※この記事は、連載【はじめての和声法】と【はじめての対位法】に共通する導入部分です。
1度はどんな音程??
前回までの記事で楽譜の読み方と音名、音程について学びました。
あとは音階と調について学んで、楽典の学習はおしまいです。その前に、音程について補足がありますので紹介します。
音程について学びましたが、1度とはどのような音程でしょうか。1度は次のように、2つの音が同じ音である時の音程です。
譜例1
1度は完全音程なので、完全1度が基本的な音程となります。それでは、次の譜例の場合はどのような音程になるでしょうか?
譜例2
この音程は増1度となります。減1度は存在しません。これで音程についての解説は終わりです。次の練習問題で復習しましょう。音程の名前を記入してください。
練習問題1
答え:1.短9度(1オクターブと短2度)/2.長7度/3.増1度/4.長13度(1オクターブと長6度)/5.重増6度/6.重減5度/7.増2度/8.増7度/9.重増1度/10.重増8度/11.長3度/12.重増5度
音の階段=音階
音階とは何でしょうか? 楽典の教本として有名な『楽典 理論と実習』には、次のように書かれています。
「(音階とは、)ある音を起点として、1オクターブ上の同名の音に達するまで、特定の秩序にしたがって配列された音列」
一つずつ説明しましょう。「ある音を起点として、1オクターブ上の同名の音に達するまで」ということは、たとえばCをある音として基準にした場合、Cからその1オクターブ上のCまでということです。
引用文の中の「音列」とは、いくつかの音で成るまとまりのことで、いわゆるクラシック音楽では7つの音(起点となる音から1オクターブ上の音は含まない)から成るまとまりです。
そして、「特定の秩序にしたがって配列された」という部分に着目しましょう。この秩序とは2度から成る秩序で、7つの音から成る音列中の音は、それぞれお互いに2度関係で繋がっています。しかも音階は1オクターブに収まらなければいけません。
ですから、次の譜例のような音階はクラシック音楽では対象としません。譜例3のaの音階は7音ではなく5音から成っていますし、さらに隣り合う音同士の音程が3度になっているところもあります。bの音階は1オクターブを越えてしまっています。
譜例3
また、音階のそれぞれの音は順番によって番号が付きます。はじめの音、つまり起点となる音は第1音とよばれ、その次の音は第2音、その次は第3音、そして最後の音は第7音とよばれます。
そして、先ほどの引用文中の「特定の秩序にしたがって配列された」には、もう一つ重要な意味があります。この配列の仕方によって、音階は2種類に分かれるのです。
クラシック音楽で用いる音階には長音階と短音階があります。長音階とは、次のような音程の配列による音階です。第3音と第4音の音程、第7音と第1音の音程が短2度になることが特徴です。
長音階の例として、次のようなものがあります。身近に楽器などがありましたら、弾いてみてどのような印象を受けるのか確認してみましょう。
譜例4
短音階は次のような配列になります。第2音と第3音の音程、第5音と第6音の音程が短2度になることが特徴です。
そして次が短音階の例です。
譜例5
さらに、短音階は3つの種類に分類できます。先ほど紹介した短音階の例は全て自然短音階とよばれます。
ここで注目してほしいのは、第7音です。第7音の一つ上の音は、再び(起点となる音からオクターブ上の)第1音となります。第1音は主音とよばれる音で、その音階においてだけではなく、その音階が用いられている楽曲の部分で中心となる音となります。
ちなみに第5音は属音、第4音は下属音とよばれ、主音に次いで重要な音です。
さて、第7音は特別な役割を持っています。それは主音へと繋がるという役割で、その繋がり方はスムーズに主音へと導かれるようでなければいけません。主音へと導く機能を持った第7音のことを「導音」とよびます。
第1音は常に主音、第4音は常に下属音、第5音は常に属音とよばれますが、第7音は常に導音とよばれるとは限りません。第7音はある形にならないと導音とはよばれないのです。
それは、第7音とその上の主音との音程関係が短2度であるということです。それによって第7音は導音となります。ですから、長音階の第7音はそのままの形で導音となっています。
しかし自然短音階の場合、第7音と主音の音程関係は長2度です。半音関係である短2度の方が、長2度と比べて近い距離にあり、音同士が密接な繋がりを持ちます。
第7音を導音とするために、主音との関係を短2度としなければいけません。そのために第7音を半音上げる必要があります。そうすることによって、主音との関係は短2度となり、第7音は導音としての機能を持ちます。そして、第7音が半音上がり導音となった短音階のことを和声短音階とよびます。
しかし、和声短音階の第7音は第6音と増2度となっています。音階を楽器で弾いてみると気付くのですが、この増2度から少し違和感を感じます。そのため、さらに第6音を半音上げて音階をスムーズにすることがあります。その音階のことを旋律短音階とよびます。
ところで旋律短音階は、低い音から高い音へと上がる上行の場合のみに旋律短音階となります。高い音から低い音へと下る下降の場合は自然短音階となります。
譜例6
それでは次に練習問題を出します。それぞれの音を基準として、長音階と自然短音階、和声短音階、旋律短音階を書いてみましょう。
練習問題2
答え:それぞれの音階は左から順に、長音階、自然短音階、和声短音階、旋律短音階となっています。
調について
どの音階を使っているかによって、その楽曲の部分、もしくは全体がどの調であるのか分かります。調とはいわゆる「キー」のことで、皆さんもカラオケで歌いにくい時にキーを上げたり下げたりするのではないでしょうか。
長音階の調は長調、短音階の調は短調といい、ドイツ語読みの場合は、長調と短調それぞれを、Dur(ドゥア)、Moll(モール)とよびます。
さらに調は、どの音を主音としているのかによって定まってきます。たとえば次の音階の場合はDが主音なので、D dur(デー・ドゥア)と名付けられます。長調の場合、主音名は大文字となりますが、短調の場合は、d mollのように小文字となります。
譜例7
ところで、gis mollやDes durのようにシャープやフラットがたくさん付く場合、記譜が大変になります。このような不便さを避けるために、調号というものが用いられます。調合は、その調のシャープやフラットを楽譜のはじめにまとめて記すものです。なので、調号を見ることによってその調が何か知ることができます。
次に調号と調の関係を示した譜例を載せますので、こちらも頑張って覚えましょう。譜例上の音は棒が上向きのものは長調の場合の主音、下向きのものは短調の場合の主音となります。
譜例8
クラシック音楽において、調は同時に二つ以上のものを使うことはありませんが、作品の途中で調を変えることができます。このことを転調とよびます。転調の方法は和声法の解説の中で紹介したいと思います。
それでは最後に、前回の課題の答え合わせをしたいと思います。
1.増2度/2.長3度/3.短3度/4.増4度/5.重増3度/6.完全5度/7.増4度/8.重増5度/9.長6度/10.短6度/11.完全8度/12.増7度
まとめ
全4回の記事で、基礎的な楽典を紹介してきました。しかし、これらの知識はあくまで部分的なもので、和声法や対位法を理解するための最小限のものとなります。もし、もっと楽典の知識を深めたいと思いましたら、この連載でも参考にしている教本の一覧を最後に載せますので、ぜひ読んでみてください。
これらは音楽理論だけではなく、音楽の理解への大事な一歩となります。これらの知識が音楽の深い理解へと繋がりましたら幸いです。