【はじめての和声法】09.ソプラノ課題を解くために

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トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論
目次

まずは終止の場所を探してみよう

前回に引き続き、今回もソプラノ課題について取り組んでみましょう。使える和音は基本形のみで、同じ和音を続けて用いることは現時点ではできません。

譜例1

ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

譜例はFdurです。先に終止になる部分を探してみましょう。終止には、全終止と半終止、偽終止の3種類がありました。終止の箇所を把握しておくと、課題全体の流れや構造が見えやすくなります。

多くの場合、譜例中にある長い音符が終止になります。最後の終止は全終止ですが、4小節目の終止はどの終止でしょうか? Fdurでgの音を含む和音はIIとV、VIIになります。IIやVIIで終止することはありませんのでVになり、4小節目は半終止であることが分かります。

譜例2

トニカ  ドミナンテ  ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

そして、4小節目の半終止の次の和音はIになります。なぜなら、ドミナンテの後は必ずトニカになるのですが、もし仮にここがVIであれば、次のように連続5度が生じるためです。

譜例3

連続5度 トニカ ドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

そして、冒頭の和音もIになります。

譜例4

トニカ ドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

より良い和声を探してみる

さて、残りの和音については前から順番に検討していきましょう。いろいろな可能性の中から、より良い和声進行を探してみましょう。

まず②の和音について。dの音を含む和音はIIかIV、VIがあります。③も同じくdになっているため、②はIIの和音ではなさそうです。なぜなら、IVやVIからIIの和音に進むことはできますが、その逆はできないからです。というわけで②はIVかVIです。IVである場合、③はIIになり、VIである場合はIVかIIになります。どちらにしても③はサブドミナンテになります。

譜例5

サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

さて、④はどうなるでしょうか? もし③がIIであれば④はVになりますし、③がIVであれば④はVだけではなく、Iである可能性もあります。

ところで、⑤の音はaになっています。aを含む和音はI、III、VIであり、IIIはこれまでに触れていないため除外できます。なので、⑤はトニカであると言えます。となると、その前の④はドミナンテです。なぜなら、現時点では同じ和音を続けて使用することができないため、トニカであるIを置くことができないからです。なので④はVにしましょう。

前後しますが、⑤がもしIであれば、普通は次のようになりそうです。というのも和音の連結の規則として、2つの和音同士に共通する音は可能な限り保続するというものがあるためです。なので、Vに含まれるcとIに含まれるcは次のように保続されるはずです。

譜例6

保続 トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

しかしそのようにはなっていないので、VIである可能性が高いです。

そして⑥のb音を含む和音はII、IV、V7、そしてVIIが考えられます。しかし、⑦がVであるため同じ種類であるV7ではありません。またVIIにはまだ触れていないため、IIかIVのどちらかになります。ここまでの和音設定をまとめると次のようになります。

譜例7

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

⑨の和音は⑩との関連で考えてみましょう。まず、⑨のbを含む和音はIIとIV、V7、VIIで、これまで同様にVIIは除外されます。そして⑩のa音はIかIII、VIの和音である可能性があります。このうちのIIIの和音はVIIと同様に外されます。

つまり⑩の和音はトニカになります。なので⑨はIIである可能性が除外され、IVかV7のどちらかになります。

さて、⑪はどうでしょうか? g音を含む和音はII、V、VIIであり、やはりこのうちのIIとVに和音が限定されます。しかしその後の和音はVになっているためVである可能性もなくなります。

現時点では次のようになります。

譜例8

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和音を決定するために大事な全体のバランス

②と③、⑥、⑨と⑩の和音がまだ確定していません。このような時は全体の流れの中でより良いものはどれか見定めることが大切です。

たとえば⑨と⑩については、(a)V7→Iの進行か、(b)IV→Iの進行、もしくは(c)V7→VIの進行の可能性があります。まず注目すべきは(c)の進行です。この進行は比較的独特なものです。なぜならドミナンテはトニカに進みますが、トニカの中でも「I」に進むことが基本であるためです。そのため、VからVIへ終止することを偽終止と呼んでいるのです。

ドミナンテからVIへの進行は、④から⑤への進行ですでに用いられています。VIの和音が持っている個性的な効果を活かすために、ここではあまりこの和音を多用しない方が良さそうです。なので、⑨から⑩の進行でV7→VIという進行は採らないでおきましょう。

ここをV7→Iにしてみましょう。そうすると⑦から⑩までバスがc→f→c→fと同じ進行が続くことになります。それだとなんだかくどい感じがします。

譜例9

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

V7→IよりはIV→Iの方が良さそうです。

さて、⑥についてはどうでしょうか?ここではIIかIVの可能性があります。やはりバスの進行がポイントです。たとえば⑥がIIだとすると、⑤から⑩まで跳躍進行が続くことになります。そうなるとバスの進行が変化のないものである印象を受けます。しかしIIではなくIVにすると、⑥→⑦で2度進行がバスに生じるので変化に富む進行になります。

譜例10

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

さて、②→③については考えるべきことが少し多いです。ここでのポイントはソプラノの進行です。②→③のソプラノはd→dとなっています。これはソプラノが変化していないということであります。さらにバスや和声まで変化に乏しいと、この②から③にかけて音楽的になにも起こっていないような状態になります。和声的に変化のあることが求められそうです。

ではどうするべきでしょうか? ②に付けることのできる和声はIVとVIです。仮にIVを付けると③はIIになります。IIとIVは異なる和音ではありますが、同じサブドミナンテのグループに入っています。つまりIIとIVは同じ機能を持っていると言えます。だとすると②→③で、IV→IIとするとより変化の薄い印象を与えてしまいます。なので②にIVを付けず、VIを付けることにしましょう。

それでは③はIIとIVのどちらがより良いのでしょうか? ここまでくるとほとんど好みになりますが、IIを選びんでみます。注目するところは⑤から⑦までの和声です。ここではVI→IV→Vとなっています。今問題となる③の前後の和声はVIとVになっているため、③でIVを選ぶとVI→IV→Vとなり、⑤から⑦までの流れと同じものになってしまいます。そのためここではIIを選ぶ方が和声的な変化を生じさせて、より良さそうです。最終的には次のようになります。半終止以外のVの和音はV7の和音に置き換えることも可能です。

譜例11

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

和声付けをしてみると次の通りです。これで完成です。

譜例12

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

ここまで学んだところで、次の課題に取り組みましょう。これまでは和音の基本形のみの使用でしたが、この課題では転回形など今まで学んだ和音全てを含むものになります。難しくなりますが、まずは自分自身の力で取り組んでみましょう。

課題

転回形 トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

前回の課題の解答例は次の通りです。

前回課題解答例

トニカ ドミナンテ サブドミナンテ ソプラノ課題 全終止 半終止 偽終止 和声法 音楽理論

まとめ

前回と今回の記事でソプラノ課題の取り組み方について紹介しました。ソプラノ課題を解くためにはまず、①「終止の箇所を見つけること」②「第7音から主音へと進行している箇所を見つけること」が大事です。

終止の箇所は半終止、全終止、もしくは偽終止のいずれかになりますが、終止の箇所は長い音符になっていることが多いです。第7音から主音へと進行している場合、そこはほぼドミナンテからトニカという和音進行になっています。

その他の箇所は和声進行の規則に従いながら考えていくことになるのですが、この大変なプロセスも数をこなす内に慣れてくるものです。1つの課題に様々なパターンの和声進行を付けることが可能ですので、いろいろと試しながら和声に親しんでいきましょう。

和声法の教本
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