに跳躍進行することがある④ 逸音

逸音とは本来、音階固有音に進むべき音が「逸れ」て一旦その前後に行くという形を取る非和声音です。


<譜例6>

楽典 入門 調判定 複倚音 c moll

この旋律であれば、シンプルに考えて大丈夫です。が跳躍進行しているので導音となり、答えはc mollとなります。

1、3小節目のシ♭は旋律短音階下行形です。では、次の譜例はどうでしょう。


<譜例7>

楽典 入門 調判定 逸音 音階固有音 跳躍進行

譜例6の旋律をアレンジしてみました。本来の動きである○印をつけた音に、すべて同じ三連符のパターンで「遊びの音」を入れています。

○印のシ♭ラ♭の後についている音が逸音です。2小節目の○印の音は音階固有音なので、後についている音は単にパターン化された動きを繰り返しているだけです。

では、矢印のついた音はどう説明すれば良いでしょう。音階固有でない音が跳躍進行していますね。

このシ♭を例えばにしたり、または2小節目の最初の音をラ♭にすれば、調判定的な矛盾はなくなります。

しかしそうすると、同パターンの旋律の流れがその箇所だけ崩れてしまうことになるので、音楽的になることを優先し、やや無理をして同じ流れを繰り返しているのです。

逸音の一種といえますが、「音楽の流れとして必要なための例外」という説明で十分かと思います。

音階固有音でなくても跳躍進行する場合は他にもいくつかありますが、紙面の関係で、主なものだけ紹介しました。もっとも、これまで出たものだけ理解できていれば、調判定的にはほぼ問題ありません。

なお、前述したように、非和声音は旋律を印象付けるために用いる遊びの音であり、頻繁に使うと効果が薄れてしまいます。

ここでは便宜上多数用いていますが、実際の曲作りでは必要に応じて使うようにしましょう。

転調

第18章の調判定の説明の冒頭で、「楽曲が途中で一時的に転調していることが理解できるように」といったことを述べました。

調号のある曲が、どの部分からどの部分まで何調に転調しているかが分かれば、実際の譜読みに役立ちます。


<譜例8>

楽典 入門 調判定 転調 跳躍進行 C dur d moll

C durの旋律が、3~4小節目だけd mollに転調して、5小節目で再びC durに戻っています。決め手は3小節目のド♯シ♭が共に跳躍進行しているところですね。

厳密にいうと、2小節目の2拍めでd mollとなり、3小節目の2拍目、が跳躍進行して転調は終わり、C durに戻ります。


<譜例9>

楽典 入門 調判定 転調 近親調 遠隔調 h moll D dur

調号♯2つでラ♯が跳躍進行していて導音となっているh mollの旋律が、3小節目からのままで跳躍進行するようになっています。D durに転調していると考えられます。

実際の楽曲では、調号が変わらないままでの一時的転調は、元の調の近親調であることが多いのですが、調判定の問題では遠隔調への転調も出てくることがありますので、注意しましょう。

おわりに

20回に渡る楽典解説も、今回が最後です。お疲れさまでした。

頭の中にふと浮かんだメロディーの切れ端を譜面に落とすだけであれば、最初の7~8回を理解するだけでもできるかもしれません。

しかし、そのメロディーを発展させ、さらに伴奏も付けてひとまとまりの曲に仕上げるに至るためには、やはり最低でも、ここで説明した基礎理論の理解は必要でしょう。

音楽の理論には、他にも和声学伴奏法楽曲分析などなどさまざまな分野があります。

どれもある程度知っておくことで、楽曲への理解をより深めることができます。音楽の構造や曲作りに興味があれば、また是非学んでみて下さいね。

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