今までの内容は第1巻の内容
和声法のこれまでの記事では「三和音の作り方」、「和音の繋げ方」、「転回形の作り方」、そして「いろいろな属和音の種類」について紹介しました。
これらの内容は有名な和声法の教本である『和声 理論と実習』の第1巻の内容に相当するものです。この第1巻は、音大で演奏や声楽を専攻している学生が1年かけて学ぶものです。なので、これまで紹介してきた和声法のルールをすぐに覚えることができなくても、それはもともととても難しいことなのです。じっくりと復習をしながら学んでいきましょう。
そのようなわけで、今回はこれまでの内容で特に重要なものを振り返ってみましょう。
和音の種類と性格
和音には次の4種類がありました。
譜例1
これらは三和音と呼ばれるもので、一番低い音は根音、真ん中の音は第3音、一番高い音は第5音と名付けられています。
長音階と短音階のそれぞれの音の上に三和音を重ねてみると、次のようになります。長三和音や短三和音、減三和音は出てきますが、増三和音は出てきません。
譜例2
さて、先ほどの譜例2にはI、II、III……と数字が振られています。これは和音記号と呼ばれているもので、それぞれの和音は3つのグループに分けることができます。IIIの和音とVIIの和音に関しては少し複雑なので、ここでは解説を省きます。
Iの和音とVIの和音はトニカのグループです。トニカの特徴は他のグループの和音に比べて安定感があることです。
Vの和音はドミナンテに分類されます。ドミナンテは不安定な印象を与える特徴を持っています。
そして3つ目のグループはサブドミナンテのグループです。サブドミナンテにはIIとIVの和音が入っています。サブドミナンテは料理で言うところの調味料のような役割を持っています。トニカとドミナンテだけでできた音楽は堅い印象を与えますが、その中にサブドミナンテを入れると豊かな音楽になり、全体的に柔らかくなります。
そしてそれぞれのグループの進行にも決まりがあります。トニカとサブドミナンテはどのグループの和音にも進行できますが、ドミナンテはトニカのみにしか進行できないことになっています。ドミナンテには不安定な印象を与える特徴がありますので、より安定しているものへと進む性格を持っています。なのでトニカに進むのです。
音楽の終わり方
音楽は基本的に安定することで終止します。つまり、音楽が終止する時はトニカで終止するのです。そしてトニカには Iの和音とVIの和音がありました。なのでVからIへと進む終止法とVIへ進む終止法があります。Iへ進む終止法は「全終止」、VIへ進む終止法は「偽終止」と名付けられています。Iの和音の方がVIの和音に比べて、より安定感があるためVからIへの終止が「全」終止なのです。
そしてこれらの終止は文章でいうところの句読点に相当します。全終止は「。」で偽終止は「?」です。「、」に相当するものもあります。それは「半終止」と名付けられるもので、Vがトニカに進まずにそのまま終止すると半終止になります。
これら3種類の終止を全て用いた譜例をあげます。このように終止では音符が長くなることが多いです。
譜例3
和音と和音はどのように繋がるのか??
和音と和音が繋がる時にも規則があります。次の譜例のように、ある和音①と別の和音②の中に共通する音があればそれは動かさずに保つ(このことを「保続」と言ったりします)ことが基本です。
譜例4
しかし共通する音がなければ、バスが上行する場合は上三声が下行し、バスが下行する場合は上三声が上行します。
譜例5
そして和音が進行する際には、声部同士で完全5度や完全8度が連続して生じることをそれぞれ連続5度、連続8度と呼び、それは強く禁じられます。
譜例6
しかし、次のように保持して5度や8度が続くことは連続ではありません。なので禁則ではありません。
譜例7
また、続く5度が減5度である場合は問題とされません。
譜例8
次のように、外声が並進行して後続の音程で5度や8度が生じることを、それぞれ直行5度、直行8度と呼びます。これはソプラノが順次進行している場合は良いのですが、跳躍進行する場合は禁じられます。
譜例9
基本形と転回形、属和音の種類について
和音には基本形と転回形がありました。次の例のように、根音が一番低い位置に置かれているものを基本形、第3音が一番低い位置に置かれているものが第一転回形、第5音が一番低い位置に置かれているものは第二転回形とされます。
譜例10
それぞれ連続5度や直行8度などの禁則が生じない限りは自由に扱うことができますが、第二転回形の方はバスが次のような進行する場合に用いられます。
譜例11
そしてVの和音には多くの種類があります。まず、Vの和音に根音から数えて短7度の音を付けたものがありました。それをV7の和音と呼びます。また、V7の和音にさらに根音から数えて長9度の音を付けたものをV9の和音と呼びます。それぞれ付けられた第7音と第9音はそれぞれ2度下行する性質を持っていました。
譜例12
また、V7もV9もそれぞれ根音省略形がありました。それらはV7とV9のように書き表されます。そして、V7、V7とV9はそれぞれ転回形もありますが、V9は基本形のみ用いられます。
属和音の仲間に関する規則はたくさんありますが、特に重要なものは次の3つです。
①V7には根音、第3音、第5音、第7音の和音構成音全ての音が含まれる形と、第5音を省いた形の両方があり、ここでは便宜的にそれぞれ「完全形」、「不完全形」と名付ける。不完全形は「VIの和音に進行する時」と「全終止する時」に用いられることが多い。
譜例13
②長調のV9は、その第9音は第3音よりも7度以上、上に置かなければならない。しかしV9の前の和音の中にV9の第9音にあたる音が含まれていて、その音が保続されている場合は認められる。
譜例14
③V72、V72とV92の和音のバスが2度上行する場合、後続のI1ではその第3音を二つ含むことになる。I1のバスに置かれた第3音は2度上行して、上三声に置かれたものは2度下行する形が良い。そしてこのI1はII1かV73、V93に進行する。
譜例15
和声分析の仕方
楽曲の簡単な和声分析にも取り組んでみましょう。和声分析の一環として今回は楽曲の和声の判別をしてみます。
たとえば、次の譜例を見てみましょう。この譜例はどのような和声で成り立っているのでしょうか?
譜例16
まず調性を調べてみましょう。この譜例には調号としてシャープが二つ付いています。二つのシャープを調号として持つものはDdurかhmollのどちらかです。仮にhmollだとすると、その中のaの音が導音にあたるため、シャープが付けられてaisになっているはずです。しかし譜例中のaにはシャープが付いていません。なので、Ddurであることが分かります。
ここでDdurの音階上に三和音を重ねたものを参考にしましょう。譜例のように、DdurのIの和音はd、fis、aから成る和音になります。
譜例17
次に、それぞれの和音の構成音を見ていきましょう。一番初めの和音はd、fis、aで成り立っているのでIの和音になります。その次の和音はcis、g、a、eなのでV7、その次は初めと同じ和音構成音なのでI、その後はg、e、hなのでII、そして最後の和音はa、cis、eなのでVの和音となります。
さらにVの和音とIIの和音はそれぞれの第3音がバスに置かれているので、第一転回形であることが分かります。これらのことから先ほどの譜例の和声分析は次のようになります。
譜例18
今回は課題として和声分析に取り組んでみます。次の譜例の和声を判別してみましょう。
課題1
また前回の課題の解答例も出します。
前回課題1-1
前回課題1-2
まとめ
今回は、これまでの和声法の復習をしてみました。特に重要なものだけを振り返ってみましたが、他にも大事な規則はたくさんあります。特に属和音の規則はこれからも重要になっていくものなので、繰り返し習得していきましょう。
また、今回は簡単な和声分析にもチャレンジしました。これまでは課題としてバス課題に取り組んできましたが、今後は「ソプラノ課題」にも取り組みます。実はこのソプラノ課題に取り組む際に、和声を判別する能力が必要になってくるのです。手元にある楽譜でも和声分析をしてみて慣れていきましょう。