【はじめての和声法】06.属和音、さらにいろいろな仲間たち

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V7の和音の根音省略形

前回の記事ではV7とV9の和音について学びました。実はVの和音の仲間は他にもあります。V7の和音やV9の和音はその根音を省略した形で用いられることがあるのです。この和音のことを、有名な和声法の教本である『和声 理論と実習』では、「Vの和音の根音省略形体」と名付けられています。ここでは簡単に「省略形」と呼びたいと思います。

さて、V7の省略形は次のように根音を省いた和音になります。

譜例1

属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

根音がなくなっても第3音(この譜例だとhの音)は導音ですし、第7音(この譜例だとf)は2度下に下がる音です。根音が省かれてもそれぞれの音が持つ名前や機能は同じであるわけです。

このV7の省略形は和音記号では「V7」と記します。ところでV7には根音がないので基本形がありません。つまりV7は必ず転回形になるのです。たとえばV7の第一転回形は「V71」と記され、次のような和音になります。

譜例2

第一転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

同じようにV7の第二転回形は「V72」と記され、次のようになります。

譜例3

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

V73」は第三転回形で次のような形です。

譜例4

第三転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

ときどき間違えてしまうことがあるのですが、たとえば根音が省略された和音の第一転回形は、その和音構成音(たとえばCdurのV7(h、d、fの音から成る))の一番下の音がhだからと言って、次のようにはなりません。

譜例5

第一転回形 第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

これは第二転回形なのです。先ほども述べたように根音がなくなったとしても、それぞれの音の名前(たとえば第3音や第5音といった)や機能(たとえばVの第3音は導音であるといった)は変わらないのです。

さて、V7の和音には第一転回形と第二転回形、第三転回形があると紹介しましたが、主に用いられるのは第二転回形です。V72の扱い方について学んでしましょう。

まずV72は次の二通りの和音構成の仕方で用いられます。

①上三声に第3音と第5音、第7音の全てを用いる。
②上三声に1つの第3音と2つの第7音を用いる。つまり第5音は上三声では用いず、バスのみで用いる。

譜例6

属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

今後は①の仕方で上三声が置かれる場合は「V72の①配置」、②の仕方で上三声が置かれる場合は「V72の②配置」と便宜的に呼びます。

そしてV72の和音でバスに置かれる第5音は2度上行か2度下行することによって進行します。

譜例7

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

V72の①配置の場合、導音にあたる第3音や第7音はこれまでの規則通りに、第3音は2度上行し、第7音は2度下行します。残る第5音はV72の①配置の場合、4度上行か5度下行します。

ところでV72の和音のバスが2度上行して進行する場合、次のようにV72の後にくるI1の和音はその第3音を二つ重ねることになります。この場合は次のようにバスに置かれた第3音は2度上行して、上三声に置かれたものは2度下行する形が美しいとされています。そしてこのI1はII1かV73(後から出てくる「V93」にも進行可能)のどちらかに進行します。

譜例8

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

また例外として、次のようにアルトやテノールなど内声にV72の第7音が置かれる場合、その第7音は2度下行だけではなく、2度上行することも可能となります。またさらにこの場合は、上三声に置かれた第5音は4度上行や5度下行だけではなく、2度上行もしくは下行することも可能です。

譜例9

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

しかし次の場合のように連続5度が生じることもあるため(譜例のアルトとテノールに注意!)、配置によっては第7音が内声にあっても2度上行することができません。注意が必要です。

譜例10

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

さて、V72の②配置の場合、和音の形はほぼ次のようになります。

譜例11

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

この場合、ソプラノに置かれた第7音は2度下行し、テノールに置かれた第7音は2度上行します。またV72の次の和音がI1の場合、先ほどのV72の①配置と同様に、バスに置かれたI1の第3音は2度上行し、上三声に置かれた第3音は2度下行することが美しい和声進行だとされています。このI1はII1かV73(後から出てくる「V93」にも進行可能)のどちらかに進行します。

譜例12

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

それではV72の練習問題に取り組みましょう。次の譜例の中から規則通りに和声進行されているものとそうではないものを分類し、規則通りでないもののどの点が規則通りでないのか説明しましょう。そしてそれらを正しく直してみましょう。

練習問題

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

答え:
正しいものはa、b、d、f。

cはV72の①配置だけど、バスの第5音が4度上行することで次の音に進行している。本来は2度上行もしくは下行しなければならない。

eはV72の②配置だけど、ソプラノに置かれた第7音は2度上行し、テノールに置かれた第7音は2度下行している。本来は逆に、ソプラノに置かれたものが2度下行し、テノールに置かれたものが2度上行しなければならない。

cとeの解答例

第二転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

V9の根音もなくしてみると

次にV9の省略形「V」について学んでみましょう。V9では第一転回形「V91」も、第二転回形「V92」も、第三転回形「V93」も全て用いられます。V7同様にV9もIの和音に進行します。V91はIに、V92V93はI1に進行できます。

譜例13

第一転回形 第二転回形 第三転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

これまでと同じように、第3音は2度上行し、第7音と第9音は2度下行しなければいけません。またV7と同じく、第7音が内声に置かれている場合は2度上行することが可能となります。

V9V7よりも規則が少ないので重要な規則は以上のみになります。比較的に自由に扱うことができます。

それでは最後に課題に取り組みましょう。今回のバス課題からは和音記号も自分自身で考えてみましょう。それぞれの調はヒントとして記載されています。

課題1-1(cmoll)

第一転回形 第二転回形 第三転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

cmoll

課題1-2(Ddur)

第一転回形 第二転回形 第三転回形 属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

Ddur

前回の課題の解答例は次のとおりです。

課題1-1

属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

課題1-2

属和音 根音省略形 和声法 音楽理論

まとめ

前回と今回の記事で、様々なVの和音について紹介しました。前回はV7とV9の和音の使い方や転回形について学び、今回はそれらの和音の根音が省略された形であるV7V9について学びました。

導音である第3音や第7音、第9音はV7やV9と同じように、2度上行したり下行したりしなければいけませんが、第7音が内声にある場合は2度上行することが可能であるなど、例外的に認められる進行もありました。

これらの様々なVの和音の扱い方は基本的にはそれぞれ似たようなものですが、その響きはそれぞれ微妙に異なってきます。この微妙に異なる響きを持つ和音を使い分けて扱うことができると、和声の魅力も一段と強くなってきます。回が進むごとに、いろいろな和音が紹介されてきますので、これらの和音の響きの違いにも注目していきましょう。