【はじめての対位法】04.「1:2」の、より自由な対位法

対位法の理解に役立つ「楽典」のおさらいはこちら

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対位法とリズムの理論

リズムは音楽の3大要素の一つだと言われるほど重要なものです。単純なメロディでも、リズムが少し変わるだけで魅力的なメロディになることもあるのです。

メロディやハーモニーに理論があるように、リズムにも理論があります。そして実はリズムの理論は、対位法が発展していく過程の中で徐々に整えられてきたという側面もあるのです。次の譜例を見てみましょう。

譜例1

リズム グレゴリオ聖歌 対位法 音楽理論

この譜例の曲はグレゴリオ聖歌です。楽譜を見るとすぐに気がつくかと思うのですが、この楽譜には拍子記号がありません。さらに、リズムはなんだか難しそうです。これが、グレゴリオ聖歌の特徴として「拍子感がなく、リズムが自由である」ということが挙げられることの理由なのです。

仮に、先ほどの譜例に無理やり拍子と小節線をつけてみると、次の2つの例のようになります。複雑さがはっきりとしますね。

譜例2

リズム グレゴリオ聖歌 対位法 音楽理論
リズム グレゴリオ聖歌 対位法 音楽理論

対位法は、斉唱や合唱によって発展しました。2人以上の歌手がそれぞれ別のメロディを歌う時、合わせるポイントを決める必要が出てきます。というのも、そうしなければそれぞれの歌手はお互いに合わせて歌うことができずに、音楽はバラバラになってしまうからです。そのようにならないためにリズム記号を統一して、整える必要があったのです。

リズムの強弱

リズムには強弱があります。一つの小節の中で心理的に強く感じるところを「強拍」と言い、強拍と比べて弱く感じるところを「弱拍」と言います。

そして、その強拍と弱拍が現れる周期によって拍子が決まるわけですが、それは逆に言うと、拍子記号を見ればどこに強拍が置かれているのか分かるということでもあります。

基本的に、強拍は小節の1拍目に置かれます。なのでたとえば、4分の2拍子の場合は2拍目が、4分の3拍子の場合は2拍目と3拍目が弱拍となります。

しかし、4分の4拍子の場合は1拍目が強拍で、2拍目と4拍目が弱拍、3拍目は「やや強拍」であるとされています。なんとも中途半端な感じがしますが、人間の心理では4分の4拍子のような比較的長い拍子の場合は、小節の中間で強拍を感じたくなるものなのだそうです。

強拍とはリズム的に強く感じる部分であるため、そこに置かれている音も心理的に印象に残りやすいものとなります。強拍は1拍目に基本的に置かれますが、それは移動することもあります。そのような状態のことを「シンコペーション」と言います。たとえば次のように、裏拍に長い音符が付いたり、弱拍の音符がタイなどによって長くなったするとシンコペーションになります。

譜例3

シンコペーション 強拍 弱拍 リズム 対位法 音楽理論

この場合、強拍はシンコペーションのところに置かれます。音符の下に丸(○)が書かれている箇所がシンコペーションです。

拍子とは、強拍と弱拍の周期です。その周期が一定に繰り返されている状態では人は心理的に安定感を感じますが、その途中でシンコペーションなどが置かれてその周期に変化が起こると緊張感を感じます。なのでシンコペーションは、音楽の中で緊張感や不安定感を引き起こすものであるということを覚えておきましょう。

1:2対位法について

さて、前回は1:1の対位法について学びました。今回からは「1:2」について学びましょう。1:1では定旋律の全音符に対して1つの全音符をあてましたが、1:2では定旋律の全音符に対して、2つの二分音符をあてることになります。なので1:2の音楽からは必然的に、強拍と弱拍が生じます。

規則は1:1とほとんど同じで、1小節内の2つの二分音符はそれに対する全音符との音程関係に気をつけながら対旋律を作っていくことになりますが、1:2では1:1で禁じられていた2度や7度の音程を条件付きで使用することができます。

1:1で禁じられていた2度や4度、7度などの不協和音程は弱拍、つまり2拍目で用いることができます。そこにさらに次の譜例のように、強拍から順次進行で弱拍に入り、その後に同じ方向に順次進行して協和音程になる場合に限り、不協和音程を用いることができるという条件が加わります。

譜例4

不協和音程 1:2 対位法 音楽理論

対位法でのシンコペーションの使い方

1:2に関する新しい規則は以上のみとなります。これからは規則よりも自由な部分が増えてくることが多いです。たとえば1:2では次の譜例のように、冒頭1小節目の強拍に休符を置くことも可能ですし、同じ音同士をタイで繋いでシンコペーションを用いることも可能です。

譜例5

シンコペーション タイ 1:2 強拍 弱拍 拍子 リズム 対位法 音楽理論

シンコペーションを用いる際は次のように、ある小節の弱拍でシンコペーションを起こす音(a)は協和音程で、その次の小節の本来は強拍にあたる、前小節の音(a)からタイで結ばれた音(b)は不協和音程になります。そして音(b)は、その次の音(c)に順次進行して協和音程になることによって解決します。

譜例6

不協和音程 シンコペーション タイ 1:2 強拍 弱拍 拍子 リズム 対位法 音楽理論

シンコペーションは使い方次第で音楽が生き生きしてきます。使いこなせるようにしましょう。

最後に、今回の課題を出します。定旋律に合せて対旋律を作ってみましょう。前回同様に、この課題には答えはありません。自分自身で納得できる解答を作ることを心がけてください。

課題1-1

定旋律 対旋律 対位法 音楽理論

課題1-2

定旋律 対旋律 対位法 音楽理論

 また、前回の課題の解答例も出します。先ほども述べましたように、このような対位法の課題には唯一の答えはありませんので、あくまでも参考として確認してみてください。この例と自分の解答を比較してみることも良い勉強となるのでおすすめします。

前回課題解答例

対位法 音楽理論
対位法 音楽理論

まとめ

今回はリズムに関する理論を踏まえた上で、1:2の対位法に取り組みました。1:2はその前の1:1とほとんど同じ規則です。一つの小節の中で二つの音を用いることになりますので、強拍と弱拍が生じ、リズムに関する知識が必要になってきます。

強拍に置かれた音は印象的な音に感じ、弱拍に置かれた音は強拍に比べると印象は薄くなります。そのため、不協和音程は弱拍で、しかも条件付きで用いることが可能になりました。しかし、強拍はシンコペーションによって移動することもあり、強拍が移動すると音楽に変化が生じ、良い意味で緊張感が引き起こされます。

回が進むにつれて、音楽はより自由になっていきます。規則と自由さをバランスよく扱うことできるようになることが理想ですね。次回の対位法では1:4について紹介したいと思います。