【はじめての和声法】08.和音の進行方向を理解してソプラノ課題を解いてみよう

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はじめての和声法 前回の記事はこちら

和音が進めるところと進めないところ

これまでにトニカドミナンテサブドミナンテの関係について学びました。トニカとサブドミナンテはどの和音にも進むことができますが、ドミナンテはトニカにしか進めません。最初はまず和声法そのものに慣れるために以上のように簡単にまとめましたが、実はもっと細かいルールがあります。今回はその細かいルールについて学びましょう。

まず和音を音階上に付けたものを挙げます。それぞれの和音に、トニカに属するものには「T」、サブドミナンテには「S」、ドミナンテには「D」と記します。

譜例1

トニカ  ドミナンテ サブドミナンテ 和音 和声法 音楽理論

和音は進行するときに、5度上行もしくは下行します。たとえばIの和音の5度上はVで、5度下はIVになりますので、IからはIVにもVにも進むことができます。

譜例2

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ 和音 和声法 音楽理論

しかし、Vの5度上はIIとなりますが、VからIIには進むことが基本的にはできません(高度な和声法では可能です)。というのもドミナンテはトニカのみに進むことになっているためです。

また和音は2度上行することも可能です。

譜例3

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ 和音 和声法 音楽理論

3度下行することもできます。

譜例4

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ 和音 和声法 音楽理論

VIからVへの進行は2度下行になりますが、それは例外的に認められます。

譜例5

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ 和音 和声法 音楽理論

つまり和音は完全5度上か完全5度下、2度上か3度下に進行することが可能なわけです。それぞれの和音の進行について表にまとめると次のようになります。表中の「元の和音」列のそれぞれの和音からは、「元の和音から進行する和音」に記載されている和音のみに進行することができます。

表1

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ 和音 和声法 音楽理論

Iはだいたいの和音に進行できますが、IVやVIはより限定された和音にのみ進行できます。IIとVはそれぞれ2つの和音のみにしか進めないことが分かります。この進行についてまとめた表はとても便利なので覚えておきましょう。

バス課題とソプラノ課題

今回からはソプラノ課題に取り組みます。これまではバス課題を解いてきましたが、これはバスに置かれた音に三和音を付けていく課題でした。ソプラノ課題は逆にソプラノに置かれた音に三和音を付けていくことになります。実はバス課題よりもソプラノ課題の方が難しいです。というのもバス課題の場合、バスによってその和音がほとんど定まっているためです。たとえば次の例を見てみましょう。

譜例6

バス課題 和音 和声法 音楽理論

この例はCdurです。①に付けることができる和音はどの和音でしょうか? まず、次の譜例を参考にしてみましょう。

譜例7

バス課題 和音 和声法 音楽理論

この譜例を見てみると、Cdurの和音の中でhの音が含まれているのはIIIの和音とVの和音、VIIの和音であるということが分かります。しかしこれまでにIIIとVIIには触れてきませんでしたので、この二つの和音は除外されます。残りはVの和音だけです。しかもバスがhであるためVの第一転回形であるということが分かります(もちろんV1の仲間であるV71V91も可能です)。そしてVの和音の後にはトニカが続くことになっています。なので②はIになります。和声付けをすると次のようになります。

譜例8

バス課題 和音 和声法 音楽理論

以上がバス課題を解く流れとなりますが、ソプラノ課題を解くためにはどのようにするべきなのでしょうか??

難しいソプラノ課題を解く秘訣

次の譜例を見てみましょう。

譜例9

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

これも先ほどと同様にCdurです。どのような和音を付けることができるでしょうか? 考え得る限りの和声を付けてみると次のようになります。

譜例10

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

様々な可能性があることが分かります。可能性が多いということはより自由であるということでもあるのですが、自由であるということはその分難しいということでもあります。それでも簡単なソプラノ課題から取り組んでいくとだんだんとコツをつかむことができます。それではソプラノ課題の導入として次の練習に取り組みましょう。

練習問題1

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

このソプラノ課題に和音の基本形のみを用いて和声を付けてみましょう。もちろんバス課題と同様に、和声の始まりと終わりは必ずIの和音になります。また今は同じ和音は続けて使用しないようにしましょう。なので次のような場合は現時点では不可能です。

譜例11

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

2小節目~4小節目は基本形ではなく転回形になっていますし、6小節目~8小節目はIの和音が続いています。そのようにならないように解いてみましょう。解説しながら練習問題に取り組みます。

まず、ソプラノがその音階の第7音から主音に進んでいると、現時点では必ずV→IもしくはV→VIという和声が付けられます。2つの可能性がありますが、V→Iの進行の方が基本的です。

譜例12

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

なのでソプラノ課題を解く際のコツとして、まず先に「第7音→主音」となっている箇所を見つけ出しましょう。たとえば練習問題1だと、2小節目から3小節目と5小節目から6小節目が第7音から主音への進行となっています。

譜例13

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

そして和声の始めと終わりは必ずIの和音でした。なので次のように和音設定がされます。

譜例14

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

4小節目にはどの和音が付けられるでしょうか? 4小節目はソプラノにdの音が置かれています。Cdurの中でdを含む和音はどの和音であるのか、次の音階を参考にして絞ってみましょう。

譜例15

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

この例によるとdを含むものは、IIとV、VIIの和音であります。しかし、VIIにはまだ触れていませんので、ここでは省くことができます。そうなるとIIかVのいずれかの可能性があるのですが、Vになることはありません。なぜならこの4小節目の次の小節では必ずVの和音が使われるからです(ソプラノが第7音から主音へと進んでいる場合は、必ずV→I(もしくはVI)という和声が付けられました)。そして同じ和音が続くことはここでは認められていないため、消去法でIIの和音が4小節目に付けられることになります。

しかしここで別の問題が生じます。3小節目はIの和音になる予定です。そうなるとI→IIという進行になるのですが、今は基本形しか使うことができないため、どうしても連続5度と連続8度が生じてしまいます。

譜例16

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

なので、3小節目はVIに変えましょう。そうすることで連続を避けることができます。

譜例17

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

同じように考えてみると7小節目に当てはまる和音も決まりそうです。ここでは前後の和音が両方ともIになっています。また、cの音を含むCdurの和音は、I、IV、VIの可能性があります。Iにしてしまうと、同じ和音が続いてしまうので使うことができません。それではVIではどうでしょうか? 今回の記事の前半で、和音の進行の細かい規則について学びました。そこでは、「I→VI」という進行はできても、「VI→I」という進行はできないことになっていました。なので、7小節目にVIの和音を付けることはできません。その結果、次のような和音設定になります。

譜例18

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

あとは和声に従って和音を付けていくだけです。解答例は次のようになります。

解答例

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

それではソプラノ課題に慣れるために次の課題を解いてみましょう。この課題の調はcmollになります。長調であっても短調であっても、その課題の解き方は大きくは異なりません。自力で解いてみて次回の記事で挙げる解答例と比較してみましょう。

課題

ソプラノ課題 和音 和声法 音楽理論

また前回の和声分析の課題の解答も載せます。

前回課題解答

和声分析 和声法 音楽理論

まとめ

今回は和声進行の細かいルールとソプラノ課題について学びました。

和音が進行できるのは、完全5度上か完全5度下、2度上か3度下でした。進行できる和音についてまとめた表をもう一度挙げます。

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ 和音 和声法 音楽理論

また、ソプラノ課題については初歩的な練習に取り組んでみました。課題解くためには、「ソプラノがその音階の第7音から主音に進んでいる箇所を見つける」ということがありました。その箇所は必ず「V→I」か「V→VI」という和声が付けられます。

次回はもう少し難しいソプラノ課題について解説を交えながらチャレンジしてみましょう。